魔術師リアムの中級編二日目の夜
祐介とスーパーに寄り、DVDを借り、互いに帰宅しまずはスーツを脱いだ。やはりこれはどうしても肩が凝る。リアムは伸びをすると、シャワーを浴び始めた。
身体に纏わりついていた汗と、どうしても付着感が拭えない化粧を落とすとさっぱりした。今日の晩飯は蕎麦なる日本の心という物だそうで、天ぷらなる揚げ物を購入し、後は祐介には欠かせないらしい味噌汁とのことだ。
あいつは本当に味噌汁が好きなのだな、そう思いつい笑みが溢れた。そしてふと思い出す。今日は手紙を書いていない。メールでのやり取りはあったものの、あれは字の練習にはならない。
「よし!」
そうと決まれば急いで上がって手紙を書くのだ。リアムはさっさと終わらせると、雑に身体を拭き服を身に付けて風呂場を出た。まだ祐介は来ていない様だ。よしよし。
紙を一枚取り出し、ゆっくりと、だが確実に書いていく。書き終わり、半分に折って祐介を待った。あ、化粧水がまだだった。
リアムが慎重に化粧水を付けていると、ガチャ、と鍵が開く音がした。
「入るよー……大丈夫かな?」
「祐介」
「あれ、今日は上がるの早いね」
整髪料を落とした祐介は途端に幼く見え、昼間の祐介とは別人の様に感じる。
「あ、祐介祐介」
「何どうしたの」
玄関で待つ祐介に、リアムが手紙を渡す。
「今日はちゃんと書いたぞ」
「お、偉い。読んでいい?」
「勿論だ」
さてどんな顔をするか。祐介はカサカサと折ってあった手紙を開くと、読み始めた。大して長くもない文章だ、あっという間に読み終わると思ったのだが、なかなか顔を上げない。何か誤字脱字でもあったのだろうか?
「何か間違っていたか?」
リアムが尋ねると、祐介がゆっくりと顔を上げた。リアムが少し苦手な、祐介の真顔がそこにはあった。目を伏せて、また上げる。何かを言いたいのだろうか。
「祐介?」
「……シャンプー」
「へ?」
祐介が靴を脱いでふらふらとリアムに近寄って来た。熱でもあるのだろうか? 足取りがおかしい。まさか、先程説明を受けたばかりの熱中症というものであろうか。
「祐介、水でも飲むか? 風呂上がりに水分はとっ……」
ふらついていた祐介が、リアムの頭に巻かれたタオルに半ばしがみつく様にして抱き寄せた。リアムはまだ風呂上がりで火照っている。
「祐介、汗もかいているし髪も濡れたままだぞ、祐介が濡れるぞ」
それ程に祐介の腕には力が籠もっており、身体はピッタリと接触している。本当に大丈夫だろうか。
「祐介? 一体どうした」
「……落ち着かせて下さい」
「へ? あ、ああ、匂いを嗅ぎたいのか」
幸い今は洗いたてで香りは一番濃い。
「はあー落ち着く……」
タオル越しにひたすらスーハーしているが、本当に大丈夫だろうか。
「祐介、一体何にそんなに」
「手紙。『ゆうすけへ。ゆうすけのすきなみそしるをつくりたい』って書いてあった」
「確かにそう書いたが」
「嬉しい」
「それはよかった。そうか、豆腐とワカメに興奮したのか」
「うん、まあそれでいいや」
風呂から上がりたての祐介の身体も火照っていて、それが服から発せられる熱となって伝わり少し艶かしくもあり。
リアムも落ち着く為に、祐介の服の匂いを嗅いだ。
次回はサツキバージョン。




