OLサツキの中級編初日の春祭り散策で絡まれる
ラムとどんどん進んでいくと、次第に酒と食べ物の匂いが立ち込めるエリアに辿り着いた。酒を提供する店が多いからだろうか、先程までいっぱいいた子供はあまりおらず、よく見ると男女で連れ立ってしっとりと歩いている者が多い様だ。皆一様に手にあのグラスを持っているので、ラーメニアの花のエキスの薬酒とかいう物をこの辺りで配っているのかもしれなかった。
でも空きっ腹に酒はいくらリアムの身体が酒に強くても怖い。それに、今はサツキの姿だ。果たしてサツキの姿となっていても酒に強いままなのか、正直なところ試してみなければ分からなかった。そして今は横にいるのはラムだけ。試す時ではない、それはさすがに分かっていた。
今度、横にウルスラが居る時に試してみよう。今日はとにかく食に走るのだ。
周囲を眺めていると、少し奥まった所に少し人だかりがある。美味しい物でも提供している店があるのかもしれない。サツキがそっちの方向に進んでいくと。
「ねえ君、一人?」
例のグラスを持った一人の若い男に、突然話しかけられた。男っぽい雰囲気を持つ人は苦手なサツキは、「間に合ってます」と先を急いだ。びっくりした。でも若い男女の出会いを後押しする祭りでもある様なので、多少そういうことはあっても仕方ないのだろう。
サツキは先程の人だかりを覗くと、残念、そこは食べ物屋ではなく、あのグラスの飲み物を配っている場所だった。
ここには女性もいるが、皆一人だ。時折男性が話しかけては、暗い方へと消えていっている。はっと気付いた。
「もしや、ナンパスポット……」
今一番いたくない場所だ。
「なんか違った。ごめんラムちゃん、さっきの場所まで戻ろうか」
あのインパクト大のタコも、食べたら美味しそうではある。サツキが踵を返し元来た道を引き返そうとしたその時。
「ねえ君ってば」
ぐい、と腕が引っ張られた。
「いたっ」
さっきの男だった。
「間に合ってなさそうだよ。いい人、待ってなかった? 他の女と消えちゃった?」
「いや、そういうのじゃなくて、ちょっと離して……」
結局はこうして弱々しい声しか出なくなるのだ。どうしよう、どうしよう。
「君、あのお酒まだ飲んでないの? 飲もうよ、いい気分になるよ。それで僕と今夜過ごそうよ」
「ごめんなさい、お願い離して……」
ああもう泣きそうだ。怖い、怖い。
「仮面取ってよ、顔見せて」
「やめ……っ」
男はサツキの腕を掴んだまま仮面を剥ぎ取ってしまった。顔をまじまじと見て、にやりとする。
「かわいいね」
「お願い、離して、お願い」
身体が震える。やっぱり男は怖い。掴まれただけでもうどうしていいか分からなくなってしまう。
すると。
ぐい、とラムと繋ぐ手が思い切り引っ張られたと思うと、ラムの手からラムに預けていた杖が出てきた。
「あ……」
ラムが強気な表情でこくりと頷く。戦え、ということだ。
「……うん!」
そうだ、今のサツキは何も出来ない気弱で臆病なサツキではない。魔法があるじゃないか。
サツキは、杖を男に向かって構えた。
次回はリアムバージョン。




