魔術師リアム、初級編三日目の午前開始
祐介がベッドにうつ伏せになり目隠しをしている間に、リアムはとうとう自分一人の力でブラジャーを着けることに成功した。昨日祐介に言われたやり方でやってみたところ、あっさりと出来たのだ。
「着れた……着れたぞ!」
「サツキちゃん、想像しちゃうから黙ってようか」
「あ……済まぬ」
「うん」
先程祐介に叱られた後から、どうも祐介の発言が大分直接的になってきた様だ。リアムが呑気にしている間、気付かぬ内に祐介は我慢を強いられてきたのだろう。恐るべしサツキの悩殺力。リアムがあまり意識せずやっていることで、祐介を困らせていることがあるのかもしれない。
服を着ると、ベッドに腰掛け祐介の前髪を掬う。片目が合った。
「祐介、着替えたぞ。待たせたな」
「……うん」
祐介が起き上がったので、リアムは直接尋ねることにした。
「祐介、私はどうも無頓着の様でな、恋人なる者も殆どいた試しがなかったので、いまいち男女のそういったことが分からん」
「いきなり何言ってんの」
「勿論経験はあるがな、娼館ではなかなか次もまた来いと言われず、結構傷ついたものだ」
「これ何? 何始まったの?」
「一般の女性でも好いてくれる者はいたが、先日話した様にやや特殊な傾向の者に好かれることが多くてな」
「血文字とか」
「そう、そういうのだ。だから積極的な女性は少々怖かった。ははは」
「笑ってるよこの人」
「なのでな、祐介」
「はい」
「私がどうすると、祐介は欲情してしまうのだ?」
「これ何の拷問?」
リアムは真剣な眼差しで祐介の両肩に手を乗せ、言った。
「遠慮なく言ってくれ、祐介」
「勘弁して」
「遠慮しなくていいのだぞ?」
「遠慮させて下さい、お願いします」
祐介は頑なだ。リアムは首を傾げた。
「もしや……性癖が特殊なのか?」
「特殊……」
祐介が頬を引き攣らせた。この表情。きっとそうなのだろう。であれば言いにくいのも仕方あるまい。リアムはうんうんと頷いた。
「分かった、余程言いにくいことなのであれば仕方ない。私もなるべく祐介を刺激しない様には心がけるが、如何せん無意識にやってしまうこともあるだろうから、その時は遠慮せず言って欲しい」
祐介は頭を抱えてしまっている。前髪を手で退かすと、赤い顔が出てきた。
「済まなかった、元気を出してくれ」
「とっても元気ですけど」
「そうか、ならば今日も一日宜しく頼むぞ」
「はいはい」
ようやく祐介に笑顔が戻った。祐介が立ち上がる。
「職場の人の写真がうちにあるから、うちで説明するよ。パソコンの使い方も、会社のとちょっと違うけど大体一緒だから、うちのを触ってみて」
「うむ……じゃない、はい」
祐介が玄関の扉を開け周囲を確認すると、あ、と言ってリアムを振り返った。
「やっぱり、特殊かもね」
「うん?」
「僕の性癖。確かに言われてみれば特殊。教えないけど」
逆光の中、最高級の笑顔を見せる祐介だった。
次回はサツキバージョンです。




