魔術師リアム、初級編二日目の映画
今日の映画は、始めはあの幼女の幼さ故の我儘に苛ついたものだが、あの少年が突然ある瞬間からサツキを呼び捨てしたのに感動を覚えた。よくやった、少年よ。あの髪型はいただけないが、その内しっかりとした髪が生えてくることを祈る。
「祐介! あの猫は実在するのか!?」
「ちょっサツキちゃん揺らさないでっ」
リアムは祐介がグラスを持つ方の二の腕をぐいぐいと引っ張る。
「祐介っあれはいるのかいないのか!?」
「いないいない、いませんっ」
「何だ……そうか。凄く、すごーく気持ちよさそうな床だったのに」
残念過ぎてつい口が尖った。祐介が小さな溜息をつく。
「……二杯目飲ませるんじゃなかった……」
「祐介っ」
「今度は何?」
祐介は苦笑いしている。今は幼女が一人泣いている場面だというのに、何が可笑しいのか。
「祐介、その酒は飲まないのか?」
祐介の手に握られたグラスには、まだ半分以上ビールが残っていた。
「飲みますー。サツキちゃんはもうおしまいだよ」
「飲み足りない!」
「うわっちょっと危ないって! ほら、いい場面だよ、テレビ観て、ほらほら!」
「おお……父親は一体どこで何をやっているのかと思ったら、子供を置いて妻の所にいたのか!」
「……腕にめっちゃ当たってる……」
画面も気になるが、祐介が持っているビールも気になる。おお、老婆と再会したか! よかった、頑張ったなサツキ! リアムはうんうんと頷く。目の端から涙が一粒落ちた。
「見てくれ、あの少年の嬉しそうな顔!」
「やっぱり感情移入するところ微妙にずれてるよね」
映画は再び音楽が流れ始め、少し大きくなった姉妹の姿が映し出された。
「て、泣いてるの?」
祐介が、リアムの目の端に流れる涙を人差し指で掬いながら笑った。リアムはうんうんと何度も頷く。
「昨日の映画の方が泣けたがな! 祐介は私の胸の上ですやすやと寝ていて起きなかったぞ!」
「あ、うん、それはもうさ、ははは」
「あ、終わった」
リアムが目を離している隙に、映画が終わってしまった。ならば。
「祐介、ひと口でいいから」
「だーめ」
祐介の持つグラスに手を伸ばすと、祐介が反対の手に持ち替えてリアムから遠ざけてしまった。
「まだ飲み足りないぞ!」
「もう十分飲んだ! 立派な酔っぱらいです!」
「ならば奪い取るまで!」
「あっこら!」
リアムは祐介の膝の上に乗り、遠く離された手の中のグラスに腕を必死に伸ばす。
「ちょっノーブラ押し付けてるから! サツキちゃん!」
「あれを飲むまでは離さないぞ!」
「あっちょっとどこに乗ってんの! こら! 本当にやばいから!」
リアムのふくらはぎに、何か固い物が当たった。リアムはにやりとする。
「若いな、祐介」
「うわっそういうこと言う!?」
「隙あり!」
伸ばされた祐介の肘をカックンと曲げると、祐介の手を掴みビールを口に含んだ。
次回はサツキバージョンです。




