③ R1.10.06(後編)
「だってさ…………俺たちはどうする?」
日頃からこの村のトップの会議を盗み聴きしていたので、今回も行うことを聞き聴いていた。
そしたらとんでもない話が行われていた…。
長老が死んだ?
しかもあの訪問者が持っていた病原菌のせいで?
そしてあの訪問者を呼び出すためにこのアルくんを奪え?
やっぱりアイツらは狂っていると再び思わざるを得なかった。
そして、昔のことを思い出した。
この村は小さいが故に幾度となく他の街などから攻められることがあった。
だが、その度に俺とアイツらとが手を組み"正義の名のもとに"排除し続け、周りの街に強さを認めさせついに平和が訪れた。
そんなある日俺が仲良くしてる子供たちが、罪に問われる事になった。
正義を踏みにじることをしたのなら仕方ないとは思っていたが、その内容は明らかにおかしいものだった…。
「俺達は正義の為にこいつらを捕まえただけだ?それの何が悪い?」
「は?こいつらが何をしたって言うんだ?こいつらはお前らが暴言と言う名の武器を使ってこいつらを攻めた。だからそれに対抗すべくお前らをぶん殴った。それの何が悪い?というか自業自得じゃないか?」
「この村では暴言は罪には問われん。だが暴力は罪に問われる。そういう村だ。そういうルールだ。ルールを守れん奴には正義の名のもとに罪を与える。」
「は?何が正義だ!そんな正義あってたまるか!俺はそんなくだらん正義を信じていたのか… 笑えるな? それと、そんな正義を普通だと思ってる奴らなら俺はお前らとは一生手を組まない!例えこの村がまたもや攻められようとも、滅ぼうとも俺はてめぇらとは二度と手を組まねぇ!」
「裏切り者が!」
「やっぱりあいつらおかしな奴らだなw で、俺達はこのアルくんと一緒にいる限り恐らく罪に問われるだろう。アイツらの事だしまた訳分からん事言って無理矢理にでも罪に問おうとしてくるだろうなw てな訳で今の選択肢は3つだ」
1、アルくんを捨てて俺達だけで逃げる
2、アルくんをアイツらに持っていく
3、アイツらと戦う
「さぁどれにする?」
「アルくんは僕達の仲間!だから捨てたりなんかしないよ!」
「じゃあ戦うか?強いぞアイツらは。俺と同じくらいの奴らがわんさかいるからな。俺としても1と2は選びたくないが、俺達だけでアイツらに勝てる見込みもない。さぁどうするか…。」
本当に手詰まりだった。
1と2はアイツらと仲間になるようなものだ。
それだけは絶対にしたくない。
だが、戦うにしても戦力の差がありすぎる。
つまり、詰みの状態だった……。
「僕にさ…いい提案があるんだ……。」
「マジで?」
「あぁ…。僕はあんなに明るく振舞っていたけど実はとても不安だったんだ…ほんとに仲良くなれるのだろうか。気持ち悪がられないだろうか。でも、君たちは仲良くしてくれた。そして今も僕を捨てたり売ったりするのではなく、一緒に戦おうとしてくれてる。戦力の差があろうともどうにかして。ほんとに嬉しいよ。だから僕も手を貸してあげる。守られるだけは嫌だからね…。」
そう言うとアルくんは体を包み込むかのような光りを発し始めた。
そして…しばらく経つと子供たちの人数分の細い物体に分かれていた。
「!? どゆことこれ?」
「アルくんはどこに行っちゃったの!」
「僕はここにいるよ…。これは僕の隠されたの機能さ。ご主人様は僕を兵器として生み出した。だけど僕には自我があった。ご主人様もとても驚いてたよw そしてご主人様はこの機能を隠した。最初は兵器として生み出したけど、自我があったからあたかも最初からただのロボットとして生み出した事として。僕も最初は気づかなかった。だけど、僕は見てしまったのさ。自分の設計図を。そこにはこの機能が付いてると書いてあった。とても驚いたし、悲しかった。でもご主人様は仲良くしてくれたからそんな事は関係ないんだなと思った。そして君たちもそうだ。こういう話をしたら引かれるかもと思ったけど、ちゃんと仲良くなれたから話した。そして手を貸そうと思ったんだ。だからちゃんと使ってね。」
「ほーそんな過去があったんか。まぁどうでもいいんだけどね。」
「酷っ………。」
「別にお前が何だろうと今まで通り仲良くするって事だよ。」
「…………ありがとう。」
「礼をするのはこっちさ。これでアイツらにも勝てそうだ。なんせ兵器として作られた機能なんだからアイツらには勝てんだろ。よっしゃアイツらと戦うぞ!」
「おぉーーーー!!!!!」
「あーそうそう使い方はね…………」
「うっわマジか俺そういうの嫌なんだけど今更戦うのやめていいか?」
「ダメです。」
「ですよねー。」
そして時は来た。
アイツらはかなりごりっごりの装備をしている。
対してこっちは何の装備もしていない。
川を挟んで対峙しているためアイツらには何を持っているかなど見えないだろう。
そして……相手側の1人が火の魔法を放ってきた。
「ギガ・フレア!」
と同時に俺達はアルくんが分裂したものを使った。
「変身!!!!!」
「やっぱり俺こういうの苦手だな………。」
変身した姿は明らかにヒーローそのものの姿だ。
ただ、立場を踏まえて言うならば正義のヒーローに立ち向かう悪のヒーローと言ったところか。
変身した瞬間相手の魔法が着弾した。
本来ならこれだけで致命傷になるはずが、全く熱くなかった。
「アイツが言ったとはいえ少し不安だったけどほんとにすげぇなこれ!」
「心外だなーそれは。」
「ごめんってw」
と戦ってるとは思えないほど余裕な会話をし、
「さぁこっちの番といきますか!」
「おいピンク!さっきのあの魔法出来るんじゃねぇか?」
「確かに出来そうかも…。ギガ・フレア!」
そう言い放たれたのはさっきの相手が放ったものより数倍大きな火の魔法だった。
そして、相手に届いた瞬間相手は塵となっていた。
「ほんとに出来た!凄いよこれ!」
「でしょ? もっと褒めていいんだよ?」
アルくん非常に上機嫌である。
この後は一方的な展開が続いた。
相手がいくら魔法を放とうとも、子供たち側には全く効かず、数倍の威力の魔法が返ってくるのだから。
そんな展開が続きこのまま子供たち側が余裕で勝てるのかと思った瞬間、ピンクが後ろに吹っ飛んだ。
「!? 大丈夫かピンク!」
「…………ギリギリね。」
「何が起きたんだ?」
そう思い向こうの対岸を見るとでかい大砲のようなものがあった。
「いつの間にそんなの出来てたんだよこの村は………。どこにそんな財力があr――チッ」
相手に対してツッコミをしてる間に大砲から放たれた弾丸が自分の方に飛んできた。
本来なら元々持ってる力+兵器によって底上げされた力で簡単に避ける事が出来たのだが、何故か避けれ無かった。
そして気づいた。
自分がいつの間にか蜘蛛の糸のようなもので動けなくなっていることを。
しかもとても頑丈な糸で。
「いつの間に?」
そう思った瞬間また1つ飛んできた。
ただ、今度は避けずに打ち返そうと弾丸に触れた瞬間爆発を起こした。
「クッ…………ソ野郎が…………。」
この弾丸、実は触れた瞬間爆発するという最新のものだった。
「だからなんでそんなものがこんな村にあるんだっつーの…。」
そう思い周りを見渡すと吹っ飛んだピンクを除いて、他の子供たちも自分と同じような状態になっていた。
ようやく自分たちがかなりピンチな状態に気づいたのだった。
「やばいなこのままだと如何に耐久性が優れてるとはいえ、さすがに食らい続けると爆発か吹っ飛ばされるかでみんな全滅するな……」
「なら、ピンク! 俺達をさっきの火の魔法で燃やせ!」
「え? どうなっても知らないよ!」「いいから早く!」
「分かった! ギガ・フレア!!」
そして自分達はピンクが放った炎に包まれた。
「アイツら自滅したぞwww こんな時に仲間割れかwww 所詮そんなものだったってことだなwww」
「仲間割れなんてしてねぇよ。」
「!?」
「そしてこれはやられた分のお返しだ! テラ・ファイア!!!」
俺はこの兵器の特性が分かった。
それは受けた魔法を強化して、新たに撃つことが出来ることを。
だから俺は自分達にギガ・フレアを撃つことを指示した。
ピンクのギガ・フレアならギリギリ耐えれそうだったから。
確信はなかったがこのまま何も出来ず負けるくらいだったら、と思いやってみたのだ。
そしたら思惑通りにいった。
そして、強化されたギガ・ファイアをさらに強化したもの。
テラ・ファイアを相手に撃つことが出来た。
その魔法が放たれた瞬間相手側は察した。
「こんなでかい炎避けきれないぞ! どうする!」
そしてテラ・ファイアが着弾した瞬間、辺りは閃光に包まれた。
光が収まり周りを見渡すとそこは―――
自分のベットの上だった。