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いかずち

「この【徘徊する逢魔】が!!

 全員、一人残らず、存分に、叩きのめしてくれるっ!!」


 ついさっき怒り狂うサンシータの姿を見た時に少しは頭が冷えたつもりでいたけれど、ぜんぜんダメだった。

 なにやら天から「やれ!」の幻聴が聞こえてしまうほどに、俺の頭はどうしようもない(ほど)に煮え(たぎ)っていたようだった。


 とりあえず殴ろうだなんて最悪だ......そして俺は【徘徊する逢魔(じゃあくなそんざい)】だから、ぜんぜん問題無しっ!



 人族の誰かが「...ほ、本物だっ!?」と裏返った悲鳴を上げた。

 奴の持つ片眼鏡のような道具がきっと何かの【鑑定】機能があるのだろうが、偽物でも本物でも今さらだ、良いからさっさとかかってこい。


 そんな鑑定結果の報告に、俺に怒鳴り散らしていた隊長らしき男が「魔法を使わせるな、討ち取れ!!」と叫んだ。

 この距離ならば一番近いのはお前だろう。叫ぶ(ひま)があったら、まずはお前からかかってこい。


 意外だったのは、俺に金の入った袋を投げてよこした男。飛びかかって来たのは奴の方だった。

 早い踏み込みからの抜刀。おそらく【勇者】と同等か、それ以上に素早い。


 だが、待ちの姿勢ならばまだしも、俺目がけて真っ直ぐに走ってくればタイミングは見え見えだ。

 1、2の、3で、お手本のようにキレイな形で斬り込んできた奴に対して俺は、()めて(さば)いて投げ落とした。

 サンシータの時に比べて手加減無しの縦回転で威勢よく地面に叩き落としてしまったが、多少地面にめり込んだとて、そのご立派な(よろい)(かぶと)があれば死にはしまい!



 間髪入れずに矢が三本、俺目がけて飛来してきた。

 だが、そういう武器は同時に射るから効果があるんだ、たわけ!!

 1、2の、3と順に風を切るその矢を俺は両の手で円を描くように、(かわ)して(かわ)して投げ返した。


 ...うん? 「投げ返した」? 俺が無意識に返したその一矢が、射手の一人の兜に刺さっていた。


 それを見た誰かが「破魔の矢に反射魔法だと!?」と叫んだが、違う! これは魔法じゃなくて、アレだ、分からん!

 いつだったかニアが言っていた、「飛んで来た矢を返す練習」を俺がやっていただとかいう、俺の記憶にもないアレだ!

 他の連中もいちいち騒ぐな、兜の中身はたぶん無事だ! それに三本中一本しか返さなかったのだから、少しくらいは大目に見ろ!



 誰かが杖のようなものを取り出して、魔法か何かを詠唱し始めたから、俺は【まほう】スキルで奴の眼前に熱波を起こしてそれを阻止した。

 俺に魔法を使わせないだの言っていたわりには、なぜ貴様らは使わせてもらえると思っていたんだ!? せめてもっと、バレないように工夫して詠唱しろ!



 いまいち(にぶ)い連中に、今度は俺の方から切り込んでいった。



 驚いていないでさっさと構えろ! 正眼に構えろとは言わないが、即対処できないならば大剣などやめてもっと軽い武器に持ち変えろ!

 剣に振り回され気味の男の肩を軽く押し、体勢が崩れた脇腹に掌打(しょうだ)を放った。へこんだのは(よろい)だけのはずだから死にはしまい、いちいち大げさに(うめ)きながら倒れるなっ! 演技派かっ!?


 そこの三人、横一列に雁首揃(がんくびそろ)えて何を(ほう)けている!? ちゃんと陣形や連携を考えろ! わざわざ「倒しやすい配置」で並ぶんじゃないっ!

 端の奴に体当たりをかまして将棋倒しにして、もたつく連中の顔面を(いち)()の、(さん)と順番に踏んでやった。...へこんだのは(かぶと)だけのはずだ、たぶん、死にはしまい!


 沈黙し、目を見開いたまま硬直する戦士達......貴様らは、さっきから、一体なんなんだっ!?

 貴様らは「抵抗しない犬や猿やオークの女共を専門に狩る集団」か何かなのか!? (ひど)すぎるっ!



 奴らもようやく本気にでもなったのか、(にじ)みだす殺気。俺を取り囲む気配に余裕が無くなってきた。

 それぞれ武器を構えながら位置を確認し合い、陣形を組み、俺に襲いかかるタイミングを測ろうと互いの呼吸を合わせ始めたが――



 ――遅いっ!! 始めからそうしろ!!

 その程度の技量ならば、いっそ遠巻きにして一斉にその剣を投げつけてきた方がまだマシだ!!

 (ほう)けてないで、さっさとかかって来いっ、たわけ共がっ!!



 ようやく全力で襲いかかってきた奴らを、俺も全力で迎え撃った――



 ――なんか、

 周囲からわらわらと、

 想定以上の数が集まってきたが、

 一匹いれば十匹は覚悟しろという

 あれだと思って覚悟を決めて、


 もう、


 片っ端から殴ることにした。




 途中、

 第二、第三の聖剣だとか、

 絶対禁忌の封印魔法とか、

 大層(たいそう)なものを出してきたから、


 とりえあず魔法で収納したり、

 振りかぶる途中で殴ったり、

 詠唱中に(あぶ)ったりして、

 一つ残らず、黙らせた――







「――!! ――...な!! 若旦那様(わかだんなさま)っ!!」


 ――...若旦那って、誰だ? まだ他に敵が...?

 ......あぁ、俺のことを言っている、のか?



「――...大丈夫っスか!? 若旦那様!?」


 全ての兵士達を地面へと、べったりぐったり沈黙させ終わった所で、以前俺に「チョイサー」を持ってきてくれたオークのオネーチャンが問いかけてきた。

 そう、そういえば、そうだった......


 わりと本気で襲いかかってきた連中を、俺は順番に叩きのめしている途中......いま、ようやく終わったところだった。


 ......あぁ、「大丈夫か?」と聞かれると、少々痛いところだが...


「...さすがにこの人数が本気でかかってくれば、俺も手加減は不可能だ。一応は配慮したつもりだが、あとは奴らの頑丈さに()けるしか無い」


「ちょ、違うッス! 若旦那の方は、大丈夫ですか!?」


「え、俺? ...正直、少し辛い。こういう事態は、体力もきついけど、色々と精神的に......いや、スマン。君らはそれどころでは無いのに()(ごと)いって...」


「いやいや!? こっちの心配はいいんで!? ...ま、まぁ、若旦那は怪我とかなさそーですよね...スゴい魔法とか使ったり、矢、反射してましたし......無事で良かったっス」


 チョイサーちゃんがホッと胸を()で下ろした。

 彼女達の方が大変だろうに、俺の方が心配されてしまった...だけど、まだ、ここで状況が終わったわけではないし、俺も泣き言をいうのはもう少し後が良いだろう。


「とにかく、こいつらのことは後回しだ。しばらくの間は動けないだろう。

 すぐに君らの生存者の確認を急ぐぞ.....おい、起きろサンシータ! 出番だぞっ!!」


 ちょうど俺がそんなことを叫んだ時に、むこうの方から、地面をスーーッと影が()い飛んできて、俺の影へと飛び込んだ。

 そして紺色のネコ耳だけが影からニュッと現れたから、俺は小声で話しかけた。


(...ニア、首尾はどうだ?)


(ぜんいん、応急処置だけなら、間に合った)


(よくやった!! さすがニアだっ!!)


 ニアには、俺が戦場のど真ん中に飛び込んで暴れる隙に、オーク達の生存者救出に回ってもらっていた。

 さすがに手遅れもあると覚悟はしていたから、「全員無事」の報告には思わず俺は叫びそうになってしまった。


 俺の言葉にネコ耳がうれしそうにピコピコしたが、俺の方は飛び跳ねたいくらいにうれしくて安心していた。

 ...危うく力が抜けて、ここでしゃがみ込んでしまいそうになったけど、まだ状況は終わっていない。俺は気を取り直して、大きく深呼吸をした。


 そのままニアには、まだ影の中に隠れてもらうことにした。

 周囲に伏兵の気配はないのだけれど、そういうスキル持ちとかだったら厄介だし、人数的にこちらが圧倒的に不利な状況だ。まだ全ての手札を見せたくはない。


 ...それにニア、だいぶお疲れだろう? 無理せずにしばらく休んでいてくれ。


 俺はサンシータと、動けるオーク達を動員して、事態の収拾に動き出した。



----------


 やがてオーク達の治療と生存確認も終わり、人族達も全員縛り上げて一箇所にまとめた。

 その間、敵も味方も追撃は無かったことを確認して、ニアを俺の影から開放した。


 オークの生き残り達は、そのまま集落の外にあるという彼らの里へと逃がすことにした。

 ニアが治療したと言っても、重傷で血を流しすぎた者達は当分は動けそうにない。人族達の前には見せないようにして、夜明けにでも動ける者達が連携して運び出すことになった。


 ここに来る途中で俺が見た「真っ赤な狼煙(のろし)」は水色のものに変わっていた。里への合図のようだけど、今思えば救援要請というよりは「近づくな」という信号のような気がしてきた。


 こちらの合図に対して、周囲からの応答らしきものが見当たらないのは、夜だから見えないとかではない。おそらくは「里を隠す」ことを徹底しているのだろう。

 オーク達も俺達の前では一切、里の位置とか援軍とかの話を口にしない。そしてその警戒心の高さは、今は好ましいと俺は感じていた。


 人族達の重傷者、俺よりもオーク達との交戦で傷を負った者達のようだ。一時的に拘束を解いて、人族達自身の手で薬や魔法で治させた。

 おそらく死者は出ておらず、むしろ貴重な薬を消費するだので文句を言い合っていたくらいだから多分、大丈夫なのだろう。


 まだ動けそうなオーク達を交えながら、現状の確認と今後の方針について、ニアに助言を求めた。

 あまりうれしい話ではないが、ニアは荒事には慣れている。今夜の哨戒(しょうかい)や夜警の手段とか、人族達の管理方法とかについて認識合わせをしておいた。



 どうやら自分達がすぐには殺されないと分かったからだろう、縛られた人族達の一部が、だんだんと饒舌(じょうぜつ)になってきやがった。


「...諸悪の根源、【徘徊する逢魔】め。人外どもの王が、このままで済むと...」

「黙れ、たわけ」


 この広場に残る戦禍の跡、見れば分かる。


 武装した五十人ほどの兵士達と、無手の数人のオーク達。

 【けんせい】スキルの影響なのか知らないが、この広場でどんな戦いが起きたのか、まざまざと目に浮かんできてしまっていた。


 血痕(けっこん)、髪や衣服の切れ(はし)、逃げ()いまわる足跡、一方的な蹂躙(じゅうりん)の形跡。


 オークの女達に誰一人として無事なものはない。ボロボロに破れた服装に、怪我の治療の(あと)を残す者達。男達に至ってはニアがどうにか命を繋いで、サンシータ以外は未だ全員倒れたままだ。


 無意識に俺は、言葉が漏れ出てしまっていた...



「...人の営みを食い散らかし、人を傷つけることで己が愉悦を満たしながら、なお、『我こそが人である』と名乗れようとは大した者だ。


 それともお前達は、本能のままに光に(たか)ったり高い所に登ったりする習性をもつ生き物達のことを『ヒト』として分類しているのか?


 ならば、この悪しき人外の王が忠告してやろう。


 もしもお前達も人語を解することができる種族であるのならば、その不思議な脳の辞書の中に、新しく『恥』という単語も加えておけ!

 それが分からぬようでは、やがて人の輪から弾き出されることになるぞ! このたわけ共がっ!!」



 ...こんなことを言っても無駄なのは分かっている。奴らは奴らの正義、俺の知らない定義や前提を元にひと仕事した、それだけなんだ。馬の耳に念仏でも唱えてやったほうが、まだマシだろう。


 それでも俺の言葉に苦渋の表情を見せた者達が数人いた。きっと純粋に、【徘徊する逢魔】の討伐にでも参加していた者達なのだろう。

 俺にとって迷惑なのに変わりはないが......まぁ、奴らも仕事なんだ。その仕事に泥を塗ってしまったと恥じ入る者達も、少しくらいは居たのだろう。


 その一方で、大半は俺の言葉に怒り狂う者達だった。

 こうなるのは分かっていたのに、俺も余計なことを言ってしまったから......


 俺の罵詈雑言(ばりぞうごん)に、奴らも罵詈雑言で返してきた。


 奴らの罵声(ばせい)の大体が俺がいかに邪悪かという主張であったが、具体的に何が邪悪なのかは今ひとつ分かっていないようで、ただ俺の存在を全否定しつつ便乗して叫びたいだけらしいことが、よく分かった。


 だが、


「【徘徊する逢魔】! こうなったのは、全部、お前のせいなんだよ!」


 ...その主張は、正直、(こた)えた。


 言われなくても分かっているっ! 俺が巻き添えにした!

 ...分かっているからこそ、できるだけ人族の『捕獲』に(つと)めたというのもあったんだ。


 こいつらを捕虜にして人族達と交渉するなり換金するなりした方が、こいつらを(しかばね)にして埋めるよりも、よほどオーク達の利益になると思っている。

 オーク達にとってはこの場で八つ裂きにせねば怒りは収まらないかもしれない、それでも、部外者の俺だからこそ冷静に人族達は生かしたまま、まずはオークの(おさ)の判断を待つようにと皆に指示したんだ。


 ...言われなくとも! 俺は俺でオーク達に対してはどう謝罪すればいいのかを考えるっ!!――



 ――...ん? なんだか暗くなって.....一体、何だ......なにごとだ?



 いつもの夜とは違う、まるで広場の篝火(かがりび)すらも飲み込むような暗闇が、突然押し寄せてきた。


 どうやら空に暗雲が立ち込め、渦巻き、それが徐々に濃さを増していっているようだ。

 この迷宮では雲すら珍しいのに、雨雲なんて見るのは俺は初めてだった。

 ...いや、本当に初めてか? これは...雷雲?


 いつぞやの「魔王の四天王」。あの魔法使いがユキと戦った時に見せた雷雲、それよりも、ずっと激しいやつだった。



 ...ニア?



 突然、周囲を闇に染める曇天(どんてん)の正体。

 それはいつの間にか、俺のすぐ隣に立っていたニア、彼女の唱える魔法が呼び寄せていたものだった。


 暗闇に(あや)しく輝くニアの青白い瞳孔に(にら)まれて、人族達は最早、誰一人として言葉を発することはできなかった。

 静まりかえる冷たい空気の中を、彼女の静かな怒りを(たた)えた澄んだ詠唱の声が、響き渡った――



 「(ひらめ)(ひかり)渦巻(うずま)(いかり)

  (とどろ)(さけ)び、黒雲(こくうん)()ち、

  九十九(つくも)(けん)(あらし)となりて

  (てん)()()き、()()らん――...


  ――()たれ、

   白雷(はくらい)!!」



 閃光、轟音、奪い尽くす白い渦。

 無数の落雷が、俺達を襲った――



 ――...って、()()()襲われたって思っちゃうよ!? こんなもの、降ってきたら――!!


 ――聞いたこともない炸裂音と、見たこともない光の氾濫(はんらん)

 肌を焼くような痛みは、熱? 感電? 包み込むそれらが膨大で、目も耳も、肌の間隔も麻痺してもう、さっぱり分からない。

 分かるのはただ、「やべぇ、(こえ)ぇ!?」という自分の心の悲鳴、それだけだ。やや手遅れだと思ったけれど、俺はそれでも地面に伏せて、頭を抑えて、その災害が過ぎ去るのをただ待った――



 ――十数分にも感じるような刹那(せつな)の災害が、俺の五感の全てを奪い続けた――



 ――どうやら、俺には雷は直撃しなかったようだ...まだ生きてるっ!

 ...閃光と轟音に襲われて、目も耳もまだ、チカチカしたりキーンとなったり、おかしなことになっているけれど......それよりも、驚きと恐怖で心臓が止まりそうになってしまった......

 そして少しずつ耳目と、全身の感覚が戻ってきた......


 焦げ臭いような変な匂いと、ピリピリとした生暖かい空気、真っ白に染め上げられた地面という非現実的な光景が、なんだか、やっぱり雷がいっぱい落ちちゃったんだという実感をあらためて、遅ればせながら連れて来た......それでも空は、いつの間にやら元の静かな星空へと戻っていた...


 ...地面の焦げ跡が、縛られた人族達の周囲を重点的に、キレーイに円状に取り囲んでいた。

 いや、焦げ跡? それは真っ白な灰かガラスのようだった。

 ぬるい風が吹き抜けてふわりと舞うそれは、あるいは霧か雪のようにすら見える輝きで...こんな時になんだけど、すごく綺麗(きれい)だと思ってしまった。


 ...そして、それらの中で呆然(ぼうぜん)と、ピクリとも動かない人族の連中の方は...どうだろう? あの雷撃に囲まれたショックで心臓が止まっていてもおかしくはないけれど......今は、それよりも、だ。


「...ニア?」

「大丈夫、一発も当ててない」


「...当ててなくてもショック死しちゃうし、ほら、俺も離れててもなんだか少しビリっとしちゃったよ?」

(あるじ)、あんな奴らの言うことを聞いちゃ、ダメ」

「えっ?」


 俺の抗議というか、注意の言葉を無視してニアは、俺に対して怒りながら言った。


「無法者はただ暴れたいだけ。理由なんてあとから作る。主がどんなに避けたって、あいつらはすべてを、主のせいにするつもり」


「...俺の代わりに怒ってくれたんだね。ありがとう、ニア」


「......次はもう、ゆるさない」


 内に込めた怒りを吐き出すように、フーッと、ニアが息を吹いた。



 正直、俺には何が正解かのか分からない。人族もオークも、【徘徊する逢魔】も、何が何やら俺にはさっぱり分からない。



 俺も人族(やつら)らも怒りのままに、ただ命を奪い合うほうが余程単純(シンプル)だとすら思えて......その思いに、心血がサッと冷えるのを感じてしまった。


 ...俺はニアの肩を抱き寄せた。ニアは温かかった。


 こんな夜中に一緒に走らせて、怪我したオーク達を救って回らせて、かなり無理をさせてしまった挙句(あげく)に、何やら叫ぶ人族に俺の代わりに怒ってくれて......ニアにずっと助けられっぱなしだった。


 この殺伐とした夜に、一つだけ確実にある温かさを確かめるように、精一杯の感謝の気持ちを込めるように、ニアの頭をそっと()でると、ニアの尻尾が俺の足をくすぐるように巻き付いてきたのだった。


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