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意外な人物の接触

 翌日は学校だった。俺は昼休みになると学食の裏にある石畳に座り込み、もそもそと一人寂しく弁当を突いていた。


 おいしいはずの弁当も、なんだか味気なく感じられた。そのことが、鮎菜ねーちゃんに申し訳ないことをしているような感じがして、ついため息がこぼれ出る。今ごろはきっと、俺から幸せとかいうものが蜘蛛の子を散らすようにして逃げ出している真っ最中だろう。


「……はぁ」


 昨日の合コンは、結局椎川とは微妙な空気のままに終わった。連絡先を交換し合う、みたいなことも特になかった。多分、彼女とは、もう二度と会うことはないだろう。


 森畑などは、「でもさあ、悠々ちゃんさあ、マジでサッちんのこと……」などと。多分慰めようとしてくれたのだろう、そう言って声をかけてくれた。でも、俺の反応がいまいち冴えないのを見て取ると、言葉を引っ込め、彼は「ま、きっとそのうちいいことあるべさ!」と無責任とも楽観的ともつかないことを言って、バシバシ背中を叩いてきた。


 一方で樹里の方は……そう、樹里は。


『今日の態度、なんなの?』


『なにかあたしに隠したよね?』


『どうして妙な隠し事するの?』


『ちょっとは話してよ』


『ねぇ、大ちゃんってば』


 みたいなメッセージを、大量に送りつけてきた……なんて、ことはなかった。


 むしろ、連絡が送られてくることは一切なかった。そのことが逆に、彼女がなにをどう考えているのか分からなくて、俺を落ち着かない気持ちにさせていた。


 ただでさえ、変な感じに拗れてしまっていたところで、これは痛い。


 オレだって樹里と喧嘩みたいなことをしたいわけじゃない。一緒にいてもそんなに気を使わなくても構わなくて、雑な態度でもなんとなくお互いに許し合うことができて、だからほんのりと居心地のいい感じがする……そんな相手と仲たがいしたままでいいなどと思えるわけがない。


 端的に換言すると、樹里とは仲直りがしたかった。昔のようにお互いに単純なガキだったら、「ごめんね」「いいよ」「じゃあ遊ぼう!」みたいな言葉だけですべて解決したというのに、高校生ってやつはそうはいかない。そのことがやたらともどかしい。


「ぬはぁー」


 でかいため息をこぼして、立てた両膝の間に頭を突っ込む。間抜けな格好だが、こうやって丸まっていると視界が適度に狭まってなんとなく気分が落ち着くのだ。


「ぬはぁー」


 そんな俺の頭上から、これまたでかいため息が聞こえてくる。というか、明らかに、俺の漏らしたため息をそのまま真似てみました、という感じだった。微妙に演技がかっている。


 気づかぬ間に、誰かが傍まで近寄ってきたらしい。この場所にいる俺に絡んでくる相手は、樹里ぐらいしかいないだろう。そう思い顔を上げたのだが、視線を向けた先にいたのはあまりにも意外な人物だった。


「どーも。笹原、こんなとこで昼飯?」


「どーも……っつーか、これはこれは、なんというかその、随分と」


「随分と?」


「……俺のことを苗字で呼ぶなんて、だいぶ珍しいというか、ほとんど初めてじゃないかとか、まあそんな感じなわけだけど」


「あー……」


 彼女――睦月の学校の友人であり、俺に『ギンチャク』なるあだ名を一番最初に命名した女である杉岡早苗は。


 その、少年っぽい顔つきに、一抹の気まずさと罪悪感を滲ませながら、口を開いたのであった。


「いや、その……ごめんて?」

いつも感想とかめっっっっっちゃくちゃ嬉しいんですけど最近普通に仕事が忙しくて返信する余裕まではなかなか作れそうにないです!

ごめんなさいマジで! いや、ほんと、ごめんて?

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