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6. 王女の自覚



 馬車は走り続け、城からはずいぶんと離れたようだ。教会があった辺りの住宅地とは異なり、人の姿はない。農地が続き、民家は点々と遠くに見えるだけとなっていた。

 本日の公務は、バラ農園の視察だ。私の初の公務ということで、ただ、国の唯一の輸出品であるバラの栽培所を見てくるだけという簡単なお仕事だ。

 今日、私がお邪魔するバラ農家は、王都にある農家の中では、出荷量が最大で、代々その家が守り受け継いできた大きなバラ園があるらしい。もっと田舎へ行けば、そこよりももっと広い敷地で生産している農家が何軒もあると教えられた。しかし、バラ農家は国内にいくつもあるというのに、作っているバラの品種は、例の昔の国王が改良して作った品種、一種類だけというのは不思議だ。いろいろな種類があったほうが楽しめると思うのに、この国のアンデッド達の考えは、私には理解出来ない。


 そこへ、まだバラ園は見えてこないのに、嗅ぎなれた強烈な香りが漂ってきた。嫌な予感を抱きながら、ポツリと呟く。


「もうすぐ着きそうね」


 それに対し、ニーナも眉を寄せて同意する。


「あら、この匂い。もう馬車の中まで匂ってきてますね。私、姫様がこのバラの匂いをどうしてそんなに気にするのか、初めの頃はよく分かりませんでした。でも最近は、とてもきつく感じてしまって…。私の鼻が変わってしまったんですかね」


 ああね…。それはつまり、こういう事だ。私が薬を開発するまでは、常に腐敗臭などの強烈な匂いが城の中に充満していて、それを嗅ぎなれていたために、鼻がマヒして、においに鈍感になっていたのだろう。今は、腐敗臭は綺麗さっぱりなくなり、私の開発したボディクリームや入浴剤には、優しい野草の香りしかつけていない。ニーナの鼻が、僅かなにおいにも敏感に反応するようになったのだろう。やっと正常に戻ったってことだね。


 大きな民家の前で馬車は止まった。馬車の扉を開けると、予想よりもはるかに強い匂いが襲い掛かって来た。「ううっ!」と思わず唸ってしまったが、それは仕方のないことだと思う。数秒息を止めて耐えていたが、いつまでも息を止めていられるわけがない。ゆっくり息を吸い込むと、観念して、恐る恐る馬車から降りる。

 家の前には、中年の女性と、10歳くらいの少女、そしてその子の弟とみられる少年が、満面の笑みで立っていた。  

 頑張れ私! 笑顔よ、笑顔!

 王女の視察を、心待ちにしてくれていたであろう彼らに、不快な思いをさせてはいけない。気合を入れて、なんとかいつものように微笑み顔を作る。ニーナはハンカチで鼻を押さえ、苦し気な顔をしている。私は目配せをして、それをやめるように伝えると、ニーナは慌ててハンカチを下ろし、苦し気な笑い顔を作った。

 中年の女性は、にこやかに歩み寄ると自己紹介を始めた。彼女はこの農園を経営しているカルニーさんに嫁いで12年間、ずっとバラの栽培を続けているそうだ。横に立つ彼女の娘と息子は、明るく素直そうな子らで、元気に挨拶をしてくれた。

 エミリには馬車で待っていてもらうことにして、農園のハウス内で仕事をしているカルニーさんの所へ、夫人らに案内してもらう。


「うちの主人はバラ仕事一筋なのです。家族のことはそっちのけで、バラにしか興味のない男ですが、その仕事熱心な所に惚れて、彼と一緒になったんです」


「父ちゃんはバラを作らせたら世界一だぞ! いろーんな種類のバラを作ってるんだ!」


 元気に言った少年の口を、その子の姉がガバッと塞いだ。


「こら! 王女様になんて口の利き方してるのよ! す、すみません、うちの弟が…」


 謝る姉に、私はフルフルと首を振る。そんなことより、今、とっても気になる事を聞いた。


「別の種類のバラも作っているのですか?」


「あ、いえ、品種改良は、主人が趣味で始めたことなんですよ。国花である、あのバラのように素晴らしいバラではないんですが…」


 慌てて夫人が言うも、いいことを聞いてしまった。あのバラ以外のバラも見てみたい! もっと控えめな、いい香りのバラがあるかもしれないしね!

 

 やっと人が通れる細い道を歩いていくと、大きなガラス張りのハウスが見えて来た。バラの香りがますます強烈になってくる。

 あ…、ごめん、ニーナ。私もハンカチで鼻を押さえたい…

 しかし、さすがに鼻を押さえるのは失礼にあたると思い、頑張って耐えていたが、あまりのキツイ匂いに、クラクラとめまいがしてきた。思わずふらついたのを、後方に控えていた騎士が支えた。私は騎士の腕にしがみつきながら、なんとかハウスの扉前まで移動した。


 扉の中から、頬っ被りと手袋をつけた男性が出て来た。開け放たれた扉から漏れ出る香りと、何故か腐敗臭までしてきて、今度は、激しい吐き気が沸き起こってきた。

 お、おえー…。ぐ、ぐるじい…!!

 しかし、今は公務中。私は騎士の腕を放し、ググっと背筋を伸ばし真っ直ぐに立つと、胃から飛び出そうになっているモノを懸命に抑えこむ。脂汗が額にじわじわと浮かんだ。


「わが農園にお越しいただき、誠にありがとうございます。私がこの農園の主、カルニーです。姫様に、うちで作ったバラを送らせてください」


 カルニーは心底嬉しそうに述べると、今、摘み取ったばかりと思われる大きなバラの花束を差し出してきた。だが、それを夫人が止める。


「あなた、失礼ですよ。王女様の前で、そんな恰好」


 カルニーは、「ああ、そうだね。失礼しました」と謝って、被っていた頬っ被りと手袋を外す。

 隠されていた彼の頬と手の甲を見た瞬間、私は、「ひいっ!」と喉の奥で小さな声を上げた。幸いにも、それは誰にも気づかれなかったようだ。私は目を見開き、ゴクッと唾を飲み込んだ。


 なんと! カルニーの頬と手は、腐敗してグズグズに崩れていたのだ!


 私が薬を作る前の城の使用人たちも腐敗臭はしていたが、これほどまでに腐敗が外面に現れている者はいなかった。まさに目の前のカルニーは、前世で私が子供の頃に映画で見たゾンビ、そのままだった。


 青白い顔をさらに真っ青にしながらも、花束を受け取るため、震える両手をギギギギ…と、ぎこちない動作で前へ出す。もう、笑顔など保っていられない。

 は、早く、早く彼の前から逃げ出したいっ!!

 カルニーは私の怯えた様子には気づかないで、崩れた顔に笑顔を浮かべ、花束を手渡してきた。

 その時、彼の手のグチャリと崩れた皮膚の中からウジ虫が這い出てきて、彼が持つ花束を伝うと私の手へと移り、うねうねと腕を這い上がって来た!

 それを見た瞬間、私の保っていた正気は失われた。


「うっぎゃーーーーー!!」


 私は盛大に叫び声を上げ、それと同時に口からは血しぶきを飛ばしカルニーの顔面にぶっかけると、そのまま意識を失った。



 ----------



 薄暗い道を、大勢のゾンビが両手を前に出し、無表情で追ってくる。彼らの肌は崩れ、そこから白いウジ虫がうねうねと這い出ている。私は目に涙を浮かべ、必死に逃げていた。


「やだやだ、来ないで! もう、こっちに来んなって言ってるでしょうがーーー!!」


 その時、左手を優しく包む感触と、私を呼ぶ少女の声が聞こえた気がした。パチッと目を開くと、エミリと、なんとマテウスの顔がそこにあった。マテウスは握っていた手をサッとほどいて後ろに隠した。


「あれ? なんで私…」


 ここは自室のベッドの上だ。いったい、どういうことだろう…?

 ぼーっとしたまま、体を起こす。


「ああ、良かった! もう、心配しましたよう。姫様になにかあったら、私1人で世界を救わなくちゃいけなくなるじゃないですかー!」


 エミリはホッとした顔をしたと思ったら、急に怒り出し、うえ~ん!と声を上げて泣き出した。マテウスはエミリに疑わし気な目を向けている。エミリは不用意に思った事をペラペラとしゃべってしまう性質みたいだ。周りから、頭がおかしい子と思われそうなので、後でしっかり言い聞かせておこうと思う。

 …って、それはいいとして、今、どんな状況なんだい?

 未だ事態が飲み込めず、キョロキョロと周りを見回す。2人の後ろに控えていたニーナが、心配そうに顔を覗き込んできた。


「姫様、大丈夫ですか? 姫様はバラ園で倒れられたんですよ。覚えていますか?」

 

 ニーナの言葉に、ハッと思い出す。

 そうだ! 私ったら、何たる失態を!! た、確か、ウジ虫が腕に這い上ってきて…!

 両腕を確認するが、ウジ虫の姿はない。一瞬ホッとするが、問題はそんな事じゃあない! 王女として、あるまじき行為をしてしまったのだ! カルニーさんの血まみれになった顔を思い出す。

 ああ、やっちまった…。初の公務だったのに…。掛布団を握りしめ、ガックリと項垂れる。こんな王女様、私がこの国の国民だったら、嫌だよ。人様の顔見て悲鳴を上げて、顔面に血をぶっかけてくる王女なんてね…ハハハ。

 

「お、おい、大丈夫か? すごく顔色が悪いぞ」


 そう言ったマテウスを見ると、心配そうに眉を下げている。先日は、ずいぶんと私に腹を立てていたはずなのに、心配して会いに来てくれたんだろうか…?


「わざわざお見舞いに来てくれたの? どうもありがとう。さっきは手を握ってくれていたの?」


「あ、あれは…う、うなされているようだったからな! 父上に言われて、仕方なく来ただけだ! お前のことを許したわけではない!」


 マテウスはそう言って、頬を染め、そっぽを向いてしまった。私はもう一度お礼を言うと、彼に謝罪した。


「マテウス…この前はごめんなさい。私、間違った考えをしていたみたい。今日、それを思い知ったわ」


 マテウスが先日怒った訳を、今日の自分の行動を顧みて、思い至った。

 私は人間としての生を終え、アンデッド国の王女として生まれた。もう来澄碧(きすみあお)ではなく、イザメリーラなのだ。ここは乙女ゲームの中のファンタジーの世界ではなく現実で、私は「アンデッドの国に迷い込んでしまった人間」ではないのだ。

 今までは心のどこかで、この国の客人のような気分でいた。この国が貧乏なのも、国民がにおいや見た目が悪い不気味なアンデッドなのも不満だった。この国に生まれた事に、後悔しかなかったのだ。

 だが、自国の王女がこんな人物で、国民は幸せか? 王位継承権を持っているのは、今のところ、この国では王の一人娘の私だけ。こんな人物が次の王になるなんて、この国の国民は幸せか?

 この国に生まれて5年。私はもう分かっていた。アンデッドであるという事以外、人間とこの国の者に違いはない。それどころか、前世の地球の人達よりも、もっとお人好しの善人にしか会ったことがない。前世のファンタジーの中のゾンビの影響で、この国のアンデッド達も、あの凶悪なゾンビと同じように見ていたのではないか。偏見を持って接してはいなかったか。


「ニーナ、私、カルニーさんに手紙を書くわ。謝罪したいの…」


 ベッドから降りると、マテウスが後ろに隠している手を強引に取って両手で握った。


「マテウスありがとう。私、自分が間違っていることに気付けたわ。あなたのおかげよ」


 マテウスが帰ったすぐ後に、忙しいお父様とお母様も様子を見に来てくれた。エミリのように泣き出しそうな顔で心配してくれたが、元気な顔を見せたら、安心して戻っていった。

 公務で失態を犯したというのに、誰からのお咎めもなし…? いいのか、これで…? いやいや、ダメでしょ!? せめて、自分だけは自分に厳しくなろうと誓った。


 私はすぐにカルニーさん宛に手紙を書くと、なるべく早く届けるようにと指示を出し、ニーナに渡した。彼女はすぐに御者と馬車を手配して、自ら手紙を届けてくれた。

 ニーナが彼の家に着いたちょうどその時、自分が王女様を害してしまったとショックを受けたカルニーが、自宅で自殺を図ろうとしていたところだったらしい。手紙を渡して、なんとか思い留まらせたのだと、帰ってきたニーナに聞いた。

 あ、危なかった…。すぐに手紙を届けなかったら、大変な事になっていた…! ニーナにお礼を言い、とりあえず、カルニーさんが無事で良かったと胸をなでおろす。

 はあ…全く。この国のアンデッドは、純粋というか、無垢というか、素直で気が優しい者たちばかりだ。普通だったら、「なんて失礼な王女だ!」と、激怒してもおかしくないというのに…

 

 この事件により、前よりも王女の自覚を強く持った私は、さっそく行動を開始した。お父様に面会の許可をもらうと、翌日、指定された時間に王の執務室へと向かった。

 もう1歳の子供じゃないからね。いきなりアポもなしに突撃したりはしない。私も日々成長しているのだ。


「お父様、参りました」


 ドアをノックすると、中から王の側近がドアを開けてくれた。お父様が正面の贅沢な椅子に座ったまま破顔した。


「おお、待っていたぞイザメリーラ! 今日はなんの御用かな?」


 ずいぶん前から待っていたようで、机の上は綺麗に片づけられ、冷めた紅茶が乗っていた。


「お父様、私の作った薬を国民にも分けてあげたいのです。手配してもよろしいでしょうか」


 「ああ…」と、お父様はわずかに眉を下げる。そして思案したのち、私に告げた。


「うむ。あの薬を民に広めるのは、私も前から考えておった。だが、お前の能力はなるべく隠しておきたかったのだ。あの薬が知れ渡れば、誰が作ったのかと話題になるだろう」


「国で開発したということにすれば、よいのでは? 5歳の娘が作ったなどと言ったら、頭がおかしいと思われるだけでしょうし」


 王は、両手を顎の下で組み、首を横に振った。


「いや、我が国に限っては、それはない。他国ならそうだろうが、我が国民は、素直に受け止めるだろう」


 ええっ、そうなの!? いやいやいや、まさか、そこまでバ…純粋じゃないだろう。


「現に、お前が作った薬を使って嫁いでいったメイドらが噂を広めておる。お前に薬作りの才能があるのは、一部の国民の間では有名になっておるのだ」


 ああ、そっか…。彼女たちが広めてるなら、信憑性があるもんね。もう、バレたらバレたでしょうがないんじゃないかな?


「お父様、お父様は私を心配してくれてるのだと思いますが、私は何を言われても大丈夫です。私もお父様のように、国民を助けたいのです。どうか、薬を国民にも分け与えてください。もちろん、無料ではなく、わずかでも儲けを考えてくださいね。そのお金で、国民の生活を豊かにする政策も行えるのではないでしょうか」


 私は、今度こそはディカフェス医師の助言を受けながら、カルニーさんのように症状が重い者に効く薬の開発を始めた。ディカフェス医師はさすがに薬草に詳しく、他国から取り寄せた、この国では貴重な材料をすでにいろいろと手に入れていた。それらを使わせてもらい、新薬作りは順調に進められた。

 しかし、国民らに薬を行き渡らせるには、お城の中庭にある薬草畑では、薬草の数が全然足りない。お父様にお願いして、王都の郊外に広大な土地を用意してもらって、そこに薬草畑を作った。畑を世話するための新たな農民も雇い、薬草栽培のノウハウは、今まで薬草の世話をしてくれていた庭師やメイドらから学ばせた。


 あの事件から1か月後。馬車に数種類の薬を積むと、ディカフェス医師を伴って、私はカルニーさんの家へと向かった。今日行く旨は、事前に手紙で知らせてある。

 家の前に馬車が到着すると、顔と手を頬っ被りと手袋で隠したカルニーさんが慌てて家の中から出て来た。馬車から降りた私に、頭を深く下げて謝ってくる。謝りたいのはこちらの方だと伝え、とりあえず彼と一緒に家の中へと入った。

 今日は、彼を治療しにきたのだ。まだ薬は開発途中だが、従来のクリームよりも、効き目が強力な物が出来た。実験台にして申し訳ないが、これを彼に使ってもらおうと持ってきたのだ。

 

「傷口を見せてください」


 私がお願いしても、彼はいやいやと首を横に振った。


「姫様にこんな醜いものを見せる訳にはいきません」


 彼は頬っ被りをしっかりと押さえ、取られてなるものかという体勢だ。

 あー…ごめん。私のせいだな、こりゃ…

 私とディカフェス医師が困っていると、隣の部屋から、彼の息子が飛び出して来た。


「父ちゃんは醜くなんかない! 父ちゃんを醜いって言うやつが醜いんだ!」


 夫人と彼の姉が慌てて息子を隣の部屋の中へと引っ張る。私はそれを止めて少年の前に進んだ。


「本当にそうね。この前はお父さんに失礼な事をしてしまって、ごめんなさい。今日は、お薬を持ってきたの。これをお顔に塗ろうと思うんだけど、あなたも手伝ってくれる?」


 少年は戸惑いながら薬を受け取ると、父親の元へ行って、彼の頬っ被りを取り去った。カルニーは観念して、大人しく両腕を下げた。

 ディカフェス医師は崩れた皮膚をじっくり観察すると、名医らしく、厳格な態度で言った。


「これは重症だな。こんなになるまで放置するとは…。もっと自分の体を大事にしなさい。自分1人の体ではないだろう?」


 医師に言われ、カルニーは項垂れる。息子は父親の肩に抱きついた。 

 医師は鞄から私が開発した殺虫剤を取り出すと、カルニーの服を脱がせ、頭の上から腹まで、上半身にたっぷりと散布した。彼の体に巣くった虫が悶えながら何十匹と這い出て来た。

 思わず目を逸らしそうになったが、首を小さく振って、患部に視線を戻す。そして、ディカフェス医師の治療を真剣な眼で見つめた。


「よし、次はこいつだ」


 医師は蒸留水を取り出すと、薬剤を綺麗に洗い流す。そして今度は消毒液で患部を濡らした。それが乾くと、少年に告げた。


「さあ、仕上げだ。その薬を全身に塗っておあげ。姫様が作った薬だ。良く効くぞ」


 少年は驚いた顔をして私を見た。そして、瓶の蓋を開けると、薬をすくい取って、カルニーの体に塗り始めた。患部が広いのでなかなか塗り終わらない。夫人と少女も出てきて、一緒に塗り始めた。


「7日後にまた来ます。薬はたっぷり置いていきますので、毎日欠かさず、今の順序で塗ってくださいね」


 そう言い置いて、私とディカフェス医師がカルニー宅を後にした7日後、私たちが再び彼の家に行くと、嬉しそうな夫人と子供らが迎えてくれた。

 カルニーを診察した医師は、彼の皮膚は、もうほとんど完治していると告げた。私を見るディカフェス医師の目は呆れていた。



 

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