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重なるものは 離

 二度三度と瓦礫の山を越えて、たどり着いたのは一つの小屋。

 小ぢんまりとして可愛らしいが、瓦礫に囲まれた一軒家と考えると少し不気味さを覚えた。


 適当にくつろいでよ。なんて言われて差されたのは、ベッドを傍らに机一つに椅子二つ。診察室、だろうか。とてもくつろげるような場所ではなかった。

 加えて、二人は話があるからと私を置いて行ってしまった訳で。全く大層なおもてなしだ。

 私は大きく息を吐く。

 これは、現状に対する不満。それともう一つ。先程から止まない、理由の無い胸騒ぎを紛らわすためのものだった。


 リズなら、この理由を知っているのだろうか。その気になればリズと会話できるのだろうか。そう思い、私はリズへと意識を注いでみる。

 すると―


 うずくまって小さくなりながら、念仏のようにブツブツと何かを唱え続ける少女が目の前に現れた。

 驚きのあまり塞がらない口のまま私が名前を呼ぶと、リズは頭を抱えたままゆっくりとこちらを向く。どうやら、意思疎通が可能なようだ。

 ならばと私は胸にのしかかる不安の理由を尋ねるが、返ってくるのは違うという言葉の一点張りで、会話にはならなかった。


「君はリズで、あの子はランス。聞くんじゃない。呼び起こすんだ。」


 どうしようか考えていたところ、突如降りかかる声で、私は驚くと共に喜びと怒りに襲われる。


「ミスト! どこ行ってたの。」


 柔らかい感情をどうにか抑え、怒りをぶつけるとミストはやけにあっさり謝った。しかしそれは軽率ではなく。姿は見えないが、とても申し訳なさそうにしている様子が目に浮かぶ程だった。

 それなのに、どうして今まで出てこなかったのかは口をつぐんだ様子で答えてはくれない。


「今はまだ出てこれない。ごめんね。」


 ついでのように言い残すと、結局何も進展のないままその場を沈黙が呑み込んだ。

 私はリズ、あの子はランス……。ミストの言った言葉を反芻するも、わからないので取りあえずリズの近くによってみた。

 大丈夫?そんな投げかけも虚しく消える。


「一人じゃないから、頭を上げて。その気持ち私と半分こしない?」


 どうにか元気付けようと放った問いに、リズは初めて頭を抱えるのをやめた。

 そうして何処か物憂げに、こちらへ手を伸ばす。

 軽く丸まった手には迷いが見えるが、そんなものはお構いなしに、私はその手を握りしめた。


 バチッ!と電流の流れたように私に記憶が流れ込む。

 かつてはここに栄えていた街の、終わり。

 地獄のような。ただの悪夢ならどれだけ良かったかと思う程の凄惨な光景。

 それでも必死に私は、リズは。中央に立つ化け物に話しかける。

「起きてください! お願い。カイさん、起きて……」

 何度も、何度も。

 私は届く筈のない声を送った。

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