表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/79

変わったらしい立場 離

「さて、じゃあ何処に行こうか。」


 キョトンとした顔をして、ミストは無責任なことを口にした。

 急に投げやりになったなと思いながら、私が黙ってそれを見つめていると、「何?」とでも言わんばかりに目をぱちくりさせてきた。


「カイさんの」

「それ、辞めてくれる? 虫唾が走るんだよね。」


 耐えかねて、思いを声にしようとしたのに、遮られる。ミストはしかめっ面をしているが、何に対しての物なのかは分からない


「呼び方だよ。変えよう。そうだな、マリネでいいか?」


 私がどれだけ不思議そうにしていたのか知らないが、そう付け加えられる。私がカイさんと言うのは相当いやなことらしい。ポンと雑に出したであろう新しい呼び名を提示される。

 特に断る理由も無いので、仕方なく私はそれをのむ。


「マリネさんのところに行かないの?」


 そして、先程は遮られたことを今度は最後まで言い切った。


「君はレベルも上げないでラスボスに挑むのか?」


 心底わからないといった顔で言われた。

 どの口が言っているのか、わけもわからぬままラスボスに会わせたのは誰だよ。

 文句の一つでもぶつけてやろうとしたが、逃げるようにして私の視界からミストが消える。


「よいしょ。」


 ん?

 何処へ行ったのか疑問に思うよりも前に、ミストは私の背後に現れた。そして、抱きしめるように手を私の腰に回す。


「じゃあ、行こうか。」


「え、え? わ――」


 背の高い草を見下ろし、一瞬木の葉に囲まれたと思うと、急に開けた場所に出る。眩い明かりに襲われて、ようやく朝を実感する。

 空だ。

 空に浮いている。さっきまで私を閉じ込めていた木々は、小さく小さくなって、ついには真っ白いもので全く見えなくなってしまった。

 あぁ、ああ。

「―ああああああぁぁ!!!」


 どれだけ叫んでも声がかれないという新しい発見があった。


「つーいた!」


 多分、そこまで長い間飛んでいたわけではないと思うが、とても久しぶりに地についたような気がした。

 私はぐったりとしていると言うのに、ミストはむしろ生き生きとしているように思える。


「どうして、何も言わずに、こういうことするの。」


 カタカタと震える身体で、今にも消えてしまいそうな声を出した。聞こえているのかいないのか、相手は微笑み首を軽く傾けてみせる。


「っていうか、飛べるなら早く言ってよ!」


 長い道、暗い森の中を歩かされたのを思い出した。

 私は怒りをあらわにしているのに、ミストは尚もニコニコとしている。


「……なんか、態度違う?」


 今までの、少し間をおいた、畏まった感じがなくなった。気の知れた友達、なんていえば聞こえはいいが、礼儀配慮がなくなったといえばそれまでだ。

 私がその旨を尋ねようとすると、


「立場が変わったんだよ。」


 そう、ミストはすぐに答えてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ