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あの人は敵 離

 うなされるようにして起き上がったランスは、酷い顔をしながら頭をおさえた。

 そして、指の隙間から焦点の合っていない、朧げな眼を周りに向ける。探している影は、見つからない。


「神様、気分はどうだい?」


「茶化さないで。少なくとも、今はそんな気分では無いわ。」


 少し遠巻きに声をかけられ、不機嫌そうに応答をすると、ふらふらとした足取りで声の方に向かう。

 が、一向に近づく様子がない。というのも、ランスが一歩踏み出す度に、ミストが同じだけの距離を取るからだ。


「なんのつもり?」


 直ぐにでも爆発しそうなところを堪え、ミストに問う。

 しばらくしても返事が無いことに、ランスの顔はさらに歪む。


「何で邪魔をしたの? まだカイさんと」

「君は誰だ?」


 ミストは質問に答えなかったにも関わらず、続けようとした言葉を遮って、逆に意図のわからない質問を投げかける。


「はぁ!?」


 募る思いもあり、声が荒くもなる。

 

「ふざけるのもいい加減にして。」


「真面目だよ。君の名前は?」


 いつもの笑みは何処へやら。今までにない冷たい眼差しは、激情している少女を凍てつかせる。


「私、の名前……ランス?」


 自信の無さそうな声。怯えてすくんだ小さな音。

 それを聞いてか、ミストは少しだけ距離を縮めた。


「僕の判断は間違ってなかったみたいだ。」


「何がよ? 私は望んでいなかった! もう少し、話をしたかった。」


 少女は、今にも泣きそうな感じで言った。

 そんな心からの叫びにも、ミストは少しも動じない。


「望んでいなかった? 何が?」


 あくまでも威圧的に、それでも淡々と少女を問い詰めていく。


「さっき言った、カイさんとやらの返答の事か?」


「それもそうだけど、カイさんの気持ちをもっと知りたかった。」


 ランスは、先程会ったばかりだというのに。長い時間を共にしたかのように。ずっと思っていた人のように。

 少女は苦しそうに、そう口にした。


「それは君の意思じゃない。少し、遅かった。リズという子と君は、混ざり合ってしまった。」


 そんなはず無い。とも、言い切れなかった。カイさんを最初に見たときはまるっきり恐怖の対象であったのに、今はそうは思わない。その顔を思い浮かべると胸が締め付けられる。

 そんなことをランスは思う。


 もう、きっとあの人の事を


「敵を、敵と思えないなら。もう、終わりだ。後は君の勝手。僕は次をあたる事にするよ。」


 随分と、あっさりとミストが言った。提案ではない。何かを人質にとった交渉でも。

 確定した事項を述べているようだった。


 一瞬、冗談だとも思ったランスだが、溜息をつくようにして背中を見せるミストの姿を目の当たりにすると、そんな事も思っていられなかった。


「駄目!」


 咄嗟に去ろうとするミストの襟を掴んで、引き止めた。

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