干渉 離
「分裂した?」
自分の持っている林檎と、目の前に置いてある物を見比べる。形どころか、些細な傷までも瓜二つ。
しかし、少しの違和感を覚える。
「色が、薄い?」
ランスが持っている物は、元のところにある物よりもほんの少しだけ淡いように感じる。
「君の力だよ。」
「は? 林檎を二つにする事がですか? とても面白いですね。」
ランスは全くの真顔でそう言った。
「分けることだよ。まぁ、現実に影響する事はほとんどないけど。」
「分けることってねぇ、、、」
手に持った林檎を元の場所に置くと、吸い込まれるようにして二つが一つになった。
もう一度手に取ると、同じように二つに別れる。それを片手に持ったまま、もう一個、と思ったが、それは出来ないようだ。
「使いどころのない能力ですね。こんなので世界を救うなんて、とんだお笑い草ですよ。」
ランスは興味本位でだろうか、おもむろに林檎を投げる。林檎は壁にぶつかり地面に落ちた。
「よくわからない。」
そう言うと、溜息を一つ。
ランスはしかし柔らかい表情で、ミストの方を向く。
「行きましょう。」
ミストは直ぐに頷いた。
先程までよりも早いテンポで進む足取りで、二人は街の外へと向かう。その途中、ランスの足が止まった。
「あれ、何でしょう。」
ランスの指をさす方には、親子のように思える二人が居る。それだけで言えば何もおかしな話ではないが、その様子がどうも不自然に思う。
うずくまるようにして座る母親に見える人、その傍で子供が心配そうにそれを眺めている。時に覗き込むようにもしているが、まるでそれが見えていないように母親は振る舞う。
「なんだか、気になるな。」
無視をされているように見える状況を、今の自分と重ねたのか。ランスはそれにゆっくり、ゆっくりと近付いて行った。
「あまり、オススメはしない。」
突然、ミストがそんな事を言う。それが届いているのだろうかはわからないが、構わずランスは進み続けた。
「もう、いいよ。大丈夫だから。」
近くに来ると、小さな子が何やら話しているのが聞こえて来た。それでも母親はうずくまったまま動かない。
強烈な違和感を覚えた。ランスはもう一度その子供をしっかりと見る。
「え?」
それでやっと気がついた。
子供が宙に浮いている事。それに、母親を触れようとする手が透けている事に。
「お化け?」
「そんな所かな。」
ランスがそう言ったとき、バッチリ子供と目があった。




