表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/79

ずっとずぅっと 輪

「名前は何ていうの?」


 私が尋ねるとリズによく似たその子は首を振った。


「忘れちゃった。名前、呼ばれないから。」


 その子は俯きがちにボソッとした小さな声で呟いた。そんな事がありえるのだろうかと思ったが、そんな事は正直どうでも良かった。


「何処から来たの?」


「わからない。馬車で何時間もかけて来たの。」


 そうか、やはり。

 薄々思ってはいたが、この子は捨てられたのだろう。でなければこんな森の奥に一人で居る理由がない。ああ、本当に、都合がいい。


「フフフッ、またお気に入りを見つけましたか?」


「女神、、、」


 脳裏によぎる、嫌な記憶。それから来る、嫌な予感。


「あなたはまた、邪魔をするの?」


 自分ながら、弱々しい声が出たと思った。


「あなたが殺されないようにするだけです。なーんて、もう呪いは極僅かな力しか残って無いので、殺意を抱かせる事なんて出来ないと思いますが。」


 女神は愉快そうな高笑いを繰り広げる。

 その高笑いの途中、気になる言葉が聞こえた。


「呪いが、何?」


「ん? ああ、言っていませんでしたか? やっと、呪いを消すことが出来たのですよ。感謝してください。」


 呪いを消した? ああ、なら影が消えたのは女神のせいだったのか。

 私は憎らしいといった風な目をするが、それをぶつける物は無いためそれを瞼の裏へと向ける。


「いや、でも殺される事が無い。から、大丈夫だよね?」


「えぇ、どうぞお楽しみください。」


 それならば良かったと安心する。そういえば、影は自分の事を呪いだと、ずっと言っていた。影が消えたのは悲しい事だが、殺される事が無くなったと思えば良いことだ。

 そうだ、嬉しい。


「変な顔。あなたは今、どんな気持ちなんですか?」


「え?」


 私の顔がどんなに可笑しかったのか知らないが、女神に変な事を聞かれた。

 私の、気持ち? そんなの、嬉しいに決まっている。私をからかっているのだろうか?

 私は女神の言うことを無視して、改めてリズに似たその子の方を見た。


「もう暗くなる。お母さんを待っているのなら、心配だから私も一緒に待つわ。」


「、、、大丈夫ですか? 顔色、よくないですよ。」


 え? まさか、この子にも言われてしまうとは。


「私は大丈夫よ?」


「なら、良いのですが。」


 私を心配してくれているのか。本当に優しい子だ。ああ、あぁ。


「欲しいですね? あなたが私の物になってくれるなら、あげますよ。」


 突如女神から放たれた言葉。それを聞いて私は目を丸くした。素直に驚いたのだが、何にだろうか。

 女神が、私を物扱いした事? それとも、、、

「ねぇ女神。それ、本当?」


 気が付けば、自然と口から声が出ていた。女神は一言、はい。とだけ答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ