まるで別人のように 輪
看守さんは、何が起きているのか上手く自分で整理できなかったようで、私に聞いてきた。
「何があったんですか!?」
そう言われて、私はどう答えれば良いのか分からず黙ることしか出来なかった。
「あなたが、やったのですか?」
私は頷いた。
それは本当だったから。それに、どうしても言い逃れは出来ないだろうと思った。
「何故、動かないのですか?」
看守さんは不思議そうに聞いてきた。恐らく、鉄格子を壊れているのに今まで逃げなかった事を疑問に思ったのだろう。
「いつでも逃げれるから? 遊んでいるのですか?」
そうして、看守さんは銃を構えた。
銃声が聞こえた。まで、しか憶えていない。気がついたら私は別の牢屋に入れられていた。前には、看守さんの姿があった。
まずおかしいと思ったのは、看守さんが口を噤んで震えていること。
「あの? 看守さん?」
私が話しかけても、看守さんはうんともすんとも言わない。
怯えているのだろうか、それは何故か。聞きたかったが、どうにもならない。私は諦めて目を閉じた。
「見逃してあげてもいいよ。」
なんて言葉を吐かれた。
「黙って私の側にいれば殺さないでおいてあげる。」
そういった人は寝ている。今なら、銃弾を当てる事ができるのではないだろうか?
そう思っても、行動には至らない。
正直、何が起こったかわからなかった。私はしっかりと狙って撃った。本来なら当たったはずなのに、銃弾は届かなかった。
止められたのだ。そして、瞬きの間に私は後ろを取られた。
「どうも、元気そうね。」
ムクリと起き上がったその人は、まるで別人のように言った。私が下を向いていると彼女は、手で強引に私の顔を上げた。本当に別人のように思えた。
「、、、」
「ああ、口を開いていいわよ。真面目ね。」
鉄格子を挟んで、彼女のケタケタと笑った顔を見る。
「あまり騒ぎにしたく無かったから、黙っていてほしかったのよ。その様子じゃあ、一言も喋らなかったのね。偉いわぁ。」
頭をポンポンッと軽く叩かれる。頭が、恐怖に支配される。
「震えてるの?」
「いつまで、ですか?」
苦しくて、逃げ出したくてそんな言葉が出た。
「明日の朝でしょう?」
それは、刑が執行される時だった。それを知っていて言ったのだろうか。だとすれば、どこで知ったのだろう。
「明日が愉しみですね、それでは。」
そう言って彼女はまた、眠りに入った。次に起きた時、また何も知らないように私に話しかけてくるのだろう。
視界がグワングワンと揺れて、まるで地面に立っていないようだった。




