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私はやっていない 輪

「はぁ、暇だな〜。」


 誰もいない牢屋の中で、私はそう呟いた。この中に入れられてからしばらくたつが、出してもらえる気配は一向にない。


「何で私が。」


 何度目だろう文句が、冷たい壁で反響する。

 カタンッ、というこれまた冷たい音がしたと思うと私のご飯が置かれる。それを置きに来た人に話しかけても、返事がくることはない。


 前、牢屋に入れられた時と何が違うのかという問を自分に投げたなら、慣れてしまった。という答えを返す。


「ねぇ、何処に行ってしまったの?」



「ねぇ、ねぇってば!」


 あまりにも大きな独り言をしながら、次の街に行くために整地された道を私は歩いている。


「なにか怒らせるような事をしたかな?」


 そんな疑問ばかりが頭をよぎる。それでも尚、影は出てきてくれない。私は深いため息をついた。


「久しぶりに、一人だね。」


 諦めにも近い言葉を吐いて、それからは無言で歩いた。

 今回はいつもより短い距離だったにも関わらず、とても長く感じた。


「止まれ!!」


 え? 門番と思われる人が険しい表情で私を止めた。今にも手に持った槍を振るわんとする覇気に、私は気圧される。


「なんですか?」


 私が困った顔で言っても門番さんは無言で、何やら連絡を取り始めた。

 その最中も私に睨みをきかせているので、下手な真似をすれば槍が飛んでくるだろうと私は思い大人しく待ち続けた。


「どうも、初めまして。」


 すると、偉そうな男の人が来た。紋章? も一際豪華な物に見えたし、周りにお付きの人を何人か連れている。


「うん、うん。チエちゃんよろしく。」


 私の姿をじっと眺めて何度か頷いたと思うと、その人は近くに居た女の人に何かを頼んだ。

 頼まれた女性は返事をする事も無いまま、私に近付いて来る。


「抵抗、しないのですね。」


 ガチャンッ、

「へ?」


 手錠? 突然の事に思考が停止する。


「何ですか? これ。」


「その子、任せるね。」

「分かりました。」


 私の声が聞こえていないように二人は話す。その事に苛ついて、私は声を荒げた。


「何なのですか! しっかり説明をしてください!!」


「黙って、付いてきなさい。」


 何か、汚い物でも見ているかのような眼が私の身体を固まらせた。それと同時に強い力で引っ張られて私は倒れそうになったが、もし倒れても構わず引きずられると思った。


「何処から来た?」


「隣の街から。」


 机と椅子だけがある一室に連れられたと思うと、先ずそんな質問をされた。先程の眼が忘れられず、私は目を合わせられなかった。


「隣の街で昨日起きた事件。行ったのはあなたですね。」


「は!? 何ですかそれ! 知りません。」


 断言ともとれる風に彼女は言った。心当たりどころか、全く知らない事に私は驚きのあまり立ち上がる。


「否定するとは思いませんでした。」


「当たり前じゃないですか!」


 彼女は私が否定したことに驚いたようだ。目を見開いた。しかし、直ぐに元の顔に戻る。


「ではあなたは偶然事件が起こった場所から来て、偶然血塗れの服を着ていて、偶然目撃された犯人と瓜二つだと。」


「本当に知らないですって!」


 そんな事件があった事すら知らないと言うのに、なぜ犯人だと言われなければいけないのか私には分からない。


「はぁ、話になりませんね。時間の無駄でした。おい! 連れて行け。」


 私は無理矢理連れて行かれた。そして牢屋の中に雑に入れられた。

 納得なんて、出来る筈が無かった。


「何で、私が!」


 鉄格子を掴む私の目には、憎しみが宿っていた。

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