夢見心地 輪
「これからどうしようかな。」
ふらり、街から外に出る。
何だかドッと疲れが来たみたい。少し眠くなってしまった。
「ちょっと、寝るよ。」
『おやすみなさい。』
「よい、夢を。リズさん。」
影とは別に、誰か聞き慣れた声が聞こえた。目を開いてそれを確認しようと思ったが、私は眠気には勝てなかった。
、 、 、
「フフフ、アハハ。」
何だろう。笑い声? 楽しそう。そう思っても、まだ目は開かない。
「あなたは深い、眠りの最中。ちょっとやそっとじゃ起きれない。」
何だか、騒がしいな。お祭りでもしているのだろうか。
「そんなこんなで時間が経てば、あなたは底無し夢の中。起きたい? 起こして? もう遅い。あなたは二度と、目覚めない。」
寝ているのに、眠いな。外から叫び声のような物も聞こえてきた。気になる、けれどやっぱり目は開かない。
「カイさん! 起きて!!」
声だけが聞こえた。これまた、聞き慣れた声が。
「リズ!」
勢いよく目を開けた。夢か、リズの姿は無い。
「え?」
ああ、いつか見た光景。人体の切れ端が無造作に転がっている場所。予知、だったのか? あれは。
「あぁあ、ああ゛!」
真ん中に立っていた人影は、私?
「大丈夫さ、落ち着いて。これは殆ど私の身体が切り離された物だ。すごい力だね、私の早すぎる再生よりもずっと早く切るなんて。」
ドクが私の両肩に両手を置いて、必死に言った。
「あれ? ドクなんで。私、なんで?」
「あぁ、これは夢だ。夢だから、目を瞑って?」
そう言ってドクは私のまぶたをおろした。それはとても温かく、冷え切っていた私は安心したように、直ぐに眠りについた。
夢。これは夢だ。
「夢だ。」
私は、元居た場所に立っていた。何も、おかしな事は無い。あれだけの惨劇に、服が汚れていない筈が無い。あれ? 私、何色の服着ていたっけ。
『、、、おは、よう。リズ?』
「おはよう。どうしたの?」
私がそう聞くと、影は何もないよ。と首を小さく横に振った。何も無いようにはとてもじゃないけど思えなかったが、今の私にそれを気にする余裕は無かった。
『早く、先に進もう?』
「ちょっと、街に戻って」
『駄目!』
決死な感じだった。頑なだった。
「そっか、分かったよ。」
私は受け入れる他無かった。
「本当に、良いんですか? 戻って、自分がした事を確認しなくても。」
ッ!? 何、今の声?
『どうしたの?』
「いや、何でもないよ。」
疲れていないのに、息切れしているようだ。気持ちが、悪い。
「真っ赤なお召し物が、お綺麗ですね。」
高い笑い声と共に、その言葉が聞こえた。
私は、街とは反対の方向に走り出した。




