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お姉さん 輪

「あの時、女の子は自分に言い聞かせた。その時は半信半疑だったかもしれないけど、馴染んでしまったのだね。」


「愛されたかったんでしょ?」


 私のその言葉でドクが少し揺らぐ。

 先程、女の子はドクの事か聞いた時は誤魔化したのに隠す気は全く無いようだ。


 嘘は苦手というか、支離滅裂な発言が目立つ。


「そうだね。焦っていたんだと思う。」


「人を傷つけたのは悪いけど、どちらかと言えば被害者でしょう?」


 私がそう言うとドクの動きが一瞬止まったように見えたが、そのまま私は続ける。


「あなたに冷たくしたママがっ、!」


 、、、ぅえ?


「それ以上は思っても口に出さないで。私はあなたと違って自分で整理をつけたから。何も、言わないで。」


 喉を切られたので喋りたくても声は出ない。

 突然、人が変わったように感じた。


「ゴホッ、何するの!」


「ごめんなさい。自分勝手で、私はこう見えても極悪なの。」


 不敵に笑いながら、ドクはタオルで私の血を拭う。


「私は愛されたくて、自分を騙した。じゃあリズは? あなたも受け入れられたかったんでしょう?」


 そう、だったかもしれない。私はずっと誰かに受け入れて貰いたかった。


「人の感情はわりと直ぐに変わる物だよ。でも、考えは中々変わらない。感情と考えの差が、自分自身を嫌いにさせる。」


「どうやって変えるの?」


 今までの自分を思い浮かべた。ころころと態度を変えている姿がパッと出てくる。


「変えるのは難しいから、気持ちの整理だね。リズは特に気持ちが目茶苦茶なようだから。」


 ドクには、私の事が知られているようだった。少なくとも私よりも私の事がわかっていると思った。


「どうして、わかるの?」


「私はお姉さんだからね。と、言いたいところだけどそこに居る子に聞いただけだよ。」


 ドクが私の方を指差した。いや、少しずれている。

 丁寧にその指先を追う。


『ごめんね。黙ってて、』


「え、見える?」


「ずっと見えてるよ。秘密に二人で話してたし。」


 ドクは頷いた。

 なるほど、妙に私の事に詳しかったのはそのせいだったのか。納得。


『でも、あなたの事を話しただけだから。気持ちの面までは。』


「そこはやっぱりお姉さんだからだね。」


 ドクは胸に手をポンと置いて、誇らしげにそういった。

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