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昔々のあるところ 輪

 あるところに年の離れた二人の女性が居ました。


 そこは二人だけの空間。小さな小さな箱庭で二人は幸せに暮らしていました。

 二人の間に血の繋がりはありませんでしたが、何か特別な物があったと今でも思っています。



 笑顔の絶えない、変わらない日々は永遠には続きませんでした。

 女の子の身体に異変が生じたのです。


 その異変が何か? 薄々わかっているでしょう。

 女の子はある日突然、傷を負わなくなりました。安全な場所で時を過ごし、他の人と関わることが無い生活を続けていた女の子も最初は疑いました。

 しかし、その気持ちも直ぐになくなりました。


 そんな事を考えている暇が無かったのかもしれません。

 なぜなら、その日からママが彼女に対して冷たくなったからです。

 どうしてかは彼女にわかりません。

 必死に考えて、考えて考えて。辿り着いた結論は酷いものでした。


 そうだ、私が怪我をすれば又私の事を見てくれるのではないか。


 それがおかしい事は、女の子にも分かっています。が、それが正しいと自分に言い聞かせました。


「ママ、見て見て。」


 至って純粋に、彼女はママの前に立って自分に刃を向けます。


「何してるの!?」


 ママは止めてくれました。これが、良くなかったのかもしれません。

 それは、彼女が自身に言い聞かせた事を真実だと思ってしまうには十分すぎる物でした。



「ママ、見て!」

「やめなさい。」


 このやり取りを何度も何度も繰り返す内に、またママは女の子を見ないようになりました。


 どうしてだろう? 何が変わったのだろう?


 考えても答えは出てきません。女の子はナイフの刃渡りを伸ばしました。


 場所も手のひらから腕へ肩へとどんどん上げていきました。


 、、、

 最終的にどうなったと思いますか?

 常人が死ぬような怪我をしても、ママは顔をしかめるだけで見てはくれなくなりました。


 その後、彼女はママに捨てられます。自立させられただけかもしれません。

 しかし少なくとも彼女は捨てられたと思いました。


 ポツンと一人立っていると、怪我をして泣いている子供が居ました。その側には母親らしき人が居て、子供の頭を撫でています。


 そこで彼女は思いつきました。

 私に傷がつかないなら、周りに傷をつければいい。そうすればまた、、、


 ◇  ◇  ◇


「彼女の凝り固まった考えは、それが黒く歪んでいる物だと気付かせてくれませんでした。おしまい。」


「それで、私に何が言いたいの?」


 私の問にドクは、別に。と返した。その後に、話を聞いてほしかっただけだとも付け加えた。


「女の子はドクの事でしょう?」


「さぁて、どうかな?」


 彼女は哀しげに笑って、遠くを見つめた。


「私はどうすれば良かったでしょうか?」


 まるで、他人事のようにドクはそう言った。

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