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本当は嘘 輪

「改めて、はじめまして。女神の子供が一人、ドクです。」


 私は呆気にとられて、動けない。フェイル以外に女神と関わりがある人が居た事も知らなかったし、まさかドクがそうだとは思っていなかったため衝撃が大きい。


 いや、仲間がいると言っていたような気がする。あの時は恐怖が大きくてあまり記憶がないが。


「どうして隠していたの?」


「それはごめんなさい。悪気は無いのよ、あなたの本音を聞きたかったから一般人として近づいたの。」


 ドクが深々と頭を下げるので、少し調子を狂わされる。そこまでしっかり謝られたらもう、怒るに怒れないではないか。


「一般人って感じでもなかったけどね。」


「そうかな?」


 お恍けた顔をするドクは、先程とは全く違う人のようで、やはり調子が狂う。


「でも、それは理由になっていない。どうして私の事を、」

「まあ、いいのよそのことは後で。それよりリズ、あなたは何でも自分のせいにしようとしてる。」


 私の質問はドクの言葉に遮られる。少しムッとするが、それよりもドクの言ったことにはんのうする。


「自分のせいなんだから、仕方ないでしょう。」


 全部が全部私が原因で起こったこと。

 何人、私がいたから死んだと思っている。 ああ、忘れていた。私がのうのうと生きている時、裏で常に被害が出ていることを。

 忘れていた感情が、沸々と湧いてくる。

 忘れていた? 目を背けていただけだ、

 パチンッ!


「痛。」

 突然、頬が熱くなった。中々な威力で脳が揺れる。


「目、覚めた?」


 私に強烈なビンタを食らわせたにも関わらずドクはしれっとしている。


 私は目と目をしっかりと合わせ、口を開いた。


「私が死ぬ方法を知らないか。」



 、、、

「アハハハハ、さっきより幾分か良い顔してるよ。」 


 少し間を開けて、ドクが笑った。


「何で笑うの。」


「ハハハ、ごめんなさい。急に変なことを言うものだから、でもそっちの方がいいよ。狂うならとことん狂っちゃえ。」


 ドクは笑っている。しばらくそれは収まらないようで、私はしばしその笑い声を聞いている。

 すると、ドクは何事も無かったかのようにあのさぁ、と話を続けた。


「君は自分に嘘をついてるんだよ。ずっとね。」


「嘘? どんな。」


 嘘はつきなれているが、自分にという点で言えば覚えがない。私はどんな嘘かが気になり素直に聞いた。


「君は、死にたいの?」

「私なんかは死んだほうがいいんだ。」


「君は、大切な人を殺したの?」

「ああ、私が殺したような物だ。」


 ドクが私に次々と質問をしてくる。それに私は答える。嘘なんて、ついてない。


「嘘なんて一度も」

「あたかも全て自分が悪いと、自分を騙す。これが嘘じゃなくてなに?」


 ドクはニコッと笑ってから、また続ける。


「自分への嘘は辛いよ。一度ついたらもう、それが本当になってしまうからね。」


「ちょっと、昔話をしようか。」

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