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怪我、してるね? 輪

「分かった。」

 私は一人で、そう呟いた。


『何が、わかったの?』

「目的がだよ。お前にとってはどうか知らないけど、女神は私にとっての敵だ。」

 尋ねてきた影にそう答える。


「あいつを殺す。」

 私にメラメラと静かに燃える物が宿った。


『、、、リズ。弔ってあげよう?』

「ああ、そうだな。」

 私はリズをそっと持ち上げ、人が寄り付かないような森の奥へと一緒に向かう。


「ここにしよう。」

 ほんの少し、開けた場所に出た。

 その広間の中央に位置する岩は、木々の隙間から差し込んだ月明かりに照らされている。


 そこに私はリズを降ろした。


 ザクッ、ザクッ、

 土を掘る音だけが辺りに響く。

 乾いていた地面は、私の下だけ湿ってしまった。


「これも置いていくね。」

 リズと共に旅をした玩具達も、リズと一緒に埋めた。


「行こう。」

『うん、、、』

 私は影と二人で歩き始める。

 リズとの旅で、残った物は私には無かった。

 元に戻っただけ。確かにリズとの旅は長かったが、私が生きてきた日数に比べれば些細なものだ。


 そうだ、そうだろう?


『自分に嘘をついても、それこそ何も残らないよ。』

 私は嘘なんて、、、


『折角、変われたのに。戻っちゃうの?』

 まるで、戻って欲しくないような言い方だな。


『嫌な事をされたら腹が立つ。悲しかったら涙が出る。それはおかしな事じゃない。それを抑え込む方がおかしいよ。』

「、、、ねぇ、ちょっと、休んでも良い?」

 私はその場で膝を崩す。


『いっぱい悲しもう。泣くのに飽きたら歩こう。』



 、 、 、

 私は、泣いた。泣き続けた。

 泣いては歩いて。歩いては、泣いた。


「はあ、街についたね。」

『なんだか、久しぶりな気がするよ。』

 気がする、ではない。実際そうなのだ。

 泣いていると時間は直ぐに過ぎてしまった。前街に寄ったのはいつだったかさえも忘れる程だ。


 私は街に入る。

 活気溢れた、普通の街だ。


「まあ、何をする訳でもないけど。」

 私は道を歩く。

 ふと、リズと始めて会った時を思い出して涙がにじむ。


「いつまで経っても駄目だな。私は。」

 涙を拭いながら、そう口にする。


「ねぇ。」

 突然話しかけられた。

 見ても知らない人であり、私に向けたものではないと思った。目だけで後ろを確認する。


「あんただよ。あ、ん、た。」

 しっかりと私を指差してそう言う女は何処か人と違う不思議な雰囲気を持っていた。


「私は医者だ。治療してやる。」

「はぁ? 私は何とも、ん!」

 人差し指と親指で、開いていた私の口を無理矢理閉じられる。


「あんた怪我、してるね?」

 笑顔で彼女はそういった。

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