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懐かしき? 出会い。別れ  輪

 (私はこれからどうすれば、)

 私は死体を埋めながらそんな事を思う。


 (ここには居たくないし。)

 人が二人も死んだ家になど住みたくはない。


 起きたらお腹の傷はまたも塞がっていた。私は私のままだったが。

 殺されなければ替わる事もないのだろう。


 (家に帰るべきか、帰らぬべきか。)

 と言うのも、私は迷っていた。


 私にとって自分の家はここの筈、だったのだが何処かで私の家はここではない別の場所だとも感じている。そしてその場所は私の知らない土地だ。


 だが、ここに居ても仕方がないし、気分もよろしくない。気分転換に移動してみてもいいかもしれない。


 (家までいけるかな?)

 何処へ行くにも森を抜ける必要がある。そんな少しの不安が頭をよぎるも、私は歩を進める。


 道の通りに歩いていると、途中で分岐する場所に差し掛かる。右に曲がれば、私の知っている所に出るが、私の足は左へと運ばれる。


 (来たことのない道で不安だな。)

 それからも何度か分岐路を通過したが、思っていたよりも簡単に森を抜けた。


 (なんだか、とても安心する。)

 見た事の無い町の前まで来てそんな事を思う。


 道中、微塵も迷う事が無かったことに自分で驚いた。


「おい、何処行ってたんだよ。遅かったな。」

「カイ、」


 口を開かずとも、その言葉は知らずに出てきた。


「ちょっと森に行ってたんだよ。」

「そうか、仕事か? 大変だな。」


「そんなところだ。」

 

 人見知りな私だが、すらすらと言葉が出てくる。


『カイとは昔からの友人だ。』


 こんな人知らないのに。


『こいつにだけは腹を割って話せる。』


 喜んでいる自分がいる。


「久しぶりに飲まないか?」

「おぉ、いいね。」

 私は間を開ける事なく言った。


「じゃあ、夜な。」

「ああ。」


 集合時間と場所だけを確認して取り敢えず私は家に帰った。


 とても不思議な気分だ。

 最初こそ後から湧いてくる自分の記憶に不信感を抱いていたのだが今はそんな物は感じない。寧ろ、前の自分の記憶。殺されるより前の記憶が本当に自分の記憶だったか怪しんでいる程だ。


(記憶が上塗りされていくようで気持ち悪いな。)



『そろそろ時間だ。あいつはいつも早いからな。』

 まだ約束した時間まではしばらくあるのに、私は急かされるようにして家から出た。


『遅いな、あいつが時間前に来ないなんて珍しい。』


 (やはり早く来すぎただろうか?)


「待ったか?」

 その時、後方からカイの声がする。

「いや、時間ぴったりだ。」


 カイが申し訳なさそうに言ったので、私は気を使わせないように質問の答えと取れ無くもない返事でお茶を濁す。


『カイの様子がおかしいな』


「カイ、どうかしたのか?」

「いや別に。なんでもない、筈なんだ。」


 (筈? 何を言っているのだろうか。)


 違和感を抱きながら、私はカイの後をついていく。



「なぁ、どこへ行くんだ?」

 カイは人のいない方、いない方へと向かっている気がした。


「昔、お前は俺を庇って代わりに叱られたことがあったな。」


 ? それは幼少期のころの話だ。


「急にどうした。そんな昔の事、憶えてないよ。」

「他にも、隣の家で飼っていた犬が俺に噛み付こうとした時、追い払ってくれた事もあったな。」


「どうしたんだ? さっきから。」


 カイは遠い目をして、ボソボソと呟き続けている。


「ツッ!?」

 その時急に、電流がながれたのでは無いかと錯覚するような痛みが走る。


「ごめん。」


 え?

「ウッ!!」


 苦しい。カイに首を両手でガッシリと掴まれて息ができない。そのまま私は壁に押し付けられる。

 相当な力が入っているのだろう。カイの爪が私の首に深く喰い込んで痛みも伴う。


「俺、やっぱりおかしいんだ。急にお前の事が疎ましくて憎くて殺したくて。」


 カイの頬に光が一筋。


「あんなに長い時間を共にして、たまに愚痴を言い合ったりもして。喧嘩もしたけど。」


 その光の筋は下に落ちて小さな水溜りをつくる。


「今まで仲良くやってきた。なのに、お前の嫌なところだけが見えるようで。」


 やめてくれ、冷静になれ。

 そんな言葉を頭で思っても私の口から出ることはない。


 次第に苦しさで一杯になる。


 ガリガリガリガリガリッ。

 どうにか生にしがみつこうとする私の、私としての最後の足掻き。首に絡みつく腕をどうにか退けようと力の限り掻き毟る。


 でも、やっぱり駄目だった。

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