怒りの先 輪
「さあ、そろそろ行こうか。」
「はい!」
あの後は、リズの様子がおかしいと思う事はなかった。
だが、「何かありましたか?」とリズから逆に質問された。
「何も無いよ。」
そう答えるとそれからは何も言及が無かったことには助かった。
あと、影の様子もおかしい。リズと一緒に帰ってきてから私と顔を合わせようとしない。
(何かあったのか?)
『何も無いよ。』
リズと私とのやり取りと全く同じ。何だか間が悪くなって私は影と目を合わせないようにする。
『ねえ、話しておかないといけない事があるんだけど。』
視界の外から私を引っぱるように声がかけられた。
(何? リズもいるから話しながらで。)
『呪いの一部が奪われた。』
「は?」
「ど、どうしました?」
声が出てしまった。リズが困惑した顔でこちらを向いている。
「あ、なんでもないよ。気にしないで。」
私はリズにそう言って影の方に意識を向ける。
(呪いは貴方なんでしょう?)
『そうだよ。呪いの核は私。』
(じゃあ奪われたって何だよ。)
『奪われたのは呪いの主導権、その一部。』
主導権? いまいちピンと来ないが影の調子をみる限り、事態は深刻なのだろう。
(それがあると無いとではどう違う?)
『あっても私はそれを行使していなかった。責任から逃げていると言えばそうかもしれない。でも、』
(でも?)
『私には、選ぶことは出来なかった。』
(何を!)
要領を得ない質問の答えに腹がたった。
影はしばらく黙り込む。時間が経つごとに呼吸が荒くなっていっているような気がした。
『あなたを、殺す人。』
消え入りそうな声が聞こえた。
(、、、そうか。私からしたら何の関係もないな。)
実際そうだ。私は今までと何も変わらない。
『なら、良かったよ。でも、それは銃の照準のような物。邪な使い方をされたらあなたが』
「だから関係無いって言ってるだろ!!」
何で私は怒っているのだろう。
「え、あの。すみません。」
リズが怯えた表情で立っているのが視界に入って私は我に返る。
「ごめん。違うんだ、ごめん。」
本当に申し訳なく思って、私が誤りながら一歩足を踏み出すと、向き合っているリズは一歩後ろに下がる。
二人の距離は縮まらない。
「ちょっと、休憩にしよう。」
「、、、」
私がその場で座ると、リズは少し離れた位置に座った。
『不安。戸惑い。それに心配。』
いつもと違う男の声。聞き憶えのある懐かしい声。
(カイ、なの?)
『そうだよ。あの時は本当に申し訳ないことをした。』
(そんなのもう忘れたよ。今のは何?)
『あの子の気持ち。』
リズを指差してカイは笑った。
(そんな事がわかるの?)
『確実ではないけどね。大体の気持ちはわかるよ。』
心配、か。
(自身の安全のか?)
『違う、君に対する心配さ。』
そんな事、あるはずがない。
(カイは優しいね。)
『、、、』
「あの! もっと話しませんか?」
カイがニッコリと笑うとその奥からリズが話しかけてきた。
私は大きく一回、頷いた。




