入れ替わり、不死? 輪
私は私を殺した男と入れ替わったのだ。
(入れ替わる能力が死ぬ直前に発動したのか?)
しかし、女神は「生まれ変わります。」と言っていた。入れ替わる能力が発動したのであればその言い回しはおかしい。
(それにしても、何か、見づらいな?)
いつもよりも視界が少しぼやけている事に違和感を感じる。
(えと、眼鏡。)
私は腰掛けていた鞄の奥に入っていた眼鏡をかける。
すると、遠くて見えなかった鏡に写っている自分の顔がはっきりと見えた。
(あれ私、老けた?)
鏡に写っている私は40程にも見えた。
(能力の反動?)
最初はそう思ったが、やはり生まれ変わるの言葉が何処かで引っかかる。
考えてもわからない。
(死体の処理をして取り敢えず帰ろう。)
帰る? 何処に? 私は自分自身に問うた。
家はここじゃないか。
そういえば、この眼鏡は私のじゃないよな。
(どうして直ぐに場所がわかったの?)
私の頭の中にある知らない記憶。それが自然に、そう自然に出てくる。
私は"死んで"生まれ変わった。
死んだのは私なのに、死んでいるのは私じゃない。
殺されたのは私なのに、殺したのも私?
(殺したのが私なら生まれ変わりって、)
「私を殺した人に生まれ変わるの?」
私は私に呟いた。
正確に言えば、私だった物に。
本当のところを聞きたかった。
知らないままでいるよりもこの選択は怖く無かった。知らない方が怖かった。一刻も早く答えを知りたかったんだ。
「これで終わりならそれでいい。」
私は前と同じようにお腹にナイフを突き刺した。
、、、
「そんな事で運命からは逃れられませんよ。」
女神の声で目がさめる。
「おい! どう言うことだ。」
私は起きて早々、とても大きな声で質問をした。
「もう、分かっているでしょう?」
飄々と答える女神に苛立ちを覚える。
「詳しく説明しろって言ってんだよ!」
思わず口が荒くなる。
「そうですね。思ったよりも時間がありません。貴方の能力と、"呪い"について話しましょう」
(呪い? そんな物前は言っていなかった。)
「貴方に授けた能力はまだ未熟ですが、予知。それに不老不死」
「不死じゃ、ないだろ。」
私は女神の言葉を遮って敵意剥き出しにそう言った。
「私は不老不死を与えました。ですが呪いによって邪魔をされてしまったのです。」
呪い。一般的に悪いものを想像させる。私にかけられた呪いとは何なのだろうか。
「貴方は死の呪いと交代の呪いをかけられました。これにより貴方は日々殺され続け、生まれ変わる。」
「殺してきた奴に、か?」
「そう。これから始まる所だったのに、ようやく成熟した所なのに、邪魔が入った。邪魔邪魔邪魔、」
女神の様子が急に変わった。
何か、邪悪な物を感じたような気がした。
「すみません。取り乱しましたね。」
かなりざっくりとした説明であったがなんとなくは理解した。呪いのせいで本来の能力が働いていないのか。
「呪いはどうやったら解ける?」
殺され続けるのはごめんだと思ってそう聞いた。
「今はまだ、わかりません。」
「私は何をすればいい?」
「、、、時間です。」
そう言われて私をあの不快感が襲う。
呪いを解く方法も、何をすればいいかもわからないままで私の生活は再びスタートした。