彼女との間 輪
『おはよう。』
「あぁ、おはよう。」
心地の良い日差しを浴びながら私は目を覚ます。
『よく眠れた?』
「牢屋よりはね。」
私は大きく伸びをしながら応える。
「さあ、行こうか。」
『起きてるかな?』
確かに少し早すぎるかもな。
私はリズのもとに向かう。
『あの子についてどう思ってるの?』
「リズか?」
あんなことをされたんだ。本当は関わりたくないが、
「気になるんだ。リズがなぜ私に会いたがってるのか。」
『長い間一緒に居ることになるよ?』
影は真剣そうに言った。それに私は首を傾げる。
「それがどうかした?」
『、、、』
俯いたまま黙ってしまった。
(なんなのだ。)
『必ず別れは来るよ。』
「あぁ、そう言う事か。大丈夫だよ。リズに殺されようが、今更だろ。」
『そっか。』
心配そうな表情で影がこちらを見る。
「それに、逃げるが勝ちだ。最近は殺しに来る人の顔がわかるようになってきたんだ。」
『そうなんだ。馴染んできちゃったか。』
(いつも言い方にどこか違和感があるな。)
「ほら、付いたよ。」
私は扉の前に立つ。
そして、ノックしようとした瞬間。フライング気味に扉が開かれる。
「おはようございます!!」
「起きてたの、早いね。」
準備万端なようで、すでに荷物も全て玄関に置いてある。
「すごい荷物だね。」
「何を持っていけばいいのかわからなくて。」
恥ずかしそうに下を向くリズ。私はそれに尋ねる。
「中、見てもいいかな?」
「はい! 良いですよ。」
荷物の中身を見る。
「あらら、これは大幅に修正がいるね。」
「そうですか? すみません。」
中には旅には到底使うことの無いであろう物ばかり。それを私は片っ端から出していく。
「あ、それは入れさせてください。」
「え?」
縫いぐるみやおもちゃ達を私が出そうとするとリズに止められる。
「お気に入り?」
「いえそういうわけでは。いや、そうです。」
(どっち?)
まあ、望むなら入れておこう。私は言われたとおりにそれらを荷物の中に戻す。
「あれは良いの?」
私はもとから無造作に置いてあったおもちゃを指差す。
「あ、はい。それは大丈夫です。」
先程のおもちゃ群との違いが全くわからない。むしろこちらの方が綺麗だし、色違いの物もあるのに。
「おもちゃが好きなの?」
「いえ、好きではないです。」
(ますます分からない。)
「やっぱりこのおもちゃ達には何かあるんでしょう?」
「何か、ですか。ありますよ。」
リズが暗い顔になった。
「でも、すみません。いえません。」
リズがそう言うと、それからは黙々と荷物の整理に取り掛かった。




