心の内は 輪
「その人の元まで私を連れて行ってください。」
不意に放たれたリズの言葉に驚きが隠せなかった。
「なんで?」
思わず声になってしまう。
「もう一度会って話がしたい。それだけです。」
本気の目。私が断っても一人で行こうとするだろう。
(本心を聞いてみたい。)
そう思った。
「でも残念。私にも何処に行ったかはわからないんだ。」
「そうですか。」
リズの顔は暗くなるどころか、むしろ輝きを増していた。
「やはり、アンナを知っているのですね。」
ん〜。否定をしておいた方が良かったのかもしれない。
「お金は出します! お願いします。」
リズが深く頭を下げた。
『姿戻す?』
(いや、待って欲しい。)
「この街にはいないし、かなり遠くに行ったと思うよ?」
「はい! それでも。」
「本当に会えるかわからない。」
「大丈夫です。」
意志はかたいようだ。
(変わるのはもっと後でいい。)
『了解したよ。』
「お金はいらないよ。私も元から探しに行くつもりだったから。」
私はリズに笑いかける。
(リズの再開は今じゃない。)
リズが本当に変わったと感じたその時に。
「じゃあ、明日の朝に迎えに来るから準備しててね。」
「はい!」
私はリズと別れてそのまま街の外に出た。
ズキンッ!
身体中に痛みが走った。
「そろそろだとは思ってたよ。」
(街を出て良かった。)
また騒ぎになると面倒くさいから。
「あなた、まさか、、、」
「どちら様?」
銀髪の女性が私に話しかけてきた。
(見たことあるような、気がする。)
「人違いだったらごめんなさいね。」
!!
少しの前ふりもなく、私は頭を撃ち抜かれた。
、 、 、
「急だったな、、、」
なんだかとても久しぶりに思う。
「なぁ、会いたかったよ。」
「嬉しい事を言ってくれますね。」
私は女神に近づいていく。
「話して欲しい事が山程あるんだ。」
寸前に顔を置いて言う。
「奇遇ですね、私もですよ。」
「勇気とはなんだったんだ?」
「あなたの隠していた気持ちです。」
間を開けずに女神は答えた。
「せっかく私が開いてあげた心なのに、あなたは閉じてしまった。」
心底残念そうに。
「ふざけるな! 私はあんなの望んでいない!!」
私は声を荒げる。
「いいえ、言いましたよ。確かにね。」
女神は笑う。
「こんな話は時間の無駄。私からの質問です。何か、私以外に干渉されていませんか?」
「は?」
意味の分からない質問に私は戸惑う。
「邪魔者がいるんですよねぇ。」
「呪いとやらか?」
私は茶化すように聞く。
(影の事は知られないようにしよう。)
「あくまで白を切るのですね。」
女神は俯きながら言った。
「貴方が私を裏切るというのであれば、私は手段を選びませんよ。」
もっと聞きたい事があったのに、女神のその言葉を聞きながら、私の意識は途絶えてしまった。




