姿も形も 輪
私は尻もちをついた状態で、ただ呆然としていた。
『目、覚めた?』
「、、、」
軽く頷く。
『良かったよ、手遅れになる前で。』
「何が良かったのよ。」
私は影の方を睨みながら言った。
「私、何を考えて、この手で殺した。この手で。」
私は弾のなくなった拳銃を持ち上げる。
その拳銃はひどく重く感じられた。
弾が無い事は分かっていても、引き金をひくことには勇気が必要だった。
(勇気?)
「そうだ、私が女神にお願いしたんだ。」
勇気を。
『フェイルとかいう人のおかげで気付けたね。』
「おかげ、か。あいつの事は何も知らないのか?」
『あんまり知らないけど、敵じゃない筈だよ。』
何を理由に、
『少なくとも、今はね。』
「は?」
含みのある言い方が気になった。
「それって、どういう事?」
『それより、あの子は放って置いていいの?』
影はさっき来た道の方を指差す。
「あの子って、あ! リズ。」
(そうだ、まずい。)
私は街の方へと走り出した。
街が見えてくる。
あと一歩、街の手前で足が止まる。
「そういえば、私入れないんじゃ。」
『だいぶ騒ぎになってるだろうね。』
先程街中で人を撃ってしまったばかりだ。
『大丈夫だよ。』
そう言って影が私の顔を触る。
『ほらね。』
「え、」
少し身体に異変を感じたが、何をしたのか検討もつかない。
『入ろうよ。』
影が先に門をくぐった。
恐る恐る、私もあとに続く。
驚く事に誰にも、何も言われないまま。あそこについた。
「ちょっと嫌だな。」
そんな事を言いつつも、私は地下室へと向かう。
弱ったリズの姿が見えた。
「大丈夫!?」
「、、、誰?」
リズがしっかりと私の顔を見て言った。
一日も経っていない。忘れるわけはない。
「助けに来たんだ。」
不思議に思いながらも取り敢えず鍵を開けて、リズを外に出す。
リズは俯いたまま顔を上げる事は無い。
そのまま私はリズを連れて地上に上がる。
「どなたか存じ上げませんが、ありがとうございました。」
「どなたかって、冗談きつい、」
あれ?
私の視線の先にアンナが映った。
「アンナ?」
「え!」
リズがひどく怯えた態度をとった。
「あぁ、ごめん。違うんだ。」
(これはどういう事なんだ。)
『私の姿を貸してあげたんだよ。』
アンナの声。
(私を許してくれたのか?)
『いや? むしろ怒ってる理由が増えたぐらい。』
(そうか、)
そうなっていても仕方のない事だと思えた。
「あの! アンナって言いましたよね!?」
「あ、何?」
リズが大きな声で私に話しかけてきた。
少し息切れている。何度も私を呼んでいたのだろうか。
「アンナ、とお知り合いなんですか?」
「、、、だとしたら?」
斬りかかられでもするのだろうか。
「その人の元まで私を連れてってくれませんか?」
、、、はい?




