失敗作。 輪
「うっ、うぅ。」
地面に転がったままの状態で私は目を覚ました。
「あれ? 入れ替わってない?」
「あぁ、良かった。間違ってなかったよね。」
男は胸を撫で下ろす。
(確かにこいつに殺された。)
何故入れ替わらなかったのだろうか。
「入れ替わってくれても良かったんだけどね。そうすれば僕が主人公だ。」
「何なの? あなた。」
この男、私の入れ替わりについても知っているのか。
「僕? ん〜、名前は特にないんだけどね。フェイルでいいよ。」
「名前なんて聞いていない。何者なんだ!!」
へらへらと笑う男に腹が立って声を荒げる。
「僕は君と同じ被害者さ。」
「私と同じ、被害者?」
ますます何を言っているのかわからない。
「まあ、正確に言えば僕の方が酷いけど。」
と男が付け加える。
「あなたも私と同じで殺され続けているの?」
「ああ、違う違う。それは僕に関係ない。」
男は手をひらひらとして否定する。
(なんなのだ。)
「君は成功。僕は失敗。」
「私が、成功? ふざけないで。」
「どうして?」
「何度も死んで、入れ替わってまた死んで。女神には変なことばかり言われる」
その瞬間、フェイルと名乗った男が何か、悲しげな表情を浮かべた。
「そうだね、とってもとっても可愛そう。」
心にも無いであろう言葉。
「何? 私に文句でもあるの?」
その態度が頭にきて、私は攻撃的な態度で反撃する。
「分かんないよね、ずっと信じてきた人に捨てられる悲しみ。」
「は? 聞こえないわ!」
男が聞こえるか聞こえないかぐらいの声で言うので、私はますます腹が立つ。
「ちょっと! 何とか言ったらどうなの!!」
しばらくの間、沈黙が続いた。
「ねぇ、僕今何してたか知ってる?」
「、、、は?」
男は先程とは打って変わって惚けたような様子。
「えっと、君誰?」
「何言ってるの? 阿呆なこと言っていないで私が成功であなたが失敗の理由を教えなさいよ!」
「ああ、君は! オッケーそう言う話の流れね、ちょっと待って。」
男は懐から紙を取り出して、メモを取り出す。
「まあ、薄々分かってくれたんじゃないかな。僕が失敗作な理由。」
(全然分からないが。)
「僕に能力を授ける時、あるいらない機能が付いちゃったんだ。」
「もしかして、」
「分かったかな? 記憶のリセットさ。」
男は頭をトントンと指差しながら言った。
「だから、さっき突然様子が。」
「そう、母さんはそれを直そうとしてくれたけど結局無理だったみたいで」
「ちょっと待って、母さんって。」
話を遮ってまで、私はそれを聞きたかった。
「君の言う、女神様だね。」
(やっぱりか。じゃあ、)
「信じてた人に捨てられたって、、?」
「僕、そんなことも言ったんだ? そうだよ。僕は最終的に母さんに捨てられた。」
「失敗作だったから?」
男は頷く。
「でも、だったら私はなんで殺され続けているの?」
「それは、、、知らない事はないけど、言わない。」
「どうして!?」
私が何なのか、それを知りたい。教えて欲しい。
「お願い! 教えてよ!!」
「ん〜、教えてもいいんだけどね。僕、何だかんだ言っても母さんが好きだから。」
男は俯きがちにそう言ってから、しっかりとこちらを向いた。
「それで母さんが悲しむ事になるかもしれない。だから、言わない♪」
「なんで、どうして。教えてよ!」
気が付くと私は手のひら大の石を持っていた。
「そんなの何の脅しにもならないよ。」
薄ら笑いを浮かべる男。それに私は飛びかかった。
「僕や、僕の仲間は君の敵ではないよ。」
私の渾身の一振りを男は軽く受け止める。すごい力で抑えられて、飛びかかった私が下になる。
「やめ、殺さないで。」
「君から襲ってきたのに?」
抑えられた私は武器を奪われ、とうとう地べたに仰向けに寝転がってしまった。
「大丈夫だって言ってるのに。」
男は両手を上げて攻撃する気が無いとアピールする。私の震えは止まらない。
一度壊されると元には戻らない。一度それを経験してしまうと経験する前のようには戻れない。
それならいっそのこと最初から自信なんて持たなければ良かったのに。
私は自分が強者であると勘違いしてしまったんだ。
「また、会おうよ。今度は母さんの事を聞かせて。」
男はそう言い、去ってしまった。




