拒否、受諾。 輪
「何、生きていたの!?」
リズが驚いた顔で言った。
「捕まえた、逃さないよ。」
こうなれば、小さな子供に負ける要素は、、!
リズにお腹を蹴られた。
痛い。私は思わずリズの腕を掴む手が緩んでしまった。
(ああ、そういえば私の体はアンナの物だった。)
盲点だった。
リズはすかさず懐に手を入れる。電流で無力化する気だな。
「やらせないよ!」
私は手に持ったボタンを蹴り飛ばした。
「私に嘘ついて、蹴って。ひどいわね。」
(は? いまさら何を、)
バンッ!
「もういいわ、死んで。」
「え、」
私の足から血が大量に流れている。
バンッ!
もう片方の足も、使い物にならなくなった。
どこから出したのかリズは拳銃を手に持っている。
『死んで、入れ替わりだね。』
次はリズになるのか?
嫌だ。
(こいつには、なりたくない。)
「何をしているの?」
私は身体に巻き付いていた物を力の限り締めて簡易的に足の血を止める。
「無駄よ、どうせ動けないでしょ?」
リズは私に拳銃を向ける。
(関係ない。)
ガリッ、
私は自分の舌を噛み切った。口から血が溢れる。
「は? 何して、」
さすがのリズも予想外だったようだ。動揺が隠せていない。
「死因は私♪」
そう言って、私は牢屋で横になった。
「なんなの? 気持ち悪い。」
「ひどいなぁ。」
私はすぐさま起き上がる。
「え、どうして。傷は?」
「そんなの完治したよ。」
私は傷のあった場所を見せつけた。
「私は死なないから。」
リズの顔が恐怖に染まる。
(立場逆転だね。)
私はその顔を見て清々しい思いになっていた。
「こ、来ないで!!」
腰を抜かしてしまったのだろうか。逃げるでも無くリズは牢屋の隅で小さくなっている。
(可愛いなぁ、可愛い。)
「何となくリズの気持ちも分かるかも。」
私はリズの拳銃を持っている方の手を踏んだ。
「痛い! やめて、」
「い〜や。」
そう言って私は拳銃を奪い、リズに向ける。
「ごめんなさい。撃たないで、殺さないで。」
リズは手を上げて命乞いをしている。
(ただ殺すのもなぁ。)
私にはそんな思いがあった。
『何言ってるの? どうしちゃったの。』
影が私の前に出てきて問いかけて来る。
「うるさい、どいて。」
どうしようか、私やこれまでにリズに殺されたであろう子達が味わった苦しみを体感して貰おうか。
「うん、それがいい!」
「何?」
私は牢屋の外に出て、"あれ"を探す。
「あ! あった。」
それは、私を眠らせたガスを噴出するスイッチ。
「一旦、おやすみ?」
リズに言われた事を思い出して、口調をできるだけ似せて言った。
、 、 、
「おはよう。良い朝だね。」
私は満面の笑みでそういった。
「嫌、嫌だ。辞めて。」
リズは起きた瞬間、まだ何もしていないのに狼狽える。
「お願い、します。許してください。」
「あれ、友達なんでしょ? 敬語は駄目♪」
私は手元のボタンを押した。
「ぁあ!!」
初めて受けたのだろう。少し大袈裟なリズの声が響く。
「痛、痛い。」
リズは涙を流している。
「私達の苦しみ少しは分かったでしょ? じゃあね。」
「待って! 出してよ、」
(私も一度死んだしなぁ。)
「大丈夫だよ。」
私はボタンを牢屋に投げ入れた。
「な、何!?」
リズはそれを受け止める。
「それを押し続けたら、縄が焼き切れて鍵が落ちてくるから。」
リズを眠らしている間に、私が組み立てた手作りのギミック。
天井にぶら下げられた縄に鍵がついており、電気の熱で縄を切ると牢屋の中に鍵が滑り落ちる。
「苦労したよぉ? これつくるの。」
「焼き切るって、そんな事する前に死んじゃう。」
リズはボタンを眺めながら言った。
「別に、リズの結末なんてどうでもいいの。」
(結局いつかは死ぬんだから。)
羨ましい。
「え、、、」
死を悟った顔? 中々良い表情してるね。
「もし君が生きて出られたとして、またこんな事を続けてたら許さないよ。」
「こんな事って、」
「分かってるでしょ? 私は死なないから。続けてたら、殺しに来てあげる。」
生きて出られるのかも分からないリズに、私は脅しをかけた。
「じゃあね。精々生きてよ。」
リズに何か言われているようだったが、無視して階段を上がった。
とても、晴れやかな気持ちで街に出る。
『何が、あったの?』
「何もないよ。ちょっと自分に正直になっただけ。」
ズキンッ! 頭痛が走る。同時に私が殺されるビジョンが映る。
「私を殺すのはあいつだね。」
『駄目だよ!!』
(欲望のままに生きるんだ。)
私は持っていた拳銃でそいつの頭を撃ち抜いた。




