第7話
金色の銀メッキです。次話とセットで7話です。
翌朝。鳥のさえずりと窓から差し込むさわやかな光。清々しい朝にドラの音が響き渡る。
「おいこら、うるさいぞ!!」
マキノスが怒った顔で部屋から出てきた。ドラを持った団長を見るや否や表情を和らげて
「何だそれは?」
と尋ねた。
「ドラです」
「面白そうだな!貸せ!」
マキノスが団長からドラを奪い取り、楽しげに連打した。
「だぁぁぁあーーっっ!うっっるせぇなおい」
クレスチアが荒々しくドアを開けて出てきた。
「なんだよお前かよ、下手だと思ったら」
「これに下手とかあるのか?」
「ある!団長のドラはお前のやつよりおとなしい!」
困惑するマキノスを横目にクレスチアは棚から食器を取り出し、鍋からスープを注ぎ机に並べた。
「何だ、これは、何のスープだ?怪しげな青色をしているが」
「スライムだよ。昨日はミニスライムしか採れなかったからな、味はちょっと物足りないがアタシが腕によりをかけて作ったぜ」
「ミニスライム??お前らそんなものを食うのか?!この私が、スライムを食すなど、エルフとしての誇りがっ!!」
マキノスはスープと睨めっこをしてしばらく動かなかったが、お腹の音がなり、空腹の限界が来たのかスープを飲み始めた。
「塩の味しかしない!!!飲めるぞ!!!!」
マキノスが叫びながらスープを平らげた。
「おはよー」
梨南子が起きて来た。
「小娘、お前、珍しい姿をしているな」
マキノスが梨南子をまじまじと観察している。梨南子の黄ばんだ肌と平べったい顔立ちが気になっているようだ。
「あーわかる?ウチね異世界から来たんよ」「は…?」
「ウチは異世界から来た異世界人!!」
「い…せかい…?小娘、どうやって来たのだ。異世界に移る術は太古に封印されたはずだぞ」
「川に落ちて呼吸出来なくて苦しくて仕方なかったハズだったんだけどさ、意識戻ったら異世界に来てたみたいなんだよねぇ」
軽やかに、微笑みながら梨南子は話す。マキノス、クレスチア、団長、3人とも驚きのあまり声が出ない。
「えっ、みんなスっごく驚いてるじゃん?!」
「てっきり術を使って来たのだと思ってましたよ」
「おい、お前ら。アーサー王の伝説でも似たようなことが書かれていたよな?」
「そうですね。『気を失ったと思ったのだがな、一体ここは何処なのだ?』とアーサーがザダルに言ったと伝えられていますね」
「そうか!アーサーも術を使わずに来たってことだよなそれ!!」
マキノスは勢いよく梨南子の手を掴み
「小娘!街に行くぞ!アーサー王の伝説なら劇場でやっていよう!!」
と元気よく叫んだ。梨南子は仮面をつけてマントや手袋を慌ててはめた。
「団長ー!ジルオよろしく!」
「カジノに行かないでくださいね!」
こうしてクレスチアと梨南子とマキノスはエラプツェルへと飛び出した。
「うわぁ大っきい劇場だなぁ」
石で作られた巨大な建物に梨南子は圧倒されていた。半円の形をしている。
「券は買っておいた、急いで入るぞ!もう少しで始まる!」
無邪気な子供のようにマキノスは頰を紅潮させていた。