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アイツのせいで平凡な日常は終わった  作者: 金色の銀メッキ
4/9

第4話

金色の銀メッキです。カッコいい技名が全く思いつきません。

朝が来た。団長の叩きまくるドラの音でクレスチアとジルオは服を着替えてダイニングルームに出て行く。

「うわ、めっちゃウケる」

自称異世界から来た少女がドラの音を聞きながら笑って言っている。

「うわ、誰だよアイツ。何馴染んでるんだよ」

ジルオは寝ていたので昨晩の出来事を知らない。朝起きたら家に知らない人が平然といるのだから焦るのは当然だ。

「さて、名前から教えてもらえますか?」

「佐藤梨南子、りなっちとか、りなことか自由にどぞ」

「サトウリナコ?えらく変わった名前だな」

「サトウリナコ、どうしてサトウとリナコで名前をわけるんだ?」

「佐藤が苗字で、梨南子が親からもらった名前だよ」

クレスチアとジルオは苗字という言葉に反応した。

「苗字ってこたぁアンタ、貴族か?」

「うわまじで、クレスチア、エータ出身の俺らが話しかけたらだめじゃん」

クレスチアとジルオは軽々しく梨南子に質問したことを後悔する。そして顔を真っ青にして梨南子に謝罪の言葉を述べる。しかし梨南子は怒る気配もなくにこりと笑って

「あー、貴族とか全然そういうのじゃないよ、ウチのいた世界ではさ皆んな苗字あるんだよ。でも面白いねぇこっちの常識と全然違う」

梨南子は知らない世界にいるはずなのにキラキラとした笑顔をしている。ここにいるだけで楽しそうだ。不安の色はかけらも見えない。

「あのさ、リナコは帰りたくないの?元の世界に」

「帰りたくないし帰るくらいなら死んだ方がマシだわ。まあホントに異世界に来るなんて思っても無かったけどさあ」

即答死んだ方がマシとまで言い切った。余程帰りたくないのだろう。

「いや、まじでウチの思い描いた通りのファンタジーじゃん最高じゃん。ねーね、団長さん、この世界にドラゴンとか魔法とかあるんだよね?エルフとかドワーフとか、そーいうのもいるんだよね?」

「はい、いますよ。我々はみなヒューマン族ですが…リナコさんも見たところヒューマン族ですか?」

「そーだね、ヒューマンヒューマン。てか早くマジのエルフとかドラゴンとか見てみたいんだけど!ねぇ、連れてってよ!!そのドラゴンとかがいるところに!」

「見たことないのか?」

クレスチアは珍しいものを見たかのような顔で梨南子に問いかけた。実際異世界人などとてつもなく珍しいのだが。

「ウチのいた世界には魔法もないしドラゴンもいないし、全然違うんだよ!でもね、ウチのいた世界の人々は色々な世界を思い描いてさ、ちょうどこの世界みたいなのを思いついてそれを擬似的に体験できるようにした人達もいたんだよ!それでウチはその擬似的に体験してたわけ。そっくりそのままとはいかないけど、でもすっごく近い!」

「要するに、この世界に似た世界を体験したことがあり、少しなら初めて来たはずのこの世界の知識もあるということですね?」

梨南子の言っていることを今ひとつわかっていないクレスチアとジルオの為に団長は梨南子の言葉をまとめた。それでようやくクレスチアとジルオは理解したようで激しく頷いていた。

「リナコさんは色々したいことがあるようですが、1つ重大なことを伝えなければなりません」

部屋の空気が急に重くなる。団長は相変わらずの無表情だったが、その声からはこれから話すことの重さが伝わって来た。

「しばらくリナコさんには外出を控えてもらいたいのです」

梨南子は驚きのあまり、目玉が転げ落ちそうなほど目を開いて両手で机を叩いて叫んだ。

「なんで!!!なんでなの!!!!」

外に興味を持ち、一刻も早く外を見たがっていた梨南子にはあまりに残酷な言葉だった。クレスチアとジルオは団長がこれから言うことを察して黙り込んでいた。

「リナコさんは余りにも自分達と見た目が違います。背丈は平均くらいですが、肌の色に顔立ちが違います。ですからハンターに狙われます」

「ハンター?えっ何、ヒューマン狩るの?」

「珍しい生き物を狩って金持ちに売るのを生業としている人々です。ヒューマンも例外ではありません。突然変異などで生まれた奇形などのあるヒューマンは標的にされます。特にそういった珍しい人間は高値で売れるらしいので一度見つかれば何をしても追いかけて来るはずです」

梨南子の顔は青ざめた。さっき軽い口調で死んだ方がマシだとは言っていたが、怖いものは怖いのだろう。ここで梨南子がわかった事実は、自分が獲物だということ。

「じゃあ一生家の中にいろって言うの?」

「流石にそれは無理があるし、そんな酷いこと自分達には出来ないので策を考えます」

「ハハッ、少ねぇ脳みそ捻ってやるよ」

「まあ、エータ出身の俺らに期待するなよ、リナコお前も考えろよ!」

「みんな大好き!今気づいたんだけど、ウチ、みんなの名前知らないわ」

「自分はタン、3人の小さな団ですが団長してます」

「アタシはクレスチア。得意武器は剣だ」

「俺はジルオ。得意武器は弓矢と吹き矢だ」

「はわぁー、かっけぇ」

梨南子は何やらときめいていた。


結局梨南子は仮面をつけて、肌の露出をほとんだ無くす服を着ることになった。例えば長袖長ズボンに手袋といった感じだ。

「で、衣類の調達に行くんだけど…リナコお前、ジルオと背の高さとかほとんど一緒じゃん。ジルオは買い出し決定な!」

「はいはい」

「んでアタシがジルオと行ってくるから団長とリナコはゆっくりしとけ!」

「クレスチアさん、貴方絶対買い物だけが目的じゃないですよね?それに今のこの団の財政難の理由は貴方が勝手にカジノ行って負けたからですよね?自分が気付いてないとでも思ってましたか?」

「うっバレてる…」

「ジルオさんと自分が行くのでクレスチアさん、リナコさんにこの世界のことを色々教えといてあげてください」

クレスチアは渋々2人を見送って梨南子と喋り始めた。

「ねーね!地名とかあるんでしょ?教えてよ!」

クレスチアは地図を取り出して説明を始めた。

「うわ、字は読めないわ」

「でもまあ、会話は出来るから大丈夫」

「これがえっと…この森を抜けたところにある、繁華街のエラプツェル」

辿々しく読むクレスチアを見て梨南子は不思議そうに首を傾げて

「クレっちまさか読めないの?」

と尋ねた。

「クレっち…?アタシのことか?アタシは貧しい生まれだから読み書きを習い始めたのも団長と出会ってから、2年前くらいなんだよ」

「大変なんだねクレっちも。クレっちっていうのは、クレスチアだから最初の2文字を取ってクレっち!」

「あだ名ってやつか」

「そうそれ!」

2人は地図に向き直る。クレスチアは繁華街から川を隔てたところにある町を指して

「ここがアタシとジルオの出身地、エータ。法も道徳も何もねぇ貧民街だ」

「貧民街…エータ…法も道徳もないって?」

「人殺しとか当たり前。殺される方が悪い。盗まれる方が悪い。貧しさのあまり荒んでいるからな」

「凄い所で育ったんだね…」

梨南子はこの世界の闇の部分に少し触れて怖気付いていた。

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