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アイツのせいで平凡な日常は終わった  作者: 金色の銀メッキ
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第3話

こんにちは金色の銀メッキです。出会いの会です。

クレスチアは驚きを隠しながら男性に向かって吠えた。といっても隠しきれていなかったが。

「ここでは盗られる方が悪いんだ!」

「そ、そうだぞ!盗られてる時に叫ぶなり何なりしとけりゃ良かったんだよ!」

男性はずっと表情を変えることなくクレスチアとジルオの言い分を静かに聞いていた。怒っているようにも焦っているようにも見えない。

「自分があの場で叫んだりでもしていたら、貧民街の貴方方はただでは済みませんでしたよ?」

想定外の言葉に2人は固まった。

「でもあんたからみたらアタシ達、盗っ人だぞ?悪者だぞ?」

「だって、生きるために盗んでいるのに自分にはそんな残酷な事できません」

こんな事を言う人に出会ったことのなかった2人は戸惑った。ジルオは良い人だと思い、クレスチアは何か企んでいると思った。貧民街の人間に優しくする者など居ない。政府からも人権を与えられないので優しくする必要などない。それがクレスチアの知っている世界だった。

「お前は何がしたいんだ一体、アタシ達は奴隷に向いてないぜ。それに悪いが鱗は返せない。早く冬に備えて服やら買わなきゃダメなんでね」

「クレスチア?」

クレスチアは男性を牽制するように身構えた。しかし男性は気にする様子もなく深く息を吸って

「お金が欲しいのなら自分と一緒に冒険しませんか?」

と言った。さっきより微妙に優しく言ったように聞こえた。

「は?正気か?」

「えっ、え???」

ほぼ同時にクレスチアとジルオが叫んだ。

「装備は自分が揃えるので来てくれるだけで良いですよ」

ますます訳がわからない2人は喋る事も動く事も出来ないでいた。目の前の男性はスリの被害者の筈なのに、加害者にしかも貧民街の子供に情けをかけてしかも一緒に冒険しようと言う。

「ただ、ダンジョンに潜るので命の危険はあります。無理にとは言いませんが、もし来てくれるのなら衣食住は保証しましょう、家は今からになりますが」

「なんで俺らなんか誘うんだよ」

クレスチアも言いたいことは一緒だった。男性は徐に口を開いた。表情は相変わらずだ。

「自分は昔から一人ぼっちでした。ダンジョンに入ったら仲間が出来ると思って冒険者になったのですが、人と話した経験が無く依頼受付の人としか会話がない日々でした。会話の練習もしてみましたが他人に話しかけられずにいました。しかし、貴方方が自分から鱗を盗ったことによりようやく話しかけることが出来たのです」

嘘をついているようには感じられなかった。聞いていてついつい同情してしまったクレスチアとジルオは

「俺はこの人に着いて行っていいと思う」

「アタシもだ」

と短い会話を終わらせて男性の顔を見た。

「アタシはクレスチア、よろしくな」

「俺はジルオ。2人とも戦いの経験が無いが良いんだな?」

「勿論です。自分はタンといいます。早速色々買いに行きましょうか」

ジルオとクレスチアはこうして冒険者になった。


「懐かしいような最近の話のような…」

団長との出会いを思い返していたクレスチアは懐かしそうに微笑んだ。今ではあの不良達に真っ向勝負をしても勝てるのだろうか。そもそも彼らは生きているのだろうか。あの時あれほど貧民街出身の自分と貧民街を憎んでいた筈なのに今となっては妙に美化されてしまい思い出だ。ぼんやりと森を眺めるクレスチアは背後に立つ存在に気付かなかった。

「どうしたのですか?」

「うわぁぁぁぁぁ!!!!って団長?!」

出会った時から団長の気配の薄さは相変わらずだ。友達ができなかったのもこれが原因なのかもしれない。そんなことを思いながらクレスチアは

「眠れないので夜の散歩でもしようかなーと」

と返事をした。

「そうですか、では自分も行きます」

「え」

「クレスチアさんは前科持ちですからね」

「あの事については深く反省しておりますので何卒ッ」


クレスチアは土下座までしたが、過去に何度か夜の繁華街で盗みをしているのがバレていたので結局団長もクレスチアの散歩に付き添う事になった。

3人の家は森の奥の静かなところで3人以外の人が来ることはない。しかし、歩き始めてすぐに団長のランプに人影らしきものが照らされた。

「団長誰かいる…」

「静かに」

人影はこっちに近付いてくる。団長が短剣を抜く。ダンジョンの外でも危険な生物や魔物、盗賊などはいるので武器は常に身につけているから側に置いているのが常識なのだ。

「おーい」

向こうが話しかけて来た。それでも警戒は解かない。団長がランプを掲げる。人影はどんどん近づいて来て遂に顔がわかるほどの距離になった。茶色の髪を1つにくくった少女でセーラー服を着ている。それを見たクレスチアは顔色を変えて

「ようこそ、クソ田舎へ〜。港はあちらの方ですよ」

と深い森を指差した。港はとても遠いがクレスチアの言ったことに嘘はない。

「港?ってか言葉通じるじゃんやったね」

「おや、海軍の方では無いのですか?」

クレスチアは冷や汗をかきながらセーラー服の少女に話しかける。

「海軍?違うよ、ウチは異世界から来たのでーす!!」

「は?異世界?」

「とりあえずついて来てください。夜の森は安全ではありませんから」

「団長、良いんですか?!」

「とりあえずここは暗すぎます。言ってることも気になりますし明るいところで調べましょう」

「ウチめっちゃ怪しまれてるじゃん!まあ当然かぁ〜」

と言いながらセーラー服の少女は着いてきた。

家の明かりはホタルクスという魔物の光るツノを7個はめ込んだ物なので明るい。明るいところで見た少女のセーラー服は海軍のものとは違っていた。それに少女の顔立ちはとても変わっていて肌の色も変わった肌色だった。クレスチアの見たことのない人種だ。団長も見たことない人種のようで反応に少し困っている。

「団長、異世界から来たとかいうのホントかもしれないですね」

「そうですね。クレスチアさん、身体検査をお願い出来ますか?武器とか隠し持っていたら危険ですから」

クレスチアは全身隈なく調べたが怪しいものは見つからなかった。

「詳しい話は明日聞きます。とりあえずこの空き部屋で寝てください」


「18年程生きてきましたがが異世界から来たという話は初めてですね」

「アタシもですよ」

クレスチアは思いがけない出来事に驚いた余り寝ることができなかった。

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