第1話
はじめまして。金色の銀メッキと申します。小説執筆は初心者です。拙い文章ですがファンタジー開幕です。
「…汝の力を解放せよ。死の宣告!」
金髪の少女が剣を地面に突き刺す。小さなランプの灯り一つの暗くて冷たい洞窟の地面から無数の大きなトゲが出現する。トゲは目の前のゴブリン達を貫いた。
「グギャァァァァァァァ」
ゴブリンの断末魔が響く。10匹ほどゴブリンがいたがトゲの餌食となったのは3匹ほど。逃げられたようだ。
「ひぃ〜、相変わらずおっかねぇな、そのワザ。死の宣告ってか物理的に殺しにかかってるよな、まあ逃げられたけど」
布製の大きなバンダナのような帽子を被り、白い貫頭衣のような服に、青い石が埋め込まれた木製のネックレスを被った少したれ目気味の黒髪の14歳ほどの少年が笑いながら言う。怖がっているようにはとても見えない。
「おい、最後が余計だジルオ!」
「へぇーさーせん。ところで団長!追いやすか?」
団長と呼ばれた18歳くらいの少年は背が高く、飛行帽で耳を隠していて、ゴーグルを頭につけている。カーキーの軍服のような上下に、脛くらいまでの黒いブーツを履いている。背中には狙撃銃を一丁背負っていて、腰には短剣をつけている。
「いや、引き返しましょう。そろそろ時間です」
団長はくるりと振り返り、来た道を戻り始めた。2人がそれに続く。
「いやぁ、今日の晩飯はなんだ?」
「今日の当番俺かぁ〜期待しろよクレスチア、俺が腕によりをかけて作ってやらぁ」
ジルオがさっきゴブリンを逃してしまった金髪の少女、クレスチアにニヤニヤと笑いながら言う。
「えええ、お前かよ、団長〜!!!団長が作ってくださいよ、それか街に食べにいくとか!」
「自分は昨日でしたよ。それに料理ができなきゃいざという時も生き延びられません。ジルオさんの訓練です。街に行くのはお金がないからダメです」
「団長のケチ」
「クレスチア、お前ホントに俺より年上か?駄々こねるそういうとこ、妹みたいだわ〜」
「ばっちり16歳くらいだっつーの、お前よりかは歳上だ!全く、誰が幼いお前を生き延びさせたと思ったんだ」
クレスチアとジルオはいつものように小突き合う。2人は仲良しだ。本当の姉弟のようにずっと一緒に暮らして来た。
「そろそろ水龍の棲家です。静かに」
団長の一言で2人は静まる。団長はランプの火を消した。3人は足音を忍ばせ、足を踏み外して落ちないように暗い中、慎重に進む。無事に水龍に見つかることなく棲家を通り過ぎた。
「ふぅ、やっぱ緊張するわ」
「ホント、この前はクレスチアが虫にびっくりして声出して見つかったもんな、死ぬかと思ったわ」
「う、うるせぇな、結果無事だっただろ?」
「団長のおかげでな」
団長は無口で冷静な性格なので自分が話題になっても特に反応することはない。しかし団長をジルオとクレスチアは兄のように慕っている。団長はとても強いがそれに自惚れることもなく、弱い人に対しても優しい。しかし自分の強さをアピールせずに地味に暮らしているため無名で、強い団に所属することもない。ジルオとクレスチアに出会う前はずっと1人でダンジョンに潜り色々な魔物を討伐していた。そのせいか友達もいない。
「そういや、団長って無茶苦茶強いけどさ、アタシらに出会う前はどんな風に暮らしてたんだろ、団長と出会って2年くらいだけど全然そういう話ないよな」
「そうだな、まだ18歳なのに金星金星冒険者と同じくらい強いじゃん、ひょっとしてそれ以上かもな」
金星冒険者というのはこの世界で英雄や伝説といった風に崇められる程輝かしい功績を持った冒険者が与えられる称号である。しかし、称号を得るためには申告が必要なので申告していなければ称号は得られない。しかし、申告しない人など極々稀にしかおらず、大抵の冒険者は申告する。冒険者としての等級が上がれば上がるほど強い団に入りやすくなったり、難易度の高いクエストを持ちかけられやすくなったり、自分のグッズを作ったら売れるなど、要するに収入が増えるのだ。中等冒険者達とは比べ物にならないくらい。それに冒険者になる者のほとんどは野望があったり向上心がある者なので、ジルオとクレスチアが今まで見て来た沢山の冒険者の中で団長が唯一、何も申告しない人である。
「ふぁー、着いた、やっぱ我が家サイコー!」
「うげっ、今日一日中探索して回ったからヘトヘトだわ俺、さて、さっさと飯作りますか」
ジルオとクレスチアは自分の家が無かったので団長の家に住んでいる、といってもこの家も団長が2人と冒険を始めるにあたり建てた家だが。
こうして3人は平凡な暮らしを幸せに送る。死の危険と隣り合わせのダンジョンを日々探索して運が悪ければ大怪我、もっと悪ければ死ぬ。それでも楽しかったのだ。3人はこれから起こるイレギュラーな出来事を予測すらしていない。