< 07 魔術師の街02 >
変な男が居た。
その男は【鑑定】が出来なかった。
こんな事は初めてだ。
一体、どの様にして【鑑定】させない様にしているのだろうか?
普通、ステータスを見せたくない場合は、ステータスを偽装する。
その方が、『何かを隠している』とは気付かれないからだ。
【鑑定】を出来なくするなど、『後ろめたい事が在る』と言っている様なもので、悪手でしかないと思うのだが…。
それと、その男が無造作に持っている袋は、【マジックバッグ】の様に思える。
お金持ちにも、強そうにも見えないその男が持てるような代物ではないと思う。
どうにも、チグハグな感じがする男だ。
魔術研究会に勧誘したが、組織に入る事が嫌いな様だった。
勧誘を諦め、次に街に入って来た男を勧誘する。
この男も、魔術研究会に入ってくれる気が無さそうだったので、早々に勧誘の仕事を切り上げた。
そして、相方を応援の要請に走らせ、俺は先ほどの男の後を付けることにした。
その男は魔道具屋へ行き魔石を売ろうとしたが、買い取りを拒否された様だ。
この街では、魔石の買い取りは、冒険者ギルドか魔術局でしか出来ないからな。
『どちらに売りに行くのかな?』と思ったが、魔石を売ること自体を諦めた様だった。
加入を勧められるのを嫌がったのかもしれない。
男は露店へ行き、タオルや下着を買った。
せっけんも買ったところを見ると、他の街へ行くつもりなのだろうか?
出来れば魔術研究会に勧誘したいのだが。
露店の店主とトラブルを起こしている魔術師が居た。
最近、こういう非常識な輩が多くなった気がする。
困ったものだ。
魔術師があの男に絡んだ。
魔術師が魔法の詠唱を始めた。
こんな人の多いところで、何を考えているんだ。
しかも、相手のすぐそばで詠唱を始めるとか、バカ過ぎるだろう。
あの男は何もしようとしない。
予想外の出来事に、呆気にとられているのだろうか?
【ファイヤーアロー】が放たれた。
だが、すぐに消滅した。
魔法を消滅させられたのか?
再び詠唱を始める魔術師。
再び放たれる【ファイヤーアロー】。
そして、再び消滅させられる【ファイヤーアロー】。
消え方から察するに、どうやらあの男は、何らかの結界を張っている様だ。
再び詠唱を始める魔術師。
【ファイヤーアロー】が宙に現れたところで、パタリと魔術師が倒れた。
魔力切れだろう。
情けない。
何が”至高の存在”か。
ただのバカではないか。
俺は、誘われるままに加入した魔術研究会への疑問が、大きくなるのを感じた。
男は、何事も無かったかの様に歩き去って行った。
俺は男の後を追った。
(一部修正しました。2019.11.24)
冒頭の、ナナシのことを鑑定できなかった部分。
ここは、『魔法を無効化する魔道具が一部の者たちの間に普及している』表現になっていましたが、ここをゴッソリと変更しました。
ずっと後に出てくる話と、整合性が取れなくなってしまっていたので。
ついでに、ルビの追加と、「」の一部を『』に変更しました。




