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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第七章 異世界生活編03 魔術師の街
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< 06 魔術師の街01 >


俺は目の前に建つ大きな壁を見上げている。

街を囲んでいる外壁だ。

俺は、これからこの街に入り、この異世界での普通の生活を始めるのだ。


これまでの苦労を思い出して感激する。

たった三日間の苦労だが、何も知らない異世界で、言葉も通じず、食料も持たず、一人で荒野に居た。

魔法の使い方を独学で学び、森へ行き猪を狩ったり、言葉が通じない状況を魔法で解決したり、強盗に追い掛けられたり、色々な問題を克服して、俺は今、この街の入り口に立っている。

感激もしようと言うものだろう。


俺の冒険は、ここでおしまいだ。

俺はこの街で、ごとけて、のんびり過ごします。


< 完 >(昨日ぶり二回目)



俺は門番の人のあきれた様な視線に耐え切れず、街に入る手続きをお願いした。

お互いに無言のまま、淡々(たんたん)と手続きを終えた。

最後に、「ようこそ、魔術師の街、グラアソへ。」と言われた。低いテンションで。

門番の人が低いテンションだったのは俺の所為せいだ。

だから、訊きたかった事を門番の人に訊く事が出来なかった。


街に入ったら、すぐに声を掛けられた。

「ようこそ、魔術師の街、グラアソへ。」

魔術師っぽく見える二人組の男だった。

門番の人に訊きたかったけど訊けなかった事を、この人たちに訊こう。

「魔術師の街?」

「はい。ご存知ないのですか?」

「はい。ド田舎から来たので。」

男の一人が嬉しそうに説明してくれた。

男の説明は、事前に【目玉(仮称。魔法で作られた目)】を使って得ていた情報と変わらなかった。

だから、ほとんど聞き流しました。(てへ)

でも、一つだけ気になる言葉があった。

『魔術師にとって楽園の様な街です。』というものだ。

『他の人たちにとっては、どうなんですかね?』という疑問が頭に浮かぶのは、俺の性格が悪い所為せいではないよね?

魔術研究会という組織への加入をすすめられたが、ことわった。

「組織に所属するのが嫌なんです。」、「冒険者ギルドにも入っていないんです。」とか色々言っているうちに、門から入って来た別のターゲットに目標を変えて、男たちは俺から離れて行った。

「ふう。」

やれやれだぜ。

俺は街の中へ歩き出した。


この街でやろうと決めている事が有る。

宿に泊まる事と、食事をする事と、服を買う事だ。

お金の価値が分からないから、それを確認する為にね。

それと、この世界の料理も食べてみたい。

今までずっと、猪の肉と芋と果物だけだったからね。

楽しみだ。

取り敢えず、魔石を売る為に魔道具屋に行った。

しかし、買い取りを断られてしまった。

魔石の買い取りは、冒険者ギルドか魔術局でしかしていないとの事だった。

門のところで勧誘されたのとは別の組織の名前が出て来たので、訊いてみた。

魔術局とは役所の一つとのことだった。

そこで魔石を買い取ってもらおうと思った。

しかし、「魔術師を募集しているから、行ってみるといい。」と、言われたので躊躇ためらう。

役所でも魔術師の勧誘をしているのか。

うーん。

これは、『組織に所属していない人からは買えない。』からの、加入勧誘コンボルートっぽいな。

この街で魔石を売るのは諦めようかな。

まだ、多少はお金が有るからね。

でも、この街に住もうと考えた場合、魔石を(ギルドや組織に加入しないと)買い取ってもらえないのは困るな。

まぁ、それは、後で考えればいいね。

俺は魔石を売るのを諦め、服を買いに行く事にした。


露店ろてんが集まっているエリアに来た。

色々な物が売られている。

今日は、シャツとズボンと下着と靴下とタオルとハンカチを買おうと思っている。

ず、服が売られている一角いっかくに行き、服を見る。

日本で売られている物より、生地きじが厚く、ゴワゴワしている。

ボタンの材質は木で、サイズが一回ひとまわり大きい。

小さい物を安価で作る技術が未発達なのだろう。

予算は、昨日、魔石やまきを売って手にした銀貨9枚だ。

金貨も持っているが、露店では使えない気がするので、ここでは使わない。

金貨は、宿で使って、銀貨にくずそうと思っている。

シャツとズボンの値段を見ていく。

シャツとズボンを買うと、それだけで銀貨8枚以上飛んでしまう様だ。

うーん、予算が足りないね。

シャツとズボンは、今回は諦めようか。

下着と靴下を探す。

ふと、まわりの人たちの足元あしもとを見る。

靴下をいている人が居なかった。

サンダルをいている人が4割ほど居て、その人たちは裸足はだしだ。

短靴を履いている人も3割ほど居たが、靴下を履いてる人は居なかった。

ブーツを履いている人は、靴下を履いているか分からないよね。

靴下は高級品だったりするのかもね。

作りにくそうな形だもんね。

露店では見付からないかもしれないね。

『売っていたらラッキー』くらいに思っておこう。

下着を見る。

パンツと肌着が、どちらも2枚で銀貨1枚で売られていた。

この値段だと、銀貨1枚の価値は500円くらいなのだろうか?

お金の価値も物の価値も両方分からないと、買い物って大変だよね。(苦笑)

少し考えて、タオルとハンカチを見に行く事にした。

『そちらの方が物の価値とお金の価値が分かりやすいかな?』と、思ったからだ。

タオルを見る。

ふわふわした物ではなく、日本手拭(てぬぐ)いとも違う、シワシワした生地きじだった。

これが10枚で銀貨1枚で売られていた。

10枚も要らないのだが、【無限収納】に入れれば邪魔にならないしなぁ。

悩む。

まぁいいや。

タオル10枚を買った。銀貨1枚で。

この値段だと、銀貨1枚の価値は1,000円くらいかな?

売られているハンカチは、先ほどのタオルを小さく切った様な物だった。

『タオルを切ればいいや。』と思って、ハンカチを買うのはめた。

再び、下着を見に行く。

パンツと肌着が、どちらも2枚で銀貨1枚だ。

パンツと肌着の値段は、1枚500円ってところなのだろうか?

微妙に高いね。

まぁいいや。これらを買った。

そしたら、露店のおじさんに驚かれた。

「魔術師さまが、こんな安物を買うのですか?」と。

「魔術師ですが、さっき街に来たばかりで、仕事をしてませんので。」

そう言ったら納得してくれた。

そして、「魔術師さまなら、いっぱい仕事が有りますよ。」と、言ってくれた。

礼を言って、おじさんと別れた。

その後も少し露店を見て回り、せっけんを1個買った。

せっけんは1個で銅貨1枚、11個で銀貨1枚だった。

『多く買うとお買い得』っていうのは、こちらの世界でも同じの様だ。

そして、銅貨10枚で銀貨1枚と同じ価値だということが分かった。

些細ささいな事だが、これで釣り銭をくすねられる危険性が減ったね。

さっきまでは怖くて、お釣りが出る買い物が出来なかったからね。

小銭を気にする小心者しょうしんものですが、何か?(←誰に言ってるんだろうね?)


そろそろ街の他の場所を見に行こうかと思っていたら、すぐ近くの露店で大声を出す馬鹿が居た。

「俺は魔術師さまだ、こいつはもらってやる。感謝するんだな!」

この街にも強盗が居たね。

そんな気がしていたよ。

「はぁ。」

溜息ためいきが出た。

その男は魔術師っぽい服装をしている。

俺よりも上質なローブを着ているね。

さて、『魔術師にとって楽園の様な街です。』という言葉を聞いて気になった、『他の人たちにとっては、どうなんですかね?』を、この目で確認する事が出来そうだ。

ワクワクなんてシテイマセンヨー。


その男はこちらに歩いて来る。

手には露店から持って来たのであろう靴を持っている。

露店のおじさんは「ドロボー!」と、声を上げている。

その男と目が合った。

「んだぁ、文句あるのかぁ?」

あれ? からまれましたよ? なんでだ?

ワクワクが顔に出てたのかな?(ワクワク)

絡まれたので仕方が無く正論を言ってみる。

そう。シカタガナクデスヨー。

「魔術師でも、泥棒は泥棒ですよ。」

「魔術師さまは、至高の存在で、この街で一番偉いんだよ!」

そう言って、魔法の詠唱を始めた。

「え?」

こんなに人が密集しているところでか?

それ以前に、こいつは俺に向かって何か魔法を使おうとしているっぽいんだが、すぐに手が届くような距離で詠唱を始めるって、何を考えてるんだ?

やる気になれば、魔法が発動するまでに、ぶん殴って、蹴り上げて、転がして、踏みつける事が出来る距離なんだが。

馬鹿なのかな?

馬鹿なんだろうね。

「【ファイヤーアロー】。」

馬鹿が詠唱していた魔法は、【ファイヤーアロー】だった。

俺に向かって来た【ファイヤーアロー】は、【魔法無効】の結界に当たって消えました。(てへ)

『近過ぎて外れてしまうかも?』と思ったが、ちゃんと俺の体に向かって来た。

意外と腕はまともだったのかな?

馬鹿なのに?

俺は首をかしげる。

【ファイヤーアロー】を撃ってきた男も、魔法が消えた事に首をかしげている。

「………。」

「………。」

男は、もう一度詠唱を始めた。

俺は、ったまま考えていた。

コレって戦隊モノで順番にポーズを取りながら名前を言っている間、おとなしく待っている悪の手先っぽいよね。

ふと、昔見た、懐かしくもカッコイイポーズを思い出す。

【ファイヤーアロー】が放たれた。

消えた。

「………。(○○パンサー良いよね。)」

「………。」

男は、もう一度詠唱を始めた。

【ファイヤーアロー】を撃った。

消えた。

「………。(○○シャークの悲劇は、止める人が誰も居なかった事だよね。)」

「………。」

男は、りずにもう一度詠唱を始めた。

めんどくさくなったので、MPの値を”0”にして気絶させました。(てへ)

まわりの人たちには、魔法を使い過ぎて気絶した様に見えただろう。

馬鹿だったし。

決して、”悪の手先ポジション”にムカついた訳ぢゃナイデスヨー。


そろそろ他の場所を見に行こうと思い、この場所をあとにした。



馬鹿のその後のことは、【目玉(仮称)】で監視していた【多重思考さんの一人(?)】に、後で聞きました。

衛兵に引き取りを拒否されたので、衛兵を追い払った後でボッコボコにされて、身ぐるみ剥がれて街の外に”ポイ捨て”されたそうです。

この街の住人達も世紀末風味(ふうみ)ですね。

この国には、平和な街は無いのかな?


(一部修正しました。2019.11.24)

ルビの追加と、「」の一部を『』に変更しました。

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