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姫様を助けたのは失敗だったが、割と好き勝手に生きています。  作者: 井田六
第六章 異世界生活編02 最初の街
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< 01 西端の街01 >

これから、彼のこの異世界での”普通の生活”が始まります。

彼の望む、のんびりした生活です。

ただ、彼がのんびりと過ごす。

ただ、それだけの話です。

たぶん。

きっと。

(ムリナンダナー)


俺は目の前に建つ大きな壁を見上げている。

街を囲んでいる外壁だ。

俺は、これからこの街に入り、この異世界での普通の生活を始めるのだ。


これまでの苦労を思い出して感激する。

たった二日間の苦労だが、何も知らない異世界で、言葉も通じず、食料も持たず、一人で荒野に居た。

魔法の使い方を独学で学び、森へ行き猪を狩ったり、言葉が通じない状況を魔法で解決したり、色々な問題を克服して、俺は今、この街の入り口に立っている。

感激もしようと言うものだろう。


俺の冒険は、ここでおしまいだ。

俺はこの街で、ごとけて、のんびり過ごします。


< 完 >



「おまえは、何をしているんだ?」

門の前で感激していたら、そう声を掛けられた。

声のしたほうを見る。

革鎧を着た人が、槍にもたれかるように立ち、あきれた顔でこちらを見ていた。

門番をしている男の人だ。

「………………。」

「………………。」

「こんにちは?」

「ああ、おはよう。」

そうだね。まだ朝だったね。

「で? おまえは、何をしているんだ?」

「えーっと、感激していました?」

「なんで疑問形なんだよ。 で? 街に入るのか? 入らないのか?」

「あ、入ります、入ります。」

俺は、街へのはいかたを訊く。

「街に入るのには、どうすればいいのでしょうか?」

一応、調べてはいるけど、”ド田舎から出てきたていで行こう”と、考えていたからね。

俺は、この世界の常識が無いから、その言い訳を「ド田舎から出て来たばかりだから。」で、とおすつもりだ。

「身分証は持っているか?」

「いえ、持っていません。」

「どこから来たんだ?」

何か怪しまれているのかな?

前もって考えていた設定の通りに話をする。

「森の中の村から来ました。」

「森の中に村が在るなんて聞いたことが無いぞ。」

「ド田舎なんで。」

「何て名前の村だ?」

「名前は知りません。ただ、”村”とだけ呼んでいました。他の村とかとは交流が無かった様です。」

「すげえな。どんだけ、ド田舎なんだよ…。」

あきれらた。

これで話を切り上げてくれれば、計画通りだ。

「まぁ、いいや。」

(ニヤリ)

「身分証が無いのなら、銀貨1枚を預けてくれ。これは街を出る時に返してもらえるから、安心してくれ。」

「それと、ステータスの確認をさせてもらうので、一度、詰所つめしょに来てくれ。」

「はい。」

門番の人のあとに付いて、詰所に来た。

「これに手を当ててくれ。」

うながされるままに、机の上に鎮座している水晶玉に手を当てる。

すると、目の前に”ステータスの一覧”が表示された。

それを見た門番の人が「よし、いいぞ。」と、言う。

何がいいのか俺には分からなかったが、街に入れればいいので、それは些細ささいな事だ。

銀貨を1枚渡して、銅貨っぽいのを渡される。

「この街から出る時にコレを門番に渡せば、銀貨1枚を返すから。あと、一時的な身分証代わりだから無くさない様にな。」

「こいつの有効期限は20日間だ。それまでに役所やギルドで身分証を作ってもらえ。身分証が無いと不便だからな。」

「はい。ありがとうございます。」

「では。ようこそ西端せいたんの街、グシラグへ。」


俺はこの異世界の街の中に、最初の一歩を踏み出した。


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