< 15end ナナシ >
身分証を持たない人は、街に入る時にステータスの確認をされる事が分かった。
色々おかしいステータスを、何とかしなくてはいけなくなった。
「ステータスを偽装する魔法って在るのかな?」と、頭の中で問い掛ける。
すると、すぐに「在りますよ。」と、返事が返ってきた。
魔法が既に在るのなら、それ程の手間は掛からないだろう。
さっさと済ませて、夕食にしよう。
ステータスのおかしい部分をいじっていく。
先ずは、名前。
ここには何も書かれていない。
「このままぢゃ、マズイよね。」
以前の自分の名前を思い出そうとする。
思い出せなかった。
「あれ?」
家の近所の景色や、大学の講義室、友人の名前とかは思い出せるのに、自分の名前や両親の名前、住所なんかは思い出せなかった。
「なんで?」
ひどく困惑した。
頑張って思い出そうとするが、どうしても思い出せなかった。
神さまの言っていた、「俺の存在が無かったことになってしまった。」と言う、その言葉の意味を、俺は初めて理解した。
ショックだった。
とてもショックだった。
しかし、そういうものだと思って、諦めるしかないだろう。
「諦めるしかないよな…。」
「うん、諦めるしかない。」
記憶から失われたのは、自分に関する、ごく一部だけの情報の様だし、学んだ知識や友人たちの事は憶えているのだ。
それらだけでも憶えているのだから十分だろうと、自分に言い聞かせた。
ショックからなんとか立ち直って、名前を考えることにする。
少し考えて、”ナナシ”と決めた。
色々な感情が湧いてくるが、そう決めた。
理由はいくつでも考えられるだろうが、ただ、そう決めた。
そう。
なんとなくだ。
次に、年齢を決める。
元の世界の年齢が22歳だったから、22歳にした。
レベルは1にした。
俺は、この世界の常識が無い。
その言い訳として、「ド田舎から出て来たばかりだから。」と、言おうと考えているからね。
変にレベルが高いと、おかしいと思われてしまうから。
値のおかしい、HPとMPを、どのくらいの値にするか考える。
他の値と見比べながら、HP:20、MP:25とした。
あと、何故か他の値と比べて突出しているAGIの値もいじってAGI:20とした。
【スキル】、【耐性】、【付与効果】、【加護】、【称号】は、すべて無しにした。
すべて無しにしてから、少し考える。
全ての人が何らかの【加護】を持っている世界だったら困るか。
他の人たちは、何か【加護】を持っているのだろうか?
確認する方法って有るのかな?
”身分証が無い人は、水晶玉の様な物に手を触れて、ステータスの確認をされる”とのことだったな。
それって、”他人のステータスを確認する魔法”が在るって事だよね。
頭の中で、「他人のステータスを見れる魔法って何?」と、問い掛ける。
返答は【ステータス】だった。
なんだ、【ステータス】って、自分にも他人にも使える魔法だったのか。
情報収集をしている【多重思考】さんたちに、街の人たちのステータスを確認してもらって、【加護】を持っている人がどのくらいの比率で居るのか確認してもらう。
しばらくして返答が来た。
「【加護】を持っている人が見当たらない。」とのことだった。
【加護】も無しで、問題無いね。
偽装したステータスは以下の様になった。
”名前:ナナシ”
”年齢:22歳”
”性別:男”
”職業:魔術師”
”レベル:1”
”HP(Hit Point):20/20”
”MP(Magic Point):25/25”
”STR(Strength):19”
”DEX(Dexterity):19”
”VIT(Vitality):20”
”AGI(Agility):20”
”INT(Intelligence):25”
”MND(Mind):25”
”LUK(Luck):15”
【スキル】:
【耐性】:
【付与効果】:
【加護】:
【称号】:
街に入る方法も分かったし、ステータスの偽装も済んだ。
言葉が通じない問題も解決している。
街へ行く準備は整ったな。うん。
「よし。明日、街へ行こう。」
そう決めた。
夕方、小屋が完成した。
内部は三畳くらいの広さだ。
取り敢えず、寝るには十分だし、お風呂場に改造しても、ちょうどいい大きさだろう。
脱衣所を増設しないと、いけないかもだけど。
早速、枯れ葉を床に敷き詰めて、その上にビッグベアの毛皮を被せた。
その上で横になってみる。
「うん、いいね。」
毛皮が少し硬く感じたが、まぁまぁだ。
夕食を食べて、街の情報を確認してから、この日はさっさと寝ることにした。
昨日と今日で、この世界で生きていく為の準備を沢山した。
いよいよ明日から、この異世界での”普通の生活”が始まるね。
ワクワクして、寝れないかもしれない。
「遠足前の小学生かよ。(笑)」
「「家に帰るまでが遠足です。」って、言ってたっけな。」
「…帰る家が無いけどな。」
「………。」
ちょっと凹みつつ、寝た。
2019/06/20
ステータスに、”性別”と【称号】を追記しました。




