< 09 今後の方針の練り直し >
荒野に張った結界の中で、今後の方針を考える。
言葉が通じないという問題が発覚して、街に行くのを止めたので。
それと、対人戦闘についての問題も明らかになった。
どんな魔法が有るのかの知識は、蓄積されてきている。
しかし、魔法を即座に発動させるには、その魔法を実際に使った経験がないと、難しい様に感じた。
先ほどの冒険者たちとは、幸い戦闘にならなかったが、戦闘になっていたら負けていた気がする。
結界で身を守れても、取り押さえられたら意味が無いと思うし。
殺さずに制圧する手段を持っていないと、この先、困る事が起きるかもしれない。
落とし穴にばかり頼る訳にも、いかないからね。
やる事は、こんな感じだと思う。
1、魔法を使いまくる
魔法を理解することと、即座に発動できる様にする為ね。
2、対人戦闘の検討
魔法で撃退したり、制圧したりする方法を考えておこう。
3、生活環境の改善
すぐに街に行くことが難しくなったからね。いっそのこと、拠点を作るか?
4、言葉が通じない事の対策。
これは魔法でなんとかなることに期待しよう。魔法でなんとかならない状況など、考えたくない。
5、食料の入手方法の検討。
街に行けないなら、安定的に食料を得る手段が必要だよね。
6、街の情報収集
街の治安の情報とか。そもそも街に入れるのかも分からなかったね。
「ぐう。」
結構やる事が有って、変な声が出た。
うーん、何からやろうか?
”魔法を使いまくる”からやるか。
よし、【並列思考】を増やして、魔法を使いまくろう。
現在、【並列思考】は二つだ。
一つだけだった【並列思考】を、さらに並列思考にして、二つにした。
今、一つを周囲の警戒に、もう一つを、狩りの仕方の再検討に充てている。
これをさらに魔法で増やして、八つにした。
そして、仕事を割り振る。
一つは、引き続き周囲の警戒に。
他は、【火属性魔法】、【水属性魔法】、【風属性魔法】、【土属性魔法】、【雷属性魔法】、【闇属性魔法】、【光属性魔法】を、それぞれ使いまくって、理解してもらう。
俺の居る結界内の、俺から少し離れた場所に結界を張って、そこに向かって魔法を撃ちまくる様だ。
よろしく頼む。
俺は、言葉が通じない事の対策をする。
頭の中で、言葉を理解できる様になる魔法を思い浮かべ、問い掛ける。
すると、その魔法が頭の中に思い浮んだ。
それを唱える。
「【言語理解】。」
魔法が発動した感触は有ったが、確認する方法が無いよね。
何かの機会に確認しないといけないね。
次に【転移魔法】について考える。
【転移魔法】で街の中に行けば、情報収集が捗ると考えたからだ。
それに森の中で食料を探し歩くのにも、役に立つと思う。
【転移魔法】自体は森の中で使っている。
落とし穴を埋めるのに、土を転移させた。
今回は何かを転移させるのではなく、自分を転移させる。
出来るよね?
先ず、目に見える近い場所への転移を試す。
転移先を見て、そこへ転移する様子を頭の中で思い浮かべて、こんな魔法がないか問い掛ける。
予想していた通り、前に使ったその魔法が頭の中に浮かんだ。
そして、唱える。
「【転移】。」
目で見ていた場所に転移していた。
よし、成功だ。
やったね。
次に、行ったことのある場所への転移が出来ないかを考えた。
試そうと思ったが、【不可視】の結界を張ってあるココに帰って来れるのか不安だったので、それは止めた。
街に【転移魔法】で移動して、情報収集をすることを考えていたが、何も自分自身が転移しなくとも、”目と耳の役割をする何か”を、送り込めば良いのではないかと思い付いた。
そういうモノを作りだす魔法はないだろうか?
宙に浮く見えない”目”を通して、離れた場所の様子を見たり、聞いたりする事が出来る。
その様なモノを作り出す魔法がないか、頭の中で問い掛ける。
頭の中に沢山の文字が見えた。文字が増えたり減ったりしている。
そんな状態がしばらく続く。
そしてすべての文字が消えた。
そんな魔法は無いってことだろうか?
うーん、条件に問題が有るのかな?
複数の物が足されたモノだからな。
機能を分解して付与していけば、出来上がる気がするな。
「宙に浮く」、「移動可能」、「不可視」、「見る」、「聞く」、「繋がる」。
分解してみたら意外と多かった。(てへ)
これを作るのは大変そうだな。
後回しにして、【並列思考】さんたちの手が空いたら、手伝ってもらおう。
色々考えていたらお腹が空いたので、食事にする。
猪の肉を焼く為の平たい石が、周りにまったく無い事に気が付いた。
「あー、しまったな。」
どうするか?
そう言えば、【ストーンボール】の魔法は、石の塊を作り出せるよな。
石の板を作り出せる魔法が有るかもしれないね。
そう思ったら、その魔法の名前がすぐに頭に浮かんだ。その魔法を唱える。
「【クリエイトストーンプレート】。」
そのままの魔法で、そのままの物が、目の前に作り出された。
何か言いたくなったが、まぁいいや。
【ファイヤー】の魔法で上の面を熱する。
もう一枚、石の板を作り出して、その上で肉と芋を切る。
小剣で切るのはどうかと思うな。
「あー、包丁が欲しくなるな。」
街に行かないと手に入らないから、いつになるか分からないね。
値段が高かったりしたら買えないな。
本当に、いつ手に入れられるか分からないね。
「はぁ。」
溜息が出た。
焼いた肉と芋を食べ終え、片付けをしていたら、【闇属性魔法】と【光属性魔法】を担当していた【並列思考】さんから、作業が終わったと報告があった。
「早かったな。」と、頭の中で思ったら、「【精神魔法】と【治癒魔法】は、被験者が居ないとちょっと…。」と、言うことらしい。
うん、そうだよね。
【闇属性魔法】を担当していた並列思考さんには、【無属性魔法】を。
【光属性魔法】を担当していた並列思考さんには、ゴーレムの作り方や、操作方法を、それぞれお願いした。
ゴーレムの作り方や、操作方法は、拠点を作る為にね。
拠点は、いつか必要になると思うから。
いざと言う時に転移で逃げられるのだから、緊急避難先として拠点を持っておきたいよね。
「さて、この後どうするか。」
【睡眠耐性】とか【疲労耐性】とか付与したので、眠らなくても大丈夫だと思うんだが…。
色々あったから、疲れた気もする。
「うん。寝よう。」
そう決めて、寝る場所をどうするか考える。
「【クリエイトベッド】とか言う魔法は無いだろうしなぁ。」
諦めて地面に横になる。
地面に横になっただけなのに、体から力が抜けるのが分かる。
思っていたよりも疲れていたのかもしれない。
そう言えば、寝てしまったら、【並列思考】さんたちはどうなるんだろうな。
寝ている間も活動できるのなら、色々助かると思うんだが。
周囲の警戒をしてもらっている【並列思考】さんに、どうなるのか確認してもらうことにしよう。
確認をお願いしてから、眠りに就いた。




