< 07 並列思考を並列思考 >
【気配察知】の魔法を使いながら、森の中を東に向かって歩いている。
それとは別に、【並列思考】で周囲を警戒している。
【並列思考】で周囲を警戒しながら、更に、狩りの仕方の再検討をしたいなと思い、【並列思考】をさらに【並列思考】出来ないかと考えた。
「ちょっと、試してみるか。」
立ち止まり、【気配察知】の魔法を止める。
頭の中で、【並列思考】を、さらに【並列思考】出来ないか、問い掛ける。
頭の中に、沢山の文字が浮かんでは消えていき、その後には何も残らなかった。
こういう事は初めてだな。
いつもは、最後に魔法や文字が思い浮かぶのに。
諦め切れずに、【並列思考】をさらに【並列思考】する魔法を、頭の中でイメージする。
何かが組み上がるかの様な感じが、頭の中でした。
なんとなく出来る気がした。
そして、「【並列思考】。」と、唱える。
体の中から魔力が抜かれる様な感覚があった。
そして、【並列思考】を、さらに【並列思考】出来た事に気が付いた。
「やった。」
【並列思考1】には、引き続き周囲を警戒してもらい、【並列思考2】には、狩りの仕方を再検討してもらう。
俺は再び【気配察知】の魔法を使いながら、森の中を東に向かって歩いて行く。
「肉を食べることが出来たが、果実や炭水化物も欲しいなぁ。」
肉を食べて満腹になったのだが、栄養のバランスが気になった。
森の中で手に入りそうな炭水化物と言えば、芋とかだろうか?
ふと、猪が地面を掘り返していたのを、思い出した。
「芋が在るかもしれない。」
うん、希望が持てるね。
果実と芋を探しながら森の中を歩く。
芋の葉っぱっぽいのを見付けた。
【鑑定】する。
「芋の葉。実は食べられる。実から生える芽には毒が有る。」と、出た。
やったね。
芋を掘り返そうと思ったが、道具が無い。
「うーん、何か良い魔法はないだろうか?」
そう考えたら、【並列思考2】が、「【分離】でいけると思います。」と教えてくれた。
おお、ありがたい。
早速、芋の葉っぱを見ながら、「【分離】。」と、唱える。
次の瞬間。葉っぱから実、根っこまで、一繋がりになった状態で、芋が地面の上に置かれていた。
「すげぇ。」
根っこには土が付いていない。
土も根っこから分離されたんだろう。
「【分離】の魔法、万能すぎんだろ…。」
呆れた様な声が出たけど、しょうがないよね。
芋の実だけを穫って、【マジックバッグ】に入れた。
さらに東に向かって歩こうとしたところで、【並列思考1】から言われた。
「街に行くまでの食料は確保できたと思います。」
「森は移動にも睡眠にも向きません。荒野に戻るべきだと思います。」
とのことだ。
うん、そうだね。
頭の中の声に従って、方角を南に変えて歩いていく。
南に向かって少し歩いたところで、前方に何かが居るのに【気配察知】で気が付いた。
警戒しながら、近付いて行く。
二本足で歩く、背の低い生き物が居た。
数は三体。剣を持っている。
魔物かもしれない。
【鑑定】した。
「ゴブリン。弱い魔物。知能は低いが集団で行動できる。大群だと厄介。」と、出た。
よし、魔法で仕留めよう。
そう思ったら、【並列思考2】から、「私にやらせて下さい。」と、言われた。
【並列思考2】には、狩りの仕方を考えてもらっていた。
何か良い方法があるのだろう。
任せる事にした。
俺は見学だ。
と、言っても、並列思考なだけで、本人なんだけどね。
ビシッビシッビシッビシッビシッビシッ
三体のゴブリンたちに、【ストーンバレット】が撃ち込まれた。
ゴブリンたちがこちらを見る。
「あれ? 俺に気付いてませんか? 【並列思考2】さん。」
ゴブリンたちが、こちらに向かって来た。
ちょっとビビるが、【物理無効】の結界を張っているし、周囲を警戒する役目の【並列思考1】さんも居るから大丈夫だよね。
信じているよー。
ゴブリンたちにビビッていたら、ゴブリンたちが転んだ。
その直後、ゴブリンたちが穴に落ちていくのが見えた。
【並列思考2】さんが、何をしたのか教えてくれる。
浅い落とし穴を作って転ばせて、転んだ場所に落とし穴を作ったそうだ。
なるほど、簡単だね。
「【ストーンボール】で仕留めるので、ゴブリンが見える場所まで移動して下さい。」と、言われたので、穴のそばまで移動する。
ゴブリンたちを【ストーンボール】で仕留めた。【並列思考2】さんが。
さて。
ゴブリンたちの死体は埋めればいいのかな? それとも燃やした方が良いのかな?
その前に魔石が有るか調べるか。
【鑑定】で、魔石が有ることを確認した後、【分離】で魔石を取り出した。
【分離】で取り出した魔石は、俺の足元に転がっている。
「本当に便利な魔法だなぁ。」
魔石は少し透明感のある赤い色だった。
魔石がお金になる事を祈って、【マジックバッグ】に仕舞った。
ゴブリンたちの死体は、燃やした後で埋めました。
【並列思考2】さんに、ゴブリンを倒した方法について質問する。
猪を狩った方法が色々面倒だったから、別の狩りの仕方を再検討してもらっていたはずだったから。
「まだ検討中です。てへぺろ。」と、返ってきた。
「てへぺろ。」は、いらんやろ。
まぁ、いいや。
落とし穴の、イイ使い方を知ることが出来たからね。
さらに、南に歩いて行く。
森を抜けた。
少し先に道が見えた。
道まで行って、東に向かうことにした。




