< 05 初めての狩り >
森に入って狩りをする為に、身支度を整える。
そうは言っても、腰に小剣を差し、ローブを着て、袋を手に持つだけなんだが。
現在、太陽はほぼ真上に在る。
この世界に来た時には、斜めの位置に太陽が在ったので、だいたいの方角が分かった。
現在位置の西と北に森が在り、北に在る森は、東にずっと続いている。
西は、街と反対方向だから、行かない。
真北に向かい、最短距離で森の中に入り、東へ向かって歩いて行くことにする。
俺は真北に向かって、歩き始めた。
森の手前まで来た。
東西方向に向かう道が在った。
道が在ることには、この場所に来るまで、まったく気が付かなかった。
俺がこの世界に来てから、誰も通らなかったんだと思う。
「人が少ない国なのか、人の少ない場所なのか、どちらなんだろうな?」
まぁ、いいや。
道を横切って森に向かった。
森に入った。
獲物を探しながら、【並列思考】で周囲を警戒する。
しばらく森の中を歩いてから、気が付いた。
そう言えば、【気配察知】の魔法を使うのを忘れていた。
準備とは何だったのか。(笑)
【気配察知】の魔法を使って、獲物を探しながら、森の中を歩く。
しばらく歩くと、【気配察知】の魔法に反応が有った。
10匹ほどの何かが居る様だ。
動いたり止まったりしながら移動している。
その”何か”が、何なのかを見てみる為に、追い掛けてみる。
”10匹ほどの何か”から、少し離れた場所で立ち止まり、見てみる。
猿だった。
「食べようという気には、ならないなぁ。」
周囲に鳥が居ないか、【気配察知】の魔法で調べてみる。
居るには居たが、小鳥しか居なかった。
果実でもないかと探してみるが、それも無かった。
猿たちを避けて、東へ向かって歩く。
森の中で、ミカンの木っぽいのを見付けた。
沢山の黄色い実を付けている。
実の一つに意識を集中して、【鑑定】してみた。
「みかん。まだ熟していない。すっぱすぎる。まだ食べるのには適さない。」と、出た。
「みかんという名前なのかな? それとも、俺の知識に在るものに翻訳されているのかな?」
食べられないとの鑑定結果だったので、スルーして、東へ向かって歩く。
森の中を東に向かって歩いていると、再び【気配察知】の魔法に反応が有った。
その方向に向かう。
近付いてみると、猪だった。
鼻先で地面を掘っていた。
食べられそうな獲物だ。やったね。
先ず、この場所に、【ウォール】で、高さ1.5m、幅4mの土の壁を作った。
猪は気付いていない。
作った壁の90°ずれた方向に、【ウォール】で同じ大きさの土の壁を作った。
猪は気付いていない。
角の部分に隙間の空いた”コ”の字の形になる様に、もう一つ土の壁を作り、壁と壁の間の隙間に、【ピットフォール】で落とし穴を作る。
よし、準備が出来た。
猪に気付かれない様に遠回りして、壁の反対側に移動した。
猪に向かって、【ストーンボール】を放つ。
ドガッ!
ぶもっ!
驚いて、作った壁の方向へ逃げて行く猪。
それを走って追い掛けながら、猪に【ストーンバレット】を打ち込みんで、壁の方へ追い込んでいく。
猪を追って、森の中を走る。
意外と簡単に追うことが出来た。
この世界の環境が地球と違うのかな? 重力が軽いとか。
それとも、神さまがこの体に何かしてくれたのだろうか?
今は、それは後回しだな。
猪を追い掛ける。
猪は、壁の阻まれ、壁に沿って走って、隙間に堀った落とし穴に落ちた。
「やったー。」
急いで落とし穴に向かう。
「ふう。」
少し息が上がる。
ほぼ、全力で走ったと思うのだが、その割には疲労が少なく感じた。
そう言えば、【疲労耐性】を、付与していたな。
【疲労耐性】さんが、良い仕事をしてくれた様だ。
落とし穴を覗き込むと、穴の底で猪がオロオロしていた。
よし、仕留めるぞ。
【ストーンボール】を何発も放って、猪を仕留めた。
「ふう。疲れた。」
肉体的ではなく、精神的に疲れた気がした。
落とし穴の底で倒れている猪を見ながら、【分離】の魔法を唱える。
落とし穴の底に毛皮を残して、俺の足元に毛皮を剥がれた猪が転がる。
この魔法は、転移魔法の一種の様だ。
さらに【分離】の魔法を唱えると、その場に骨と内臓を残して、その隣に肉だけになった猪が転がっていた。
よし、肉を【マジックバッグ】に仕舞い、後片付けをしよう。
足元に残った猪の骨と内臓を、落とし穴に蹴り落とす。
「後は、落とし穴を埋めればいいのだが、どうすればいいのかな?」
魔法で作った落とし穴を元に戻す魔法が在りそうな気がするが、落とし穴の中に物が在った場合どうなるんだろうね。
埋まってくれる気がしないな。
「うーん、良く分からん。」
頭の中で、魔法で作った壁を崩して落とし穴を埋めるイメージを浮かべながら、何か良い魔法がないか問い掛ける。
【転移魔法】で壁の土を移動させる方法が、頭の中に浮かんだ。
「めんどくさそうだが、仕方が無いね。」
【転移魔法】を何回も使って、壁の土を落とし穴に移して、埋めた。
「はぁ、疲れた。」
これは、魔力の無駄遣いな気がするな。
一撃で絶命させて、燃やせばいいじゃん。
安全に狩りをしようと考えたのは、失敗だったかもしれない。
狩りの仕方を考え直そうと思った。
設定
”【転移魔法】で壁の土を移動させる方法が、頭の中に浮かんだ”のは、レベルが上がったからです。
それまでは、詠唱する”文字”でした。
レベルが上がったのは、魔法を色々使ったことと、魔法を使って猪を倒したからです。




