< 19 外伝 忘れられたガイドブック 裏話 >
天界でロングセラーとなっているガイドブックがある。
そのガイドブックの売り言葉は、「付箋がいくらでも貼れる!」と、言うものだ。
購入した神はガイドブックを読み、付箋を貼り、書き込みをして、まだ見ぬ旅先へと思いを馳せる。
楽しいひと時であるのだが、沢山の付箋を貼った結果、ガイドブックが自立(!?)する様になったあたりで、ふと気付く。
「「付箋がいくらでも貼れる!」と、言うのは、本当にメリットなのだろうか?」と。
すっかり持ち難くなり、ガイドブックが本来持っていたはずの携行性が行方不明になり、机の上に自立する、その”物体X”を見て、正気に返る。
「コレはナイ。」
そして、もう一度、本屋に足を運ぶ事になるのである。
本屋にとって、とてもありがたい本と言えるのではないだろうか?
ガイドブックのコーナーで、一番良い場所に置かれているのも、当然かもしれない。
この日、本屋のガイドブックのコーナーを、一神の女学生が訪れていた。
彼女は、友神たちに薦められたガイドブックを買いに来ていた。
友神たち曰く
「ガイドブック界のロングセラー。(薦めるとは言ってない)」
「思わず夢中になる。(薦めるとは言ってない)」
「誰もが通る道。(薦めるとは言ってない)」
「一家に一コはあるのでは?(薦めるとは言ってない)」
と、なかなか好評だった。(←え?)
姉にも訊いてみたところ、「あ~、私も持ってた。(薦めるとは言ってない)」とのことだったので、既に買うことに決めていた。
いい笑顔の店員さんの居るレジで会計を済ませ(「バリバリ」)、ニコニコしながら家路についた。
後日。
彼女の持つ”物体X”を見て、友神たちは彼女の性格を知った。
彼女は、一つの事に集中すると、周りが見えなくなるタイプだった。
彼女の育てた”物体X”は、それは見事な円柱形をしていた。