< 17 外伝 バリバリ鳴く財布02 >
発注した”バリバリ鳴る財布”を、受け取りに行った。
店員が、「こんな面白い生き物がいますよ。」と、平ぺったい生き物を見せてきた。
「バリバリ」
バリバリと鳴いた。
手に取る。
ほんのり温かい。かわいい。
腕に張り付いた。かわいい。
二匹買って帰った。
”バリバリ鳴る財布”の隣に置いて売ってみた。
”バリバリ鳴く財布っぽい生き物”と貼り紙をした。
かわいいと、評判になった。
その後も何度か、商品の受け取りの度に、数匹ずつ買ってきた。
色々な物を口に入れる習性がある様で、口にコインを入れて、財布として職場に連れて行けると、話題になった。
学校に連れていく子供が出たので、販売を止めてくれと、苦情が来た。
販売を止めた。
残念がる神たちの声がそれなりにあったが、仕方が無いと思う。
その後、他の誰かが”バリバリ鳴く財布”として、あの生き物を大量に売り出した。
大流行した。
私の売る”バリバリ鳴る財布”は、すっかり売れなくなった。
いや、それはそれとして。
「それ、私の世界の生き物だよね?」
密輸?
それとも、他の世界にも居る生き物なの?
現地に行って、調べてみた。
私の使いを名乗る者が、”バリバリ鳴る財布”を発注している製作所に、捕獲をお願いした事が分かった。
二度、大量に買い取っていったそうだ。
今も雇った人が森に入って捕獲しているらしい。
すぐに止めさせた。
張り込んで、犯人を捕まえようとしたが、犯人は現れなかった。
あの生き物は、乱獲により激減していた。
捕獲と売買を禁止した。
天界での”バリバリ鳴く財布”の販売は、お店が急に閉店したことで終わった。
閉店の理由の説明も、あの生き物が乱獲により激減したことの説明も無かった。
私のところに訊きに来た神には、密輸と乱獲による激減により、捕獲を禁止したと説明した。
私のお店の、既に売り上げが減っていた”バリバリ鳴る財布”は、売れないままだ。
”バリバリ鳴く財布”のニセモノ扱いする神も少なくない。
さらに”バリバリ鳴く財布っぽい生き物”の激減が、私の所為になっていた。
私の手元に残ったのは、多少のお金と、汚名と、”バリバリ鳴る財布”の在庫。
それと”バリバリ鳴く財布っぽい生き物”が一匹。
商売は難しいなと思った。
「バリバリ」
かわいい!