< 16 外伝 バリバリ鳴く財布01 >
どうやら地球では、”バリバリ鳴る財布”が話題になっているらしい。
地球マニアの、とある神が、これを天界で商品化しようと、自分の担当する世界の住人に制作を依頼した。
”コインを入れる”、”紙を入れる”、”バリバリ鳴る”、”二つ折り”が、その財布の仕様。
「「地球で流行っている。」と、言えば売れるだろう。」という、割と安易な考えだったのだが、意外とよく売れた。
小さな製作所に思わぬ収入が舞い込む事になった。
その成功を見ていた近所の職人。
どうやら、”バリバリ鳴く財布”とやらは、よく売れるらしい。
「よし、俺も売ろう。」
近くの森に棲むアイツを、捕まえてくればいいだけだろう。
早速、近くの森に棲むアイツを数匹捕まえて、家に持ち帰った。
アイツとは、長方形の平たい体と、大きな口、小さく薄べったい四本の足を持つ爬虫類だ。
木や岩に張り付き、背中の色を変えて、じっとしている。
何でも口に入れる習性があるらしく、捕まえると木の実や石が口に入っていたりする。
地面に降りた時は、体を二つに折り、伸ばし、折り、伸ばしして移動する。
そして「バリバリ」と鳴く。
その性質を考えて…。
「なるほど、財布になるな。」
「………。」
「いやいやいや、無理じゃね?」
捕まえてきたアイツを見て、どうしようかと悩んだ。
せっかく捕まえてきたので、一応実験してみることにした。
まず、口を開かせて、何か入っているのか見てみることにする。
「どうすれば、口を開けるのかな?」
逆さまにしてみた。
口は閉じたまま。
頭を撫でる。変わらず。
腹を撫でる。変わらず。
口の下を撫でる。変わらず。
口の縁を撫でる。
口を開けた。
コトトン コツン コツン
どんぐりが、長いもの、まん丸のものが一つずつ。それと、どんぐりの半分ほどの小石が二つ出てきた。
金属製の物は入っていなかった。
コインを入れる実験をしてみよう。
洗ったコインを口に当ててみる。特に嫌そうにはしていない。
少ししたら、パクリと口に咥えた。
少し上を向き、”こっこっこっ”と、やって、口の中に全部入れた。
もう一枚コインを口に当ててみる。
少ししたらパクリと口に咥え、”こっこっこっ”と、やって、口の中に入れた。
逆さまにして、口の縁を撫でる。
コトトン
「バリバリ」
鳴いた。
別の個体で実験。
口にコイン近づける。口に入れたら逆さまにして、口の縁を撫でる。
コトン
「バリバリ」
さらに別の個体でも実験して、同じ結果が得られた。
次の実験。
紙をお腹で保持させる実験。
紙をお腹に当てる。
4本の足で保持した。
木に張り付く習性そのものの行動に思える。
別の個体でも実験して、同じ結果が得られた。
次は、二つ折り。
体を折って、伸ばして移動するが、どこまで曲がるのか?
慎重に曲げてみた。
すごい曲がった。
ペッタンコになった。
「なにこいつ、背骨あるの?」
反対方向に、慎重に少し曲げてみる。
こちらは曲がらない。
嫌がる素振りを見せる。
「ごめん、ごめん。」
別の個体でも実験。
一匹、体の硬いのが居た。
こいつは無理。森に帰してあげよう。
残りの個体を、しばらく飼ってみることにした。
エサは、虫と豆を与えてみた。
茹でた豆を好む様だ。
トイレの場所を憶え、そこでしかしない。賢い。
ほんのり温かい。癒される。かわいい。
周りの色に合わせて体の色を変える。かわいい。
「バリバリ」鳴く。かわいい。
うん、かわいい。
常に持ち歩きたい。
体に張り付けると、そのままじっとしている。かわいい。
ほんのり温かい。かわいい。
財布として使う気にはならなかった。かわいい!
ずっと飼うことにした。かわいい!




