< 15 ???さん視点03 >
「ギャーーー。」
見守っていた”落ちて来た人”が倒れたのを見て、私は悲鳴を上げました。
今の倒れ方は、MPを使い果たして気絶したのでしょう。
神さまは、高い魔法の【スキル】を付与されましたが、MPの値を高くしていなかった様です。
「相変わらず、いい加減ですね!」
神さまに対して、怒りが湧き上がります。
倒れた”落ちて来た人”の近くに、動物や魔物が居ないことを確認して、一先ず安堵します。
MPの値が低いのはマズイです。
せっかく、高い魔法の【スキル】を持っていても、MPが少なくては、その能力を活かすことが出来ません。
これでは、神さまが望んでいる偉業を成すことなど不可能です。
なんとかしなければいけません。
しかし、既に地上に降ろしてしまいました。
地上に居る彼に対して、私に出来ることは、あまり有りません。
しかし、諦める訳にはいきません。
出来ることを考えましょう。
考えます。考えます。
しかし、出来ることが思い付きません。
私は焦りました。
こういう時こそ、落ち着いて状況を確認しましょう。
何かヒントが見つかるかもしれません。
落ちて来た人は、【ライト】の魔法を使っていましたね。
次に「【ステータス】。」と、唱えて、倒れてしまいました。
ん?
【ステータス】って、そんなに魔力を使いませんよね。
おかしいですね。
そうです。
【ステータス】で、気絶するなんて、おかしいです。
【ステータス】で、気絶した理由を考えます。
いったい、何が起きたのでしょうか?
彼が何をしたのかを、彼の気持ちになって考えます。
彼は異世界から来たのです。
この世界でも、以前の世界と同様に魔法が使えるのか確認をするのは、当然です。
初めに【ライト】の魔法を唱えたのは、魔法が使えるのか確認をしたのでしょう。
あるいは、魔力の消費具合の確認をしたのかもしれません。
彼は次に、【ステータス】の魔法を唱えました。
これは、魔力がどのくらい残っているのか、確認をしようとしたのでしょう。
あれ?
何も、おかしな点は在りませんね。
何故、気絶してしまったのでしょう?
分かりません。
もう一度、彼の気持ちになって考えます。
彼は異世界から来ました。
以前の世界と同様に魔法が使えるのか、確認をします。
しかし、以前の世界と同じ詠唱で、同じ魔法が発動すると考えるのは、おかしいですね。
きっと、魔法をしっかりとイメージして、魔法を唱えたことでしょう。
うん、何もおかしくないですね。
うん、何もおかしくないです。
ですが、何かが心に引っ掛かります。
”心に引っ掛かった何か”が、何なのかを考えます。
考えます。考えます。
彼の持つ【魔法創造】の【スキル】のことを、思い出しました。
”想像を魔法に変換し、”書庫”へ書き込む。”
【魔法創造】の【スキル】を、私はその様に定義しました。
なるほど、分かりました。
彼は【ステータス】の魔法を実行しようとして、【ステータス】の魔法を作ってしまったのですね。
「………。」
あれ?
これだと、割と無意識に魔法を作れてしまいませんか?
「………。」
【魔法創造】の【スキル】の、とんでもない欠点に気が付いてしまいましたが、今は、それは置いておきます。
彼が気絶した原因は分かりましたので、問題の解決方法を考えましょう。
問題を解決するには、彼のMPの値を大きな値に書き換えれば良いですね。
別に、本当の問題から目を逸らしている訳ではありません。
定義を変更する手段に心当たりが無いだけですっ。(←少しムキになってる)
彼のMPの値を大きな値に書き換えましょう。
ええ、そうしましょう。
それで、解決です。
ええ、それで解決ですともっ。
しかし、彼が地上に居る今、私にそんな事は出来ません。
神さまなら可能ですが、神さまが気付いた様な気配を感じません。
それどころか、爆睡している様に感じられます。
私が、何とかしなければなりません。
いえ、こう言う時こそ、私が何とかしないといけないのです。
それが、私の存在意義です。(ふんす!)
ステータスの値を書き換える、何か裏技的な手段がないか必死に考えます。
考えます。考えます。考えます。考えます。
しかし、思い当たるものは有りません。
さらに考えます。考えます。考えます。考えます。
ん?
ステータス?
彼が気絶する原因となったのは、彼が”【ステータス】の魔法を作ってしまった”からでしたね。
その魔法は、今、どうなっているのでしょうか?
完成したのでしょうか? それとも不完全な状態なのでしょうか?
もし、不完全な状態ならば、その魔法をいじって、MPの値を書き換えられたりしませんかね?
小さな希望を見付けて、彼が作った【ステータス】の魔法を探すことにしました。
見付けました。
彼の作った、”不完全な状態の【ステータス】の魔法”は、”書庫”に書き込まれずに、天と地上の間の”曖昧な場所”に漂っていました。
やりました。
ここは、私のホームグラウンド。
と、言っても、他の場所よりも神力の消費が少ないというだけですが。
ここでなら、私の能力でも、何とか出来るかもしれません。
彼の作った、不完全な状態の【ステータス】の魔法。
これを、”値”を書き換えることが出来るように改造します。
よし、改造できました。
そして、この魔法を”書庫”に書き込みました。
これで、”値を書き換えることが出来る【ステータス】の魔法”が、出来上がったと思います。
地上で倒れている彼に対して、今作った【ステータス】の魔法を使ってみます。
「くっ。」
やはり地上に居る人に対して魔法を使うと、神力の消費が多いですね。
彼のステータスの値を見ます。
ごく普通の、一般人にしか見えない値が並んでいます。
神さまも、よくこの値の人を地上に降ろしたものです。
下手をすると、簡単に死んでしまいます。
神さまに対して言いたい事が有りますが、先にやるべき事を済ませます。
先ず、彼のMP(Magic Point)の値を書き換えます。
最大値は9999の様ですね。
9999にしてしまいましょう。
ついでにHP(Hit Point)の値も書き換えましょう。
HPの値が大きければ、死に難くなりますからね。
これも9999にしてしまいましょう。
AGI(Agility)の値も書き換えましょう。
猪に襲われても、逃げられる様に。
これも9999にしました。
他の値も書き換えようと思っている内に、私の神力が尽き掛けてしまいました。
LUK(Luck)の値も書き換えようと思ったのですが、私の神力が保ちませんでした。
これ以上、魔法を使うのは不可能です。
諦めました。
私の神力の残りが、極僅かになってしまいました。
しばらくは、神力を使うどころか、意識を保っていることさえも困難でしょう。
しかし、HPとMPとAGIの値を高く書き換えられたので満足です。
これで、大抵の困難からは、逃れられるでしょう。
彼の幸運と、彼との再会を願いながら、私は眠りに就きました。
設定
???さんは、落ちて来た人が、魔法の無い世界から来たとは思いませんでした。
この章の本編はこれで終わりです。
次章の”異世界生活 奮闘編”では、彼がこの異世界で生きていく為に頑張る様子を書きます。
”???さん”の過去については、”外伝 とある異世界の神さまたちのお話”(https://ncode.syosetu.com/n0024fa/)に書いて行きます。そちらもご覧下さい。




