< 13 ???さん視点02 >
神さまが、この”落ちて来た人”に、何をさせようとしているのかを考えます。
この強力過ぎる【スキル】で、何をさせるつもりなのでしょうか?
考えます。考えます。考えます。
しかし、思い当たる事が有りません。
落ちて来た人を、さらに詳しく調べれば、何か分かるでしょうか?
さらに詳しく調べようとして、気が付きます。
この人は、容姿がとても整っていますね。
美男子と言って良いと思います。
そして、神さまの力の気配を感じます。
神さまが、この”整った容姿”を、作り上げたのかもしれませんね。
この整った容姿と、強力過ぎる【スキル】。そして【神の寵愛】。
これらから、さらに考えます。
一つの可能性に気が付きました。
さらに考えます。
どうやらこれに間違いない様に思います。
「ふう。」
少し残念な神さまとは思っていましたが、ここまでするとは…。
本当に残念な神さまですね。
神さまは、この人を神にして、自分の結婚相手にするつもりなのだと、私はそう確信しました。
「かつて、人から神になった人が居た。」と、言う話を、聞いたことが有ります。
人であっても、神たちから偉業を認められれば、神になれるんだそうです。
神さまがこの人に与えた、強力過ぎる【スキル】。
これは、何か偉業を成させる為のものなのでしょう。
そう考えれば、所持品が何も無かったり、【言語理解】すら持っていない理由も、理解できます。
スタートラインをより低くすることで、偉業をより大きく見せたいのでしょう。
ならば、私がすべきことは、この人のお手伝いですね。
この人が偉業を成せるように、お手伝いをしましょう。
”神たちから認められるほどの偉業”に、私が思い付くモノが無いので、取り敢えず、今すべきお手伝いを考えます。
所持品が無い事については、私の手持ちの品をこの人の近くにバラ撒いて、拾ってもらうことにしましょう。
このくらいの手助けはセーフでしょう。
【言語理解】は、どうしましょうか?
この人自身に魔法を掛けてもらえば大丈夫ですね。
全ての魔法が使えるのですから。
他に、何があるでしょうか?
落ちて来た人を見ながら考えます。
ふと、落ちて来た人の様子がおかしいことに、気が付きました。
顔色が悪いだけではない、何か危険な状態の様に感じます。
調べます。
魂が弱っていることに気が付きました。
「ギャーー。」
「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。」
ここに長時間居過ぎた様です。
早く地上に降ろさなければなりません。
すぐに地上に降ろします。
真下は森の様です。
神さまは森に降ろすつもりだった様ですが、森は駄目です。
前に落ちて来た人が、森に降ろされた直後に猪に襲われて、死に掛けたのです。
森から少し離れた荒野に降ろし、寝かせます。
ここなら、猪にいきなり襲われることはないでしょう。
上から大地を見下ろします。
この大地には”森”と”荒野”と”街”と”川”しか在りません。
この四つの中なら、森が一番無難なのでしょうか?
神さまが森に降ろす理由を、初めて考えた気がします。
荒野に寝かした、落ちて来た人を見ます。
少し汗をかいていますでしょうか。
少し環境をなんとかしましょう。
私は木を生やし、日陰を作りました。
「ちょっと…、大き過ぎた様ですね。」
私は、今作った大きな木を見下ろします。
森の一部を切り取ってきたかの様な、大きさです。
「神力を、無駄遣いしてしまいましたね…。」
これから先、この人のお手伝いをするのですから、神力の無駄遣いには注意が必要です。
ただでさえ、私は神力が少ないのです。
以前の様に、また、眠ってしまうことになれば、お手伝いが出来なくなってしまいます。
気を付けましょう。
落ちて来た人が目を覚ますまでに、出来ることを済ませておきましょう。
お金、火を起こす道具、武器、袋などを周囲にバラ撒きます。
水筒も必要ですね。いくつ必要でしょうか?
街までの距離を考えると四つくらいでしょうか? これもバラ撒きます。
容姿が良すぎるのも問題ですね。
変な虫…、いえ、人間関係で問題が起こるのを、避ける何かが必要ですね。
顔を隠す物を用意しましょう。
フードの付いたローブに【認識阻害】の魔法を掛けます。
これを、落ちて来た人に、ふわりと掛けてあげます。
次に、この落ちて来た人が目を覚ました後で、してほしい事を紙に書いておくことにしましょう。
まず、「ローブに【認識阻害】の魔法が掛かっているので、これを身に付け、トラブル防止の為に素顔を晒さないで。」と、書いておきます。
身を守る為の魔法についても書いておきましょう。
「結界魔法で身を守って。」、「魔法で体に耐性を付与して。」
有ると便利な【マジックバッグ】と【鑑定】。それと【並列思考】についても書いておきます。
周囲の地図も書いておきましょう。
現在位置と街の位置が分かる様に、簡単な地図を書きました。
この紙を袋に入れて、落ちて来た人の近くに置いておきます。
落ちて来た人が目を覚ましそうです。
私は、この天と地上の間の”曖昧な場所”に居て、ここから彼を見守っていくことにします。
私は、地上に居るだけでも、神力を消費してしまいますからね。
こういう時、私は、神力を使ってもなお、形を作れない不完全なこの体を、うらめしく思います。




