表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/400

< 11 神の姉、創作活動をする。全力全開、徹夜続きのテンションで >


妹の個室から自分の個室に戻って来た。

妹の不手際で亡くなってしまった人の魂を、私の担当している世界に降ろす。

その為にしなければならない事をします。

泥人形のまま、降ろす訳にはいきませんからね。

体形や顔などをランダムで作る事も出来ますが、なんとなく創作意欲が湧いたので、自分で作ってみることにします。


ず、降ろす先の星の住人の姿に合わせて、大体だいたいの体を作ります。

髪は銀髪にしましょうか。

色合いの調整をします。

耳の形は、デフォルトの物から少し形を変えます。

目を作り、眉を作り、鼻を作り、口を作りました。

なかなか、会心かいしん出来できなのではないでしょうか。

趣味の創作活動が活きている様です。

アゴの形と顔全体の輪郭を整えます。

全体的にバランスを取りながら、微調整をします。

………。

おお、会心の出来です。

思わず、見とれてしまいます。

ですが、見とれている無駄な時間は有りません。

作業を続けます。

腕、手、胸、お腹、背中、足と、作っていきます。

へそも忘れずに作ります。

指に指紋を付ける事も忘れません。

全身をながめて、微調整をします。

手の造形に不満があったので、調整します。

よし、いい感じに出来上がりました。

美しい手です。

れします。

次に、鎖骨の造形に取り掛かります。

ここは、こだわらなければいけないポイントです。

指を這わせて、微調整を繰り返します。

よし! 素晴らしく美しい鎖骨が出来上がりました。

美術品の様な出来栄できばえです。えへへへ。


さぁ、いよいよ”大事な部分”に取り掛かります。ぐへへへ。

やるぜー、超やるぜー。

全力全開だー。

むはーーーー。

じっくり手間を掛けて、素晴らしいモノを作り上げました。ぐへへへへへ。


出来上がった体の最終確認です。

全身くまなく、確認します。

鼻の穴や足の裏まで、全てです。

おかしなところが在っては、いけませんからね。

全身のバランスや各部の造形まで、しっかりと確認します。

よし、完璧です。


最後に魔法を掛けます。

泥人形を肉体に変化させ、肉体に魂を定着させます。

初めて使う魔法なので、緊張します。

体中の神力しんりょくを練り上げて高めます。

泥人形に魔法を掛けると、その全身が強く光りました。

光が消えた後の体は、すっかり肉体っぽくなっていました。

先ほどまで泥人形だったものから、心臓の鼓動を感じます。

触れると温かそうです。

なんとなく、抱き着いてみました。

温かいです。

私の顔のすぐそばに、造形にこだわった鎖骨があります。

美術品の様な造形にドキリとします。

顔を見上げます。

美しい顔です。

ドキドキします。

「こんな恋人が居ればなぁ。」

そんな考えが頭をよぎりました。

そして、妄想します。

こたつで創作活動に打ち込む私と、そんな私に鍋焼きうどんを作ってくれる彼。

一緒に鍋焼きうどんを食べながら、私のおでこに付いたトーンくずを取ってくれる彼。

呼び子をしてくれる彼。

帰宅後に泥の様に眠る私に、添い寝してくれる彼。

ぬふふふふふふふふ。

ハッ。

いけない、いけない。

妄想にひたっている場合ではありません。

妹の不手際で亡くなってしまった人の魂を救済する、とてもとても大切なことをしているのです。

妄想に流されていてはいけません。

まだ、しなければいけないことが有るのです。

なんとなく抱き着いたまま、次の作業をします。


次は、俗に言う”異世界転移特典”の、付与ふよです。

「やっぱり魔法を使えた方が良いよね。」

「魔法を使えれば、生存確率も上がると思うし。」

頑丈がんじょうな体と、すぐれた剣術というのもアリかと思いますが、妹がそういうのを望むとは思えません。

妹は、彼が揉め事を避けて、のんびり過ごすことを願っているのですから。

だから、魔法にします。

「うん。魔法を使える様にする。そうしよう。」

そこで考える。

「”魔法を使える様にする”って、どうやるんだったっけ?」

普段、創作活動ばかりしていて、神さまっぽい事をしていなかったので、よく分かりませんでした。

【全魔法使用可能】で、いいのかな?

あと、【魔法創造】も付けようかな?

でも、そんな【スキル】有ったかな?

悩んでいたら、ふと、お目付めつけやくかたが言っていた言葉を思い出しました。

「あまり居るべきでない場所に長く居ると、魂が弱ってしまうぞ。」

あせって、彼の顔を見上げます。

彼の表情からは、魂の状態はよく分かりません。

魔法で魂の状態を確認します。

かなり弱っています。

マズイです。

早く地上に降ろさなければなりません。

手早く【スキル】を付与しました。


次に、【加護】を与えます。

「あなたに神の加護を。」

少し背伸びをしてキスをしました。

魔法で服を着せ、彼を地上に降ろす…のですが…。

あまりにも良い出来だったので、手放したくない気持ちになります。

しかし、そういう訳にはいきません。

ちょっとの逡巡しゅんじゅんの後、彼を地上に降ろしました。

「元気でね。」

そう言って、彼の未来がおだやかであることを、祈りました。


「ふうぅぅぅぅぅ。」

一仕事を終えました。

妹の危機をなんとかすることが出来ました。

安堵します。

「ふああぁぁぁぁ。」

私は、こたつに突っ伏しました。


その日の夜。

締め切り前の最後の追い込みの為に訪れた友神ゆうじんが見たのは、こたつで熟睡しまくる友神ゆうじんの姿だった。


初めての魔法の行使や、意識を集中して行った創作活動。

それに、それ以前に五徹していたのである。

彼女が睡魔に打ち勝てる要素など、一つも無かった。


「これは…、駄目かもしれない…。」

訪れた友神ゆうじんは呆然と呟いた。


新刊、落ちました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ