< 03 地球の在る世界の神03 >
この世界の二大宗教の戦争。
そう、「たけのこ・きのこ戦争(または、きのこ・たけのこ戦争)」である。
前任者から引き継がれた中での、最大の懸案である。
引き継ぎ書類の中で、この書類は異彩を放っていた。
何度も書き直したのであろう無数の跡と、「とあるチョコレート菓子の紛争に関する所感」というタイトル。
「たけのこ」と「きのこ」の順番を、文中に登場する度に入れ替える気の使い様。
登場回数が偶数になっているのも、配慮の結果であろうことは容易に想像が出来た。
「双方の勢力が大きいので、長引かせるよりは、一方をサクッと殲滅させた方が被害が少なくなるだろう。」というのが、前任者の所感だった。
どちらを残し、どちらを殲滅するのかは、記載が無かった。
前任者から引き継がれた最大の懸案。
それをサクッと、できる女神がっ、ラーメンを待ってる間にぃぃ、終結させようとしていた。
コンビニ袋の中から菓子を一つ取り出す。
先手、たけのこ。
封を開け、一つ手に取り、食べる。
こり、さくさく、もにゅもにゅ。
もう一つ食べる。
こり、さくさく、もにゅもにゅ。
コンビニ袋に戻し、もう一つの菓子を取り出す。
後手、きのこ。
封を開け、一つ手に取り、食べる。
こり、こり、もにゅもにゅ。
もう一つ食べる。
こり、こり、もにゅもにゅ。
「たけのこ」と「きのこ」、それぞれもう一度づつ食べる。
両方のお菓子をコンビニ袋に戻し、目を閉じて思案する。
少しの時間そうした後、ゆっくりと目を開けた。
そしてっ!
「お待たせしました~、しょうゆラーメンお待ちのお客さまぁ、どうぞ~。」
「は~~い。」
イイ笑顔で店内に入って行く、自称”できる女神”。
その背中には喜びのオーラしか見えない。
この世界の二大宗教の戦争。
その終結は先送りになった。




