< 00 ある男の話 >
「知らない頭頂部だ…。」
まぁ、知ってる頭頂部なんて無いんだが。
目の前で土下座している女の子の頭頂部を見ながら、何があったのかを思い出してみる。
3月31日。
入社式を明日に控えた、学生気分でいられる最後の日。
昼過ぎの暖かな日差しの下、コンビニで昼飯を買い、帰宅の途についていた。
横断歩道で信号待ちをしながら、「あ~、ぬくいなぁ~。」と、思わずそんな、のんびりした言葉が口から出てくる。
横断歩道の向こう側に、いかにも春っぽい服装をした女の子が、ぽわぽわとした様子で空を眺めている。
なんか、服装と”ふにゃふにゃ”した表情を見てると、春の妖精さんか何かかと思ってしまう。
コンビニ袋を手に持つ姿に、妖精さんと呼ぶのには少し違和感があるが、雰囲気が妖精さんなので”妖精さん”と勝手に呼ぶことにする。
その姿に和みながら、ぼ~っと眺めている。
目の前を横切る車の音も気にならない。
あ~、ぬくいなぁ~。
妖精さんの後ろの方から、ちょうちょが、ひらひらと飛んで来た。
「春だな~。」とか思いながら、ひらひらと飛ぶちょうちょを目で追っていく。
”妖精さん”も目で追っていく。
「ちょうちょだ~。」とか聞こえてきそうな、ぽわぽわした様子に、ほんわかする。
ぽわぽわ~(ふらふら~)
ほんわか~。
ぽわぽわ~(ふらふら~)
ほんわか~。
ぽわぽわ~(ふらふら~)
………って危ないぢゃん!
”妖精さん”は、ふらふらと車道に出てしまっていた。
声を上げる間も無く、
パパパーーー!!、キキーーーッ!!、ガシャーン!!
左から来たトラックが”妖精さん”を避けて、中央分離帯に激突し乗り上げた。
”妖精さん”は、ビックリして立ち尽くしている。
無事なことにホッとする間も無く、キキーーーッ!っという音に右を向くと、中央分離帯に乗り上げたトラックを避けたと思われる乗用車が、こちらに向かって来ていた。
ドガッ!!! 「ぐげっ!!」
ドガッ!! (壁さん「グフッ!」)
ドガッ! (ガードレールさん「ふっ…。」)
ドタッ、ゴロゴロ、バタ (地球さん「………。」)
あ、コれ死んだwa…。




