04 姫様救出02 姫様の婚約者の屋敷にて
王都には情報収集の為に、いくつもの【目玉(仮称。魔法で作られた目。 正式名称決めるのめんどくさい)】を放ってある。
姫様と相談していた最中から、お目当ての屋敷の近くに【目玉(仮称)】を一つ移動させておいた。
それを目印にして、【転移】で王都にやって来た。
俺の着ているローブには、【認識阻害】の魔法が掛かっている。
さらに、【隠蔽】と【人除け】の結界も張って転移して来たので、周りの人たちには気付かれていないはずだ。
結界を解除して、お目当ての屋敷の前に居る門番に近付き、話し掛ける。
「姫様の使いで来た。手紙をアントニオ様にお渡ししたいのだが、姫様の字であると確認できる方をお願いしたい。」
「少し待っていただきたい。」
門番の一人が、屋敷へ走って行った。
少しすると、屋敷から執事らしき人が歩いて来た。
「お待たせいたしました。姫様の使いとのことですが?」
ジロジロ見られる。まぁ、怪しい奴だし仕方が無いよね。
「姫様からの手紙をアントニオ様にお渡ししたいのだが、あなたは姫様の字であると確認できますか?」
「はい、姫様の字は存じ上げております。」
「では、確認をお願いします。」
封筒を渡す。
「確かに姫様の字でございます。」
「アントニオ様に急ぎお渡ししていただき、ご返事をいただきたい。」
「…かしこまりました。」
何か疑われてるなぁ。
刺激しない様に、ここで待つか。
「ここで待っているので、急ぎお願いします。」
「いえ、姫様からの使いの方を、ここでお待たせする訳にはまいりません。どうぞ中へ。」
体から迸る殺気が、セリフと合ってないんですがね!
窓の無い部屋に通されるパターンぢゃないですかね?!
しかし、ここで時間を取られるのも嫌なので、大人しく従う事にする。
ちょっと動揺してしまったが、よく考えるまでもなく【転移】で逃げられるからね。大丈夫だよね?
執事さんに付いて行き、屋敷の中に。
従者の控室なのか、殺風景な部屋に通された。
「こちらでお待ちください。」
そう言って、すぐに行ってしまう執事さん。
遠ざかる足音が一つと、近付いて来る足音が二つ。
二つの足音はドアの辺りで消えた。ドアの傍で控えているのだろう。
踏み込んで来ない事に一安心する。窓も有るしね。(笑顔)
する事が無いので、殺風景な部屋を観察しながら待つことにしよう。
貴族の屋敷に来るのって、これが初めてだからね。
ドアがノックされて開く。執事さん再登場。
「アントニオ様がお会いになられるので、いらしてください。」
言葉遣いが丁寧になったかな?
執事さんの後に付いて、屋敷内を歩く。
そして、立派なドアの前で立ち止まり、ノックする執事さん。
「お連れしました。」「どうぞ。」
短いやり取りがあり、俺は部屋の中に通された。
「ようこそ、私がアントニオです。」
少し華奢な感じがする男に、そう挨拶された。
「こんにちは、ナナシです。」
俺も挨拶を返す。
アントニオは執事さんに、「外して下さい、秘密の話をします。」と言って、執事さんを下がらせた。
一礼して部屋を出て行った執事さん。
部屋から出て行った執事さんですが、ドアから少し離れたところで、他の二人と一緒に控えているご様子です。
やはり警戒されているね。
でも、そこまで警戒するほど怪しくはないですよー。(怪しくないとは言ってない)
俺の意識が廊下に向いている事に少し苦笑いを浮かべながら、アントニオが訊いてくる。
「手紙の内容は、本当の事ですか?」
その質問にそのまま答えたところで、その言葉が信用されるかどうかは別問題。
だから、こう言う。
「姫様を転移魔法で連れて来たいんだけど、この部屋に連れて来ていい?」
「はい。ここで構いません。」
すんなり返事が返って来た。話が早くて結構な事だ。
「じゃあ、連れて来る。」
この部屋に、こっそり【目玉(仮称)】を一つ残し、隠れ家に【転移】した。
隠れ家に戻って来た。
ソファーに座り、行儀良くお茶している姫様がそこに居た。
『おお、お姫様っぽい。』とか思ったが、用件をさっさと終わらせよう。
「アントニオに話を付けて来た。アントニオのところに転移するぞ。」
そう言って、姫様に立ち上がってもらい、近くに寄ってもらう。
「いくよ。」
そう言って、アントニオの部屋にこっそり残した【目玉(仮称)】を目印に、さっさと【転移】した。
景色がアントニオの部屋のものに変わる。
「連れて来たぞ。」
アントニオに声を掛ける。
「もう一人連れて来る。」
そう言って、【転移】をもう一往復。
【魔法の腕】で持って来た、気絶したままの娘をソファーに寝かせてもらう。
ふう。
これで一息吐いたぜ。
「シルフィを助けていただき、心から感謝いたします。」
頭を下げるアントニオ。
「成り行きで、何となくした事だ。気にしなくていい。」
そう返して、アントニオにお願いをする。
「それよりも、少しお願いしたい事が有る。」
「はい、何なりと。」
「俺が転移魔法を使えるという事を隠したいので、姫様ともう一人の娘がここに居る事を隠してほしい。」
「はい、分かりました。」
「あと、今回の事件を俺も調べてみたいと思っている。俺の知った情報をそちらに知らせる時、どうするかを決めたいのだが、犯人が誰か分からない今の状況で、ここの門番に手紙を渡すというのは大丈夫か?」
「重大な事件ですから慎重に行動すべきですね。門番に手紙を渡すのは避けましょう。ここに転移して来るというのは?」
「いやいや、一番不用心だろ。」
「いえいえ、転移してくるのを防ぐ手立てを思い付きませんので、あなたが敵にまわった時点で終わりかと。」
いやいや、諦めんなよ。諦めたらそこで試合終了だよ?
でも、『それもそうか。』とも思う。
「あー、そっちがそれでいいなら、そうするか。じゃあ、何か分かったら知らせに来る。」
「はい。よろしくお願いいたします。」
よし。これで、一区切り付いたね。
隠れ家に帰る前に、姫様にお願いしておく。
「姫様。」
「はい。」
「あの娘の事よろしくね。馬車で移動してここまで来れるくらいの日数だから、3日くらいかな?」
「あーー。」
なんとなく絶望感を漂わせる姫様。
「ナナシさん。持って帰っていただく訳にはいきませんか?」
「いらない。」
「そこをなんとか。」
「いらないってば。」
「あんなもの、私だっていりません。」
うん。酷い言い方だね。(苦笑)
「諦めて。」
「そんなー。」
がっくりする姫様。
俺だって、あんなものいらないんだから、仕方が無いよね。
「では、また。」
そう言って、隠れ家に【転移】した。
すぐ、アントニオの部屋に、【転移】で戻る。
「どうしました?!」
少し驚いた感じのアントニオ。
「やっぱり、持って帰ってくれるんですねっ! 私、信じてましたっ!」
「いや、それは無い。(キッパリ)」
姫様、再びがっくり。
床に「あーー。」とか、話し掛けていらっしゃいます。
うん。申し訳ない。
本当に申し訳ない。
がっくりしている姫様を無視して(←ヒデェ)、アントニオに話し掛ける。
「うっかりしてた。転移魔法の事は秘密だから、歩いて屋敷から出ないと。」
「…ああ、そうですね。」
アントニオも苦笑い。
「では、また。」
そう言って、ドアから普通に出た。
屋敷を後にし、屋敷から少し離れたところで、【隠蔽】と【人除け】の結界も張ってから、隠れ家に【転移】した。
ふう。
やれやれだぜ。
< 部屋に残された二人 >
「なんか、変わった人だったね。」
「ええ、そうね。」
がっくりしたまま、アントニオにそう答えたシルフィ。
「シルフィが無事で良かった。」
「うん。そんなことより。」
「そんなことより?!」
「この娘を、別の部屋に隔離してください。」
「えーっと。扱いが酷くない?」
「そんなことないです。起きない内に早くしてください。さぁ早く。」
「…ああ、分かった。」
姫様に言われた通りに、執事さんに命じて寝ている娘を隔離させるアントニオだった。