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27 10日目 公爵家サイド 執事さん視点


勝負の期日きじつの朝になりました。


依頼をした冒険者たちは、まだ帰って来ていません。

王宮に向かわせた者たちも、まだ一人も帰って来ていません。

やはり、駄目なのでしょうか?

かたわらには、オークキングを入れる為に用意した【マジックバッグ】が、むなしく置いてあります。


メイドに来客を告げられました。

一瞬期待しましたが、この屋敷の者たちは皆、勝負の事を知っているのです。

いつもと変わらぬ様子でしたので、勝負とは関係の無い、ただの客なのでしょう。

心を落ち着けて応接室に向かいます。


応接室に行くと、冒険者の様な、商人の様な、そんな男性が居ました。

用件ようけんうかがいます。

「オークキングの死体をゆずってもいい。」

その男性はそう言いました。

見ると、膝の上にカバンを置いています。

あれが【マジックバッグ】なのでしょう。


さて、どうしたものでしょうか?

朗報ろうほうを待ち続けましょうか? それとも、買い取りましょうか?

そもそも、買い取ったところで勝負に勝てるとも限らないのです。

ただの無駄になる可能性の方が高いのです。

少し悩みましたが、答えは決まっていましたね。


返答しようとした時、公爵様のご子息さまがいらっしゃいました。

「オークキングを持って来たのだな!」

笑顔でそう言います。

「はい、左様さようです。」

「見せてくれ!」

ご子息さまは、その男性を連れて中庭に向かいます。

歩きながらその男性は、とても愛想良くご子息さまに応対しています。

彼は、交渉相手をご子息さまに決めた様です。


中庭で、【マジックバッグ】からオークキングの死体が出されました。

横たえられた、それをながめます。

それなりの大きさなのでしょうか?

しかし、”勝負に勝てる大きさ”なのかは、私には判断が付きません。

ご子息さまは、オークキングの死体を見て大喜びされています。

そのご様子に、溜息ためいきが出ました。


改めて、オークキングの死体を見ます。

首を切断されています。綺麗な切断面です。

体には傷が見当たりません。

高レベルの冒険者が一撃で仕留しとめたモノなのでしょうか?

あるいは【風刃ふうじん】で切断したのでしょうか?


このオークキングを持って来た男性は、ご子息さまを相手に価格交渉を始めました。

ご子息さまは上機嫌でうなずいています。

そのご様子に、また溜息ためいきが出ました。

交渉がまとまった様です。

ご子息さまに言われた通りの金貨をお渡しいたしました。

溜息ためいきは、もう出ませんでした。


部屋から【マジックバッグ】を持って来ました。

【マジックバッグ】に仕舞しまう前に、もう一度オークキングの死体をながめます。

このオークキングを仕留しとめた者は、一体いったい誰なのでしょうか?

今、このオークキングがここに在るという事は、私たちの依頼を受けた冒険者たち以外の者なのでしょう。

その者は、どうして私たちの依頼を受けてくれなかったのでしょうか?

冒険者たちを集めていた時、その者は王都に居なかったのでしょうか?

その者が依頼を受けてくれていれば、今頃、もっと大きなオークキングを手に入れられていたのでしょうか?

その者は、ギルドマスターよりも強いのでしょうか?

…つい、色々な事を考えてしまいました。

私は、オークキングの死体を【マジックバッグ】に仕舞しまい、執務室に戻ります。



私は、執務室で朗報ろうほうを待ち続けます。

依頼をした冒険者たちは、まだ帰って来ていません。

王宮に向かわせた者たちも、まだ一人も帰って来ていません。

ただ、時間だけが過ぎて行きます。


ギリギリまで朗報ろうほうを待ち続けました。

誰も帰って来ませんでした。



公爵様とご子息さまと一緒に、馬車で王宮に向かいます。

ご子息さまは上機嫌です。

公爵様は、そんなご子息さまにあきれているご様子です。


【マジックバッグ】を持つ私の心境は、”無”でした。


設定

”冒険者の様な、商人の様な、そんな男性”は、雇われただけの人です。

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