23 7日目 ナナシサイド 呪術師01
一番大きなオークキングをGETした翌日の朝。
朝食後、ソファーで寛いでいたら、【多重思考さん(多重思考された人(?)たちのリーダー)】から、その報告を聞いた。
『天井裏に怪しい人が居るのを発見しました。』
その怪しい人が居る場所を聞くと、『1階の天井裏です。』とのこと。
この部屋からは離れていたので、ちょっと一安心。
怪しい人を、【鑑定】した結果も聞いた。
【呪術師】とのこと。
それと、【暗殺者】【姿無き者】なんて【称号】が有るんだそうだ。
『魔道具で姿を消している様で、可視光線と赤外線では見えません。あと、音も消している様です。』
あれ? 赤外線でも見えないのか。
昨日の事を思い出す。
赤外線を見る事が出来る魔道具が存在する事は、昨日知った。
きっと、この王宮の警備の人たちも持っているだろう。
しかし、赤外線でも見えないとなると、どうなるのだろうか?
王宮の警備の人たちでは発見できないのかな?
既に、王宮に入り込んでいる状況から考えると、その可能性が高いね。
その前提で、どう対処するか考えよう。
気絶させて捕まえるのは簡単だ。
問題は、”いつ”捕まえるかだ。
この厄介な侵入者に対応可能だという事は、相手側に知られてしまうよりは、知られない方が良い。
対策されてしまうかもしれないからね。
しばらくは、監視だけにして、放置かな?
いや、大した事が出来ない様に、MP(Magic Point)を減らしておくか。
”呪い”も、MPを消費するのかな? するよな?
取り敢えず、【目玉(仮称。魔法で作られた目。正式名称まぢどうしよう)】を通して、MPを”1”まで減らしておくか。
…いや、他の仲間と連絡を取るのに魔法を使っていたりするとマズイか。
連絡を取る魔法を使っただけで気絶してしまっては、異常事態が発生したと思われてしまう。
少し考えて、MPを”5”まで減らしておくことにした。
MPを減らすだけでは、不十分かな?
魔道具を持っていれば、MPを消費しなくても魔法が使えるしね。
念の為、魔道具を持っているか、【魔力検知】で調べてみた。
魔道具っぽい物を9個も持っていた。多いね。
どうするかな?
考えていたら、【多重思考さん】から提案された。
『怪しい人ごと【魔法無効】の結界で囲んでしまうのはどうでしょうか?』
ああ、なるほどね。
いいね。
…いや、いいのか?
【魔法無効】の結界で囲んでしまえば、魔道具を使えない様にする事が出来ると思う。
でも、それによって、姿を消す魔法が無効化されたら、王宮の人たちに見付かって、即、戦闘になってしまいそうだよね。
王宮内で、よく分からない敵との戦闘を引き起こす様な真似は、あまりしたくないなぁ。
自暴自棄になって、変な事をされたら困るしね。
それに、そんな事態になったのを切っ掛けに、他の敵がやって来たりしたら嫌だしね。
うーーむ。
やっぱり、今は、監視だけに留めておこうかな?
何かしそうだったら、気絶させることにして。
うん。そうしよう。
怪しい人への対応を決めたら、【多重思考さん】から要望が。
『天井裏に空間が有る場所の情報を、メイドさんにもらってください。』
ん?
俺が疑問に思ったら、【多重思考さん】が先回りして答えてくれた。
『今回見付けた天井裏の空間は、たまたま見付けた隙間風が有った場所に、【魔法の腕】を細長くして差し込んで発見しました。むやみに、空間が有るのか分からない場所に、【目玉(仮称)】を転移させていいものか分かりませんでしたので。』
『天井裏に潜んでいる者がいないか調べる為に、空間の在る場所の情報が欲しいです。』
なるほどね。
確かに、【目玉(仮称)】を転移させた先に空間が無かった場合、どんなことが起こるか分からないよね。
天井裏を調べようと思ったら、予め空間の有る場所を知っておきたいね。
しかし、天井裏に空間が有る場所の情報か…。
”部外者”に、教えてくれる様な情報ではないよね。
俺は”部外者”だからね。
姫様との結婚式で新郎の席に座る為の勝負をしているけど、”部外者”です。
うっかり身内っぽい言動をしてしまって、そういう立ち位置なんだと変な誤解を与えてしまうと、退路を狭めてしまうことになりかねない。
危険な言動をしてしまわない様に、気を付けていないといけないね。うん。
天井裏の情報を求めるのは、止めておこう。
情報を求めるのではなくて、天井裏の空間を見付ける方法を考えることにしよう。
元の世界に、道路の下の空洞を見付ける事が出来る機械が在ったと思うのだが、あれはどの様にして見付けていたのかな?
音波? 振動? 電波? 電磁波?
電磁波って光の仲間だった気がするな。うろ覚えだけど。
よく分からないが、【光魔法さん】と【風属性魔法グループ】に検討を丸投げしておく。
あと、”呪い”への対策も検討しよう。
呪術師がすぐそばに居て、”呪い”が身近な脅威になっているからね。
以前、少し検討して、”【状態異常耐性】に期待する”のと、”呪術師を気絶させる”ことで、対応しようと決めていた。
他に有効な対処方法が思い付かなくて。
今回、検討するのは、”呪い”を受けてしまった後の対策だ。
どうやって回復させるのか?
そもそも回復させる方法が有るのか?
今の内に考えておいた方がいいよね。
王宮内に”呪い”に詳しい人って居るのかな? 居るよね?
そもそも、”呪い”について最初に聞かされたのは、メイドさんからだったしね。
王宮内に詳しい人が居そうだよね。
もっと早く気付こうな、俺。
よし。部屋付きのメイドさんに訊こう。
そう思った時だった。
”警告”が頭の中に浮かんだ。
体によく分からない衝撃を受けた。
体がこわばる。
何が起きた?!
頭の中に、何が起きたのかが浮かぶ。
俺は、【目玉(仮称)】が呪術師から攻撃を受けた事を知った。




